第13話:夏と猫屋敷。
メルバが部屋にいても夏は平気で遊びにやって来る。
ライバル同士のくせに台所でいっしょに料理を作ったりしてはしゃいでる・・・
変な関係。
で、ある日、早生は夏から猫屋敷のことを聞かれた。
「ね、早ちゃん・・・最近よく、あの人に会うんだけど・・・」
「あの人友達でしょ?」
「ああ・・・猫のことか?」
「ねこ?」
「俺が世話になってる出版社のダチ・・・猫屋敷ってやつだよ」
「なに?あいつのことが気になるのか?」
「あの人、もしかしてメルバちゃん目当て?」
「メルバちゃんがその、早ちゃんの彼女って知ってて来てるの?」
「私も彼女だけど・・・」
「つうか、今は夏、目当てじゃないか?」
「え?私?」
「あいつ夏のことがタイプだって言ってたぞ」
「え?そうなの?私もあの人、なにげにタイプなんだけど・・・」
「まじで?」
「タイプ?・・・あいつが・・・夏の?・・・夏のタイプって俺じゃなったのか?」
「あのね、車でもフェラーリも好きだけどポルシェも好きって、あれ」
「ふ〜ん、とにかく猫はお前がいいみたいだぞ」
「アタックしちゃおうかな」
「好きにすれば?」
「そうね、私たちの関係・・・このまま三角関係でいつまでも続けててもね・・・」
「メルバちゃんは早ちゃんのこと諦めそうにないし」
「このさい、猫屋敷さんに乗り換えようかな」
「本当のこと言うと、メルバちゃんの手前て、意地張ってたけど、争ってるのが
正直めんどくさくて・・・」
「早ちゃんとも長い付き合いだからね・・・もういいかななんて思って」
「俺と別れて猫に乗り換えようって?」
「って、言ったらどうする?」
「夏の好きにすればいいだろ・・・」
「引きとめてくれないの?」
「俺より、あいつのほうが金は持ってるしな・・・ポルシェになんか乗ってるし」
「それ、まじ・・・本当?」
「それに、あいつ将来は経営コンサルタントになるんじゃないか?」
「なにそれ?」
「会社の経営や業務についてアドバイスする仕事だろ?」
「大手企業の顧問にでもなったら定期的に仕事があるから儲けはいいんじゃ
ないか?」
「普通のサラリーマンの彼女になるより贅沢させてくれると思うぞ」
「へ~・・・そうなんだ・・・」
「私が猫屋敷さんに乗り換えても早ちゃんはヤキモチとか焼かないの?」
「俺って意外と冷めてるから・・・」
「それに夏を束縛したりはしないよ」
(夏が猫に行ってくれたらメルバと大手を振って一緒にいられる)
たぶんその時、早生も夏も打算的になってた。
(猫が金持ち・・・将来、経営コンサルタントに関しては適当なこと言ったけど、
夏も俺といるより猫といれば経済的に安心だろう)
その後、夏は猫屋敷にアタックした。
以外とこれが、うまくことが運んだようで猫にとっては青天の霹靂に違いなかった。
そりゃ猫からしたら棚ぼただろう。
夏みたいないい女から「付き合って」って言われたら大概の男なら 「ごめんなさい」とは言わないだろう。
そう言うわけで、フェードアウト的に早生と夏は揉めることなく終わった。
猫屋敷は夏が彼女になってから早生のマンションにぱったり来なくなった。
早生はと言えばメルバとの甘くて楽しい日々を続けていた。
それは自然の成り行きだった。
夏がいなくなったことで早生の気持ちはメルバに一直線に向かった。
「いいいかな、奪っちゃって・・・」
「うんいいよ・・・もう遅いくらいだよ」
「じゃ〜いただいます」
その晩、早生は待望のメルバと結ばれた・・・だけどバイオロイドは疲れ知らず。
早生はエッチが終わった時には死人みたいに、くた〜っとなっていた。
この間にも早生は車に轢かれそうになったり、人違いされて反社の人に狙われたりと
災難が降りかかったが、その都度メルバは自分の務めを果たして早生を救っていた。
だから今のところ早生は無事に生きている。
それと振り返って考えてみたら早生とメルバの間にミカンの存在は大きかったかもしれない。
ミカンと暮らしてる間に早生の動物アレルギーは気付かないうちに治っていた。
環境になれるってことなんだろう。
ミカンが嫌な存在じゃなくなって早生はより一層メルバと深くつながるように
なった。
猫屋敷が夏とできたことで、別荘でパーティーを開くからって早生とメルバも
来ないかって猫から招待された。
猫からの正体をキャンセルする理由もなかった早生はメルバを連れて猫屋敷の別荘に遊びにでかけた。
猫屋敷が別荘を持ってたのは知っていた・・・なんせ猫は実家も金持ちだから。
さぞかし夏も満足だろう。
つづく。
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