2. これは、彼と彼女の再会。

第4話

 俺は今、過去にないほど緊張している。あまりの緊張で足が震えて、地面に立っている感覚が無くなり、平衡感覚が失われるかのように錯覚する。


 俺は6年前に通っていた松山高校の近くにある松山病院という大病院を訪れていた。


 病院は緊張する場所だ。そんなことを大の大人が言うと笑われるだろうか。


 そもそも、なぜ俺は緊張しているのか。

 幼いころに注射を嫌っていたからか? 病院に行ったことがほとんどなかったからか? 病院の特徴的な匂いが嫌だったからか? 自分のことを丸裸にされそうだからか?


 今までだったら、前述した理由があったからと説明できるが、今回ばかりはそれらとは異なる。それは通院というシチュエーションではないからだ。


 今日はお見舞いで病院を訪れていた。病院へお見舞いに行くというのは初めてのことだった。


 数年前に亡くなった祖父の老人ホームに行ったことはあったものの、病院とは雰囲気が違ってくる。上手く説明できないが、何かが違う。それが理由だ。


 ただ、それだけではない。特出すべきは彼女に会いに来たという点だ。むしろ、これが今の緊張の最大の理由だ。


 久しく顔を合わせていない知り合いと対面する直前が楽しみな人もいれば、ちょっと怖くて緊張する人もそれぞれいるだろう。

 俺の場合は後者が当てはまっている。

 これらのことから、俺は緊張しているのだ。証明完了………………。


 って、証明したところで、緊張は全く解消していないし、解消する方法も見つかっていない。


 この状況をなんとかしないと! この緊張をどうにかしなくては!


 俺は落ち着くべく、とりあえず深呼吸をしながら周囲を見回してみる。

 塵一つないきれいに清掃された廊下。天井には人を感知すると自動で点灯するLED。廊下の窓からは外の風景が見える。そして、壁には等間隔に配置された白いドア。そのドアは俺の目の前にも存在している。意識が周囲から再び正面のドアに飛び、改めて緊張している自分に相対する。


 結局のところ、緊張を解消する手段なんてありはしなかった。

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