58話ー③ 壊れて消えた、最初の玉......
――ドチャッ......
「エリー?」
鈍い音と共に隣の檻に投げ込まれた肉片......至る所がゲル状に変質している。腕や脚らしきものは崩れて見当たらない。
そして......目だろうか?その形は楕円に歪んでいて、もはや人のものとは思えない。
一体......何が悪かったんだ?
どこで間違えた......?
そもそも未来ではエリーは死んで......いやその未来は本当に現実なのか?
こっちが現実で......未来というのが、僕の妄想だったのではないだろうか.......
「.......」
そうだ......知恵が、いや......『知識』が足りなかったんだ。
『知見』なき思案は浅知恵にしかかならず......『経験』なき予測はただの妄想でしかない。
「んぃぃ......」
「エリー.......」
「......がぁッ......」
変わり果てたエリーの姿......
僕は大きな声を出す気力すらなくなっていた。
「......待て、エリー。お兄ちゃん......まだ助けてない......」
「ギギャ......ァ......ァ..........」
――エリーは死んだ......
これが僕の傲慢と無知の結果なのか?兄として、僕は一体何をしてきたというのだ。
助けると誓って、口先だけで正義を語り......その結果がこの惨劇か?
散々苦痛に耐えさせた挙句、妹をゲル状にして殺すのが兄の役目だったのか?
何が助けるだ......拷問されジワジワ殺される妹を、最もらしい理由で放置してただけじゃないか......
「おい、被検体1156番。出ろ、お前の番だ......」
「はい、すぐに......」
悲しみは無かった......憤りだけが沸き上がってきた......
ふざけるな、悪いのは僕じゃない......こんな実験を敢行したクズどもだ...!
今、何を血迷っていたんだ?エリーを殺したのは僕じゃない!
ここで自責思考に陥るのは逃避だ......身勝手な自分の為の逃げ。
エリーは僕に自責させる為に苦しんだのか?違う!!彼女はそんなこと望んじゃいない!
苦しんで死んだあとに、残された兄がありもしない罪を悔いる......そんなのあんまりだろ?
「行きますよ......」
復讐なんて選ばない。エリーが死んだなら、蘇らせればいい。
やり直す手段が必要ならば、それを見つければいい......ただそれだけだ。
ゲル状になったら死ぬ?そんな必定の世界摂理ごときで、僕が妹を諦めると?
世界摂理が邪魔ならば、僕が全て叩き壊す.....
そしてその為には勢いじゃなく、現実的かつ合理的な計画も必要だ。
もしその道に神が立ちはだかるのなら、ことごとく殺して僕が神になる......
......復讐という自己満足に逃げるつもりはない。
その瞬間......遥か遠くから、世界の果てから......誰かに見つめられた気がした。
――今度こそ、僕は救う......
そうだ、僕は思い出したんだ。エリーはあの時......何度も。
『ダメェ......ダメェ!!』
――頼む.......僕から怒りを奪わないでくれ......絶望を取り除かないでくれ。
『ごめんね......壊してごめんね......』
――謝るなよ......次は大丈夫、絶対に救って見せる。
『大丈夫。今度は私が......守るから。』
その言葉と共に......僕の記憶に靄がかかり、意識が突然ブラックアウトした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
最初のエリーは異形の物体となってルーク前から消えてしまった。
その絶望の積み重ねは遂に、エリーの言う通りルークを粉々にするにまで至る。
妹の兄を思う選択は、果たして正しい選択なのだろうか?
そして今なお訪れていない、二人の本当の結末は......
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更新は明日の『『20時過ぎ』』です!
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