59話ー④ 蓮子へさしこむ暗光






「そりゃもちろん! ヒロインを助ける、とびっきりの主人公さ。」


「野郎ども、撃ち殺せ!!くれぐれも機器系統は破壊するな!!」



 男の命令と共に、彼へ向けて激しい機関銃の集中攻撃が始まった。

 仲間もいない彼が、どうしてたった一人でここに現れたのか……

 状況的には絶望的に見えるはずなのに、なぜか私の心は安心しきっている。



「ははは!!どうだ、蜂の巣にしてやったぜ! 一人で乗り込んでくるなんて自殺行為だ!」


「まず眼科に行ったら? にしても、あの爆発を2キロに抑え込むのは流石に大変だったよ。僕が気絶するレベルにはね......」


「は?……な、なんだと!?」


「ボス!弾丸が効いてません!!」



 驚くべきことに、彼は弾を防ぎもしていない。

 そもそも銃弾では、彼の体を傷つける事ができないようだ。

 それどころか跳ね返った弾丸が悪党たちに当たり、次々と彼らが倒れていく。



「……どういうこと?」


「貴様、何者だ!何なんだ!」


「答えるかバーカ。第3579位階魔法・亜空宝物殿。いでよ、神剣アロンダイト。」


「ハハハハハ!ボス、こいつ剣なんか出しましたぜ?今どき時代錯誤もいいところですね!」



 何?今どこから剣を出したの?

 何も無いところから突然空間が振動して......気が付いたら手に剣が?

 しかも一瞬、私と同じ系統の強大なエネルギーが放出されたのを感じた......


 私だけではない。異変に気付いた者がもう一人いた。



「ま、まさか……その力は……」


「光れ、アロンダイト!」



 次の瞬間、悪党の部下たちが一瞬にしてバラバラになり、床に崩れ落ちた。

 そのあとに続く凄まじい突風が施設内を駆け抜け、親玉は突風に吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。



「ぐっ……そのエネルギーはまさか『神力』……貴様、もしや……」


「ご名答。僕は『神族』だ。」



 神......族?本物の神様ってこと?

 確かに今の圧倒的な力は、この世界の物理法則では説明が付かないけど......

 神族なんてものがホントに実在するの?



「は、はは……同族でも迎えにきたつもりか!この女を狙っているのが、俺たちだけだと思うか?世界中がこの女を探しているんだぞ!俺が死ねば、全世界に情報が流れるようにしてある!いくら神の如き力があろうと、こんな目立つ時限爆弾を抱えて逃げ切れるとでも思うのか?分かったら、俺を生かせ!そしてこの女を置いていけ!そうすればお前の存在は黙っていてやる!」



「ごめん……長すぎて全然聞いてなかったわ。で?何?」


「この野郎!!」



 私は心の中で決意した。自分のせいで誰もこれ以上不幸にしないと……



「わ、私のことは気にしないで……もう、十分夢を見させてもらったから!」


「いや、気にする。」


「な!?」



 でも彼の軽快な返事を聞くと、不思議な安堵が広がっていく。

 いけない事なのに期待してしまう......



「えーと.....二つ勘違いしてるみたいだね。」


「なにぃ!?」


「まず、僕はこの惑星に住んでない」


「なっ……?ふざけるな、貴様!」



 宇宙から来たというの?ならどうして、この惑星で生まれた私に神々の力が......



「そしてもう一つ、逃げ切れるかって?答えは……”余裕”だよ。」


「傲慢なやつめ!!ハッタリの次は虚勢か!! 数の暴力を舐めるなよ!!」


「知能低っ......でも分かった。もういい……」


「!?」



 突然、地下深くにある施設の天井が、まるで存在しないかのように蒸発した。

 次の瞬間、私と親玉は施設から外へと引き出されていた。


 ――空を見上げると、広がるのは巨大な緑の魔法陣……空そのものが覆い尽くされている。



「なら......この惑星はもう要らない。惑星丸ごと塵に返してやる。」


「う、嘘だ……これが神々の力……こんなバカな!?種をこんな簡単に滅ぼせるなど......」



 これが本物の神の力……?信じがたいほど圧倒的で、恐ろしくさえある。

 これほどの力を持つ人が、あの程度の爆発で死ぬわけがない......なんて無駄な心配を......


 ――でも……この星が壊されてしまうのは少し...悲しい。



「お願い......壊さないで。図々しいのは分かってます。でも私の......故郷なの。」


「……大丈夫、壊さないよ。怖がらせてごめんね」



 彼は......私をなだめるように優しく抱きしめた。



「な、なんなんだ。何なんだ貴様は!ふざけやがって!突然現れて絶対的な力で全てを叩き潰すなんて!私はこのために何年準備を重ねてきたと思ってる!!この星から出ていけ!」


「ああ、もう!黙れよ」



 その言葉のあと、男は下半身だけを残して消滅していた。

 人が死んだというのに、私は彼の腕の中で心臓が高鳴るのを感じていた。

 抗えない何か......近づけば近づくほど、彼との繋がりを深く感じる。



「もう一度、聞かせてほしい。ルシアは……この世界に未練がある?」


「......ない、っていうと嘘になる。お父さんお母さんはいいの。でも博士や他のみんなは私のせいで......それにこの星は私が居なくなったら。だから!」


「それだけ?博士たちが生き返って、君がいなくてもこの星が困らない。それが叶えば、もう未練はない?」


「でも……そんなこと、できるわけ……」



 死んだ人は戻らない。失われたものは元には戻らない……

 それが世界の理、覆しようのない摂理のはず……。


 ――でももし、そんな“摂理”を作り変えられるなら……



「できるよ。僕は奇跡を起こす、輝く光だから。」


「アハハ......何それ.....」


「ほら。後ろ......」


「へ?」



 振り返ると、見慣れた白衣の男たちが立っていた。

 そしてその中には、先ほど頭を吹き飛ばされた博士がおり、こちらを見て微笑んでいた。





 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★



 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 圧倒的力で全てを破壊した神々は......

 ついにその力で再生の神秘をも可能とする。


 次回、ルシア遂に天上神界へ......二人の原点は遂に終幕へ。


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は

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 更新は明日の『『20時過ぎ』』です!




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