59話ー⑤ 閃光の発蓮





 見慣れた白衣の男たち......そしてその中に、見覚えのある博士も立っていた。

 夕日に照らされている彼の姿に、私は思わず目を見張った。

 残留思念?幻覚?それとも幽霊?しかし常人を遥かに凌駕する私の感覚は、彼らの暖かい体温を感じ取った。



「は、博士ぇぇぇ!!」



 私は泣きながら思わず博士に飛びついた......まるで父親に飛びつく子供のように。



「何でぇぇ!どうしてぇ死んだはずじゃ......」


「どうやら、生きておるようじゃ。エネルギーの件、隠していてすまんな……」


「いいよぉぉ……苦しかったけど……みんなが私のこと、本当に思ってくれてたの、分かってたからぁぁ!」


「ルシアちゃん……言い訳かもしれないけど、教授は本気で『神力』の代わりになるエネルギーを開発していたんだよ……だから、君に嘘をついたわけじゃない。それで俺たちの罪が消えるわけじゃないけど……」



 馬鹿だった……ずっと私を気にかけてくれた人を、一瞬でも疑ってしまうなんて。

 この星の命運をかけてまで、私を助けようとした人たちなのに……。

 褒められる行為ではなかったかもしれない。でも、私には何よりも大切なものだった。



「いいの......みんなもどうしようもなかったんでしょ。私だけ逃げてごめんなさい!」


「そりゃ逃げるじゃろうよ、あんなもん......とにかく生きててくれて良かったぞう」


「うん......博士、大好き。これまでの博士も、みんな大好き......」


「......我が家の守り神、エシア様に感謝じゃな。」


「うん......」



 博士の家に代々伝わる「守り神」エシアの話――

 絶対に治らないと言われたアンドロイドを、救おうとした一人の男が.......

 時代を飛び超える技術をその星にもたらしたおとぎ話。


 博士の遠い祖先が、異星から渡航してきたアンドロイド本人から聞いたそうだ。



「もう、未練はないかな?」


「うん....無いけど、それが何か関係あるの?」


「......僕と一緒に......天上神界に来ない......かな?」


「......へ?」



 私がこの人と......一緒に行く?

 私なんかが......付いて行ってもいいの?



「ここは君がいるべき場所じゃない......。いや、強制ではないよ?」


「行く......」


「え?本当に?」


「その変わり条件があるの。」


「あぁ!もちろん!君のためなら、不可能だって捻じ曲げてみせるさ!」



 絶対に外せない条件......

 ずっと気になって気になって仕方がなかってこと......



「名前......聞きたいな?」


「え?そんな事でいいの?」


「うん......」


「ルーク......中位神序列11位、ルーク・ゼレトルスだ。」



 ......何その自己紹介。


 名前だけでいいのに、肩書きまで教えるなんて......

 この人、絶対脳内の言語量多いタイプの人だ......


 でも分かる、多分この人なりに誠意のある自己紹介をしたくれたってことだけは。



「ルークくん......」


「ルークでいいよ。頭文字は......」


「ル、ルーク?いきなり放り出したりしないでね......」


「そりゃそうだ......君がいいって言うまで責任もって助けるよ。」


「す、凄い不安だから!そこだけはホントに、お願いね......」


「任せろ!すでに必要な許可も取ってあるから!」



 もう、任せろだけでよかったのに......。

 本当に頭の中が、いろんな言葉で溢れている人なんだな......



「ルーク、これから......よろしくね?」


「ああ、行こう……ルシア」


「ぅん。」



 私はそっと彼の手を取った。この出会いは私の神生と人生の中で、最も大切な出会い。

 最愛の片割れと結ばれた、私にとって一番大切な始まりの思い出。








 ――――


 .......今、これが見えるということは、私たちはやっぱり死んだの?


 なぜだろう、ルークとの繋がりが一切感じられない。

 過ぎ去った日々を振り返ると、それがどれほど幸せだったかを思い知る。


 笑って、泣いて、死にかけて……新しい仲間もできて。

 今思えば、彼と味わった苦しみすらも、愛おしく感じられる。



 ――苦しみも含めて幸せの一部......だったのかも......



 このままルークと二人で、世界から消えてしまうのも悪くないのかも......

 もう悩むことも、怯えることも、あのとてつもない悪意に立ち向かう必要もない。

 彼を失う恐怖に苛まれることも、自分の弱さに打ちのめされることもない......



「それはそれで悪くはない。でも......」



 ――悪くないだけで、「良く」はない。


 私は正直、全神王になんてどうでもいい。


 私の願いはルークと永遠の時を過ごすことだけ......

 例え彼に理解されなくても......世界に終わりを告げられたとしても......


 たとえどんな因果をも捻じ曲げ、新しい摂理を創造してでも、私は彼と生き続けるたい。

 きっと何度も揺らぐだろう......諦めかけるだろう。



 ......だって私は彼と違って弱いから......



 だから......何度折れても、砕けても絶対に立ち上がってみせる!

 何度も心が折れてしまうなら、それより一回だけ多く立ち上がればいい。

 やっと......やっと定まった、やっと分かった。私の本質......




 ――私と共に歩むって決めたなら......絶対に死なせてあげない!

 ――覚悟してねルーク......私、すごく重たい女だよ?



 その時......私はルークとの繋がりを再び感じ取った。







 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★



 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 別れと出会いを済ませ、ついに天へと歩を進める。

 ルークとルシアの原点、ここに終幕!!


 次回、果たして二人は現世に戻れているのか?


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は

 【応援】や【レビュー】をしてくれると超嬉しいです!!


 更新は明日の『『20時過ぎ』』です!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る