59話ー③ 怯える蓮子




 ――――


「ぅぅ……」



 見慣れた壁……慣れ親しんだ機器の冷たい感触が私を包む。

 目が覚めると、私はあの実験施設に戻っていた。しかし、以前とは異なる光景が目に飛び込んでくる。

 周囲には数倍の警備、そして私を拘束するための厳重な装置――。



 ――そして、視界の端に、信じがたい光景が広がっていた。



「……博士?」



 血まみれで床に倒れている博士の姿……

 その身体は無数の銃弾で貫かれ、辺りに血が滴っている。



「博士!!!どうしてこんな……!」


「すま…ない……君を探すため、外部の……傭兵を呼び……それが……間違いだった……」


「違うの!謝るのは私の方……私が皆を傷つけて、逃げたから……本当にごめんなさい……」


「……いいんだ……全て、私たちの……不甲斐なさの結果だよ……1500年も……よく……」



 パァン――

 乾いた銃声が響き、博士の頭は一瞬で吹き飛んだ。



「え......?」


「よし!お前ら!!これでこの女の“神力”は俺たちのものだ!!これで世界は俺たちの手に落ちる!!」


「「「うぉぉぉぉぉぁぁ!!」」」


「“神力”......?なに、それ......」



 なぜ?どうして私は殺されないの?

 この人たちは、危険な私を消すために来たのではないの?



「はは、知らなかったか?お前の力がどう使われていたのか......まさか、大気に返してるなんて、思ってたんじゃねぇだろうなぁぁ?」


「どういうこと......?」


「外に出た時に気づかなかったか?お前の抜き取られた『神力』ってのは、言わば万能のエネルギー。今や地上の全ての技術に使われる動力なんだよ!」


「じゃあ博士は、私を......」


「だまされてただけだよぉ!! 地上の文明はなぁ、全部お前の犠牲の上に成り立ってんだよ!!」



 博士は.......私を救おうとしてくれたわけではなかったの?

 ならあの最後の言葉は......?何もかも、嘘だったというの......?



「ここを知っている奴らは全員始末した!これで世界のエネルギー市場は俺たちが支配できる!!」


「ボス!不運な奴らですよね!俺たちが環境テロリストってことも知らずに、向こうから接触してきたんですから!」


「これぞ奇跡だな!!国家公認のプロ傭兵なんて肩書きにまんまと騙されるなんてよ!!」


「嘘......なんで、どうして......」



 きっと、急いでいたんだ。普段なら、裏も取らずに依頼するなんてあり得ないのに……

 すべての始まりは、私が逃げ出したこと。私さえ逃げ出さなければ......。


 そういえば......私を助けてくれたあの人はどうなったの......?

 この施設に戻されたなら、あの場所は無事だったってこと?

 少なくとも文明が滅びていないなら、きっと巨大な爆発は起こっていないはず......



「教えて......私がいた場所に、誰か......誰かいなかった?」


「あぁ?知るかよ。半径2キロは、草も残らず蒸発してたんだからな。」


「は......?」



 ――私が......私が彼を殺したんだ......

 初めて私に温かさをくれた人を......初めて安堵を与えてくれた人を......。



 ――私が殺した――



 すると悪党の頭のような男が口を開く。



「さて、と。さっそくエネルギーを抜き取るか。」


「待って、まだ......暴走の兆候なんて......」


「くははは!! 本当に話の通じねぇ奴だな!!それはそこに転がってるバカの話だろ?そいつはな、テメェの負担を減らすために、俺らを何度も滅亡の危機に追い込んだ大罪人なんだよ」


「だから、どういうこと!?」


「エネルギーなんざいつだって抜けるんだよ。テメェが永久に苦しむ点に配慮しなきゃなぁ?わざわざ暴走前まで待たなくてもいい、その方が安全だ。」



 これからずっと、あのエネルギーを抜き取られる痛みに耐え続けなきゃいけないの?

 耐えられるわけない。数か月に数時間でさえ壊れそうだったのに、それが永久に続くなんて……!



「いや......やめて!!壊れちゃう!もう痛いのは嫌なの!!」


「うるせぇ、スイッチオンにするぜ。じゃあな、廃人にでもなれ。」


「いやぁぁぁぁ!!」



 私はなんて自分勝手なんだろう。私が逃げ出したせいで、皆が死んだのに……

 自分が苦しいとわかった瞬間、自分の身ばかり案じて泣き叫ぶ。

 これはきっと、私への罰なんだ……逃げずに耐え続けていたら、こんなことにはならなかったのに。



 ――今さら後悔するなんて……私って、本当に救いようのないクズ。



「お~い、ちょっと待ってよ。主役、忘れてない?」



 聞き覚えのある声が、私の絶望の淵に響いた。

 ――私を助けてくれた、彼の声だ。


 闇に包まれた私の運命に、輝く一筋の光が差し込んで見えた。



「誰だ貴様!!主役だと!? 何の話だ!!」


「そりゃもちろん! ヒロインを助ける、とびっきりの主人公さ。」



 武装したこの人数を相手に......勝てるわけない。

 なのに......どうしてか自分が助かったような気がした......








 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★



 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 テロリストに占拠される実験施設......奪われた命......

 目の前で起こった出来事と、これから起こる出来事に怯えるルシア。

 

 そんな中、満を持してルークは訪れ、彼女は神々の力を思い知る。


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は

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 更新は明日の『『20時過ぎ』』です!



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