第14話:なんでもこなすメルバ。
猫屋敷からパーティーをするから遊びに来いってご招待されたので早生はメルバを
連れて猫の別荘へ遊びに行った。
別荘に着くとすでに何人かの友人たちが来ていて、そこに夏もいた。
「早生、よく来てくれたな・・・メルバちゃんも・・・」
「さ、さ上がって上がって」
「そ〜おちゃん、メルバちゃんも元気?」
「おう・・・夏も・・・元気してたか?」
「うん、元気で楽しんでるよ」
結局、夏は猫といい関係になってよかったようだ。
パーティーなんて酒飲んでどんちゃん騒ぎをするだけなんだけど、まあ交流と
銘打っての飲み会だろう。
そうやってみんな日頃のストレスを解消しているんだ。
人間は常にドーパミンが出てるほうが幸福を感じるらしい。
「さあ、みんな楽しんでくれ」
猫は自分の別荘ということもあって率先してその場を仕切っていた。
飲んだり食ったりの賑やかなパーティーだった。
パーティでも話題は誰かのスキャンダルとか恋愛話。
みんな恋愛話や人の不幸が好きなのだ。
食事は思ったより豪華で美味かった。
宴もたけなわ、みんなカラオケに夢中になった。
早生は歌には自信があったが、あまり人前で歌うのは苦手だった。
その点、意外だったのはメルバだった・・・彼女がみんなに混じって歌を
披露した・・・それがめちゃ上手かったのだ。
今の曲をあまり知らないメルバは自分の時代の曲なんだろう。
オケなしのアカペラで歌った。
みんな、まさかの唖然。
めちゃアイドルしてるし・・・踊りや振り付けも交えてまるで芸能人のステージ
みたいだった。
あまりに上手かったので、みんなから絶賛の嵐。
アンコールなんか受けながら歌っていた。
メルバにそんな才能があったなんて知らなかった早生は目から鱗だった。
なんてことはない・・・メルバは世界中の優秀なDNAを受け継いだバイオロイド。
なにをやらせても、ソツなくこなす能力を備えている。
だから早生はメルバに聞いてみた。
他にもできることはあるのか?って。
そしたら10本の指では数えられないくらい多かった。
「やっぱりそうなんだ・・・優秀なんだな・・・なんだか君は俺にはもったい
ない気がする」
「なんで?どうして?・・・もったいないの?」
「俺とメルバじゃ出来が違いすぎる・・・まるで月とスッポンだよ」
「釣り合わないって言うか・・・」
「ごめん・・・私自慢したかったんじゃないんだよ・・・早生に聞かれたからね、
自分ができることを言っただけだよ」
「いいんだ・・・メルバはなにも悪くないから」
「早生、そんな悲しそうな顔しないで・・・私のこと嫌いになった?」
「そうじゃないけど・・・俺にとってメルバは遠い存在な気がしただけだよ」
「なんで、そんなこと言うの?」
「きっと、まだまだ俺の知らないメルバがいるんだな」
「なんでそんな悲観的に考えるの?」
「だったら一生かけて、もっともっと深くお互いを知ればいいじゃない」
「そうだな・・・もっとメルバのこと知らなきゃな」
「うん、これからも、いっぱい話して、いっぱいエッチしようね」
「だな・・・余計なことはいいや、今がよけりゃさ」
パーティーの盛り上がりがピークを終えた頃、猫が早生のところにやってきた。
メルバは火照った体を冷やしたいからってテラスの椅子に腰掛けて、そこから
見える湖のほうを眺めていた。
「夏から聞いたけど・・メルバちゃん普通の女子じゃないんだって?・・・」
「おまえさ、どこまで夏から聞いてる?メルバのこと」
「一応、バカみたいな作り話はほぼ、かな」
「信じてないのか?」
「あんな話、信じられるわけないだろ」
「メルバちゃんが、お前の命を救うために未来から来たなんて・・・」
「俺はおまえが作った話だと思ったけどな」
「なんで俺がそんな込み入った話を作る必要があるんだよ」
「まあ、信じないなら、別にかまやしないよ」
「おまえに信じろなんて誰も思ってないし・・・」
「信じられないんだけど・・・信じるよ」
「おまえは、いい加減なウソつくような男じゃないって俺は知ってるからな」
「まあメルバちゃんのこと妹だってウソはついたけどな」
「たださ、メルバちゃんを彼女にするために夏を俺に押し付けただろ?」
「押し付けたわけじゃないよ・・・夏がおまえのことをタイプだって言ったから、
じゃ〜紹介してやろうかって言っただけだよ」
「いいけどな・・・俺と夏、気が会うから」
「いい子紹介してくれて感謝してんだぜ」
「美容師ってだけあってビジュアル抜群だしな」
「そうか、それはよかったな」
「お互いいいふうに丸く収まってるってところか?」
「これを機に四人でもっと交流深めていきたいな」
「そうだな」
(まあそれもいいかもしれない、猫屋敷と交流を深めていたらメリットがありそう
だからな)
にぎやかだった時間が過ぎると、みんなそれぞれ猫屋敷の別荘から帰って行った。
メルバはまだ体の火照りが醒めきらないのかテラスの椅子に腰掛けたまま
湖を眺めていた。
つづく。
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