最終話:猫屋敷の別荘を借りての細やかな結婚式。

100年後の未来から来た女の子は、早生や早生に関わる人たちも含めて

それぞれの運命を変えた。

おそらくメルバはそうなることを予想してこの時代に来たんだろう。


確かに、早生の命を守るってことが大前提だったとしてもメルバは、老いた

早生より若い早生と恋人同士になりたかった。

いやむしろ、そっちの方がメルバには大事なことだったんだろう。

だから早生に死なれては困るんだ。

メルバは二度と未来に帰るつもりはなかったんだから・・・。


(未来とか過去とかについて考えてたら、頭が痛くなる)

(つじつまが合わなくなっちゃうからな)


(たとえば・・・ある人が過去に行って血の繋がった祖父を祖母に出会う前に

殺してしまったらどうなるんだ?その場合、その時間旅行者の両親のどちらかが

生まれてこないことになるだろ?・・・結果として本人も生まれてこないことに

なる。


だから存在しない者が時間を、さかのぼることもできなくなって祖父を殺すこともできないから祖父は死なずに祖母と出会う・・・そうしたら、やっぱ彼はタイムトラベルをして祖父を殺す・・・それって堂々巡りじゃん・・・)


(理解できないだろ?)


早生はそんなことを考えたりしたが考るだけ無駄・・・だから考えるのをやめた。

早生にとっては、そんなことより大事なのは今だった、メルバといるこの時代が

あればそれでいいと思った。


メルバはここに残ることはもう分かっている・・・だけどメルバは、この時代では

戸籍がない。

だから早生とメルバは正式に結婚はできない。

だけど早生たちに法律なんて関係なかった。


結局、早生とメルバは、猫屋敷の別荘を借りて細やかな結婚式を挙げた。

猫と夏と数人の親しい人たちに祝福されて・・・。


そして、メルバはキューブに乗って、未来の俺に報告に帰った。

過去の俺は無事に事故を回避して今も無事だと告げると未来の俺は安堵した

ようだった。


早生は、このままメルバが帰って来ないんじゃないかって心配した。

だけど、メルバはまた早生のベッドに戻ってきた。

来た時と同じ裸で・・・でも今度は早生は裸のメルバをキツく抱きしめた。


「メルバ・・・もう俺のところに帰って来ないのかと思った」


「何があっても絶対帰って来るよ」

「たとえキューブが壊れても法に触れても必ず私、早生のところに帰って来るよ」

「私のいる場所は2024年の早生のところだけだもん」


「そうだな・・・俺のいる場所もメルバがいる場所だよ」


「あのさ、私が来なかったら早生、夏さんと結婚してたと思う?」


「あ〜それは、たぶんなかたっと思う」


「え?夏さんとは上手く行く自信なかったの?」


「どうなんだろ・・・メルバが来たことで、俺と夏の運命は変わったかもしれない

けど、それもそれぞれの運命だろ?」

「俺はたぶんメルバが未来から来なかったら、いまでも一人でいたと思うよ」

「でも、俺の幸せは未来からやって来たからね・・・愛ってプレゼントを持ってさ」


「って言うか俺には分かってたから・・・」


「分かってたって?・・・なにが?」


「ずっと遠い未来から俺のために俺への愛を引っさげてひとりの女神が

やって来るってことがさ」


「またまた・・・私がキューブから現れた時早生、鳩が豆鉄砲食らった

みたいな顔してたよ?」


「それは、やって来た女神が超可愛かったからだよ」


メルバは嬉しそうに笑った。


その後、早生とメルバが愛をたっぷり育んだおかげで、ふたりの間に、

めでたく男の子が生まれた。


その子の名前は「田口 未来たぐち みらい


(そのうち子供を連れて家族で100年後の未来の俺に会いに行くかもしれない)


だけどそれは無理な話だった、と言うのもメルバが乗ってきたキューブは一人乗り

用だったから・・・。


早生は思った。


(ある朝、目覚めたらメルバがいなくてやっぱり俺一人しかいなくて寂しい部屋で

ため息をつきながら孤独に暮らしてたりして・・・)

(このSFみたいな出来事は全部、俺の願望だったりして・・・)


だけど、それは夢でも願望でも妄想でもなかった・・・早生は今もメルバと子供と

三人で幸せな日々を送っている。

100年後の自分たちのために・・・。


時は刻々と流れている。

今日を大切に。

時は人を待たず。


昨日は過去のこと。

明日はミステリー。

今日は贈り物。「プレゼント」

だから今日、やって来た彼女をミルフと呼ぶ。

そして彼女はスーパー・ブリリアント。「最高の輝き」

そしてふたりはシューペルブ・リアン。「最高の絆」


おしまい。






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シューペルブリアン。〜未来からのミルフ〜 猫野 尻尾 @amanotenshi

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