56話ー➂ 強者による蹂躙





 倉本は全身に膨大な魔力を纏い、アウルフィリア様へと突き進む。

 彼の顔には激しい怒りが浮かび、その目には決して引かぬという決意が宿っていた。



「口を紡げ!!!頂が長女!!」



 僕たちがこの攻撃を受ける立場ならば、余波から身を守ることだけに全力を注ぐ必要があった。

 その魔力の威圧は異常なまでに重く、アウルフィリア様がいなければ息をすることすら困難かもしれない。


 倉本が叫びと共に放った一撃。しかし――



「絶殺剣・空堕とし!!」


「くだらん。貴様の技は……」



 アウルフィリア様は微動だにせず、でその斬撃を軽々と弾いた。

 彼女の余裕さには、もはや畏怖すら感じられる。



「貴様の剣の冴えはまるで進歩していない。魔力頼りの醜い剣術。頂の術理には遠く及ばん。」


「そのような言葉、吐けぬようにしてやろう!絶殺剣・空渡り。」



 彼の姿が見えなくなる。360度、縦横無尽に移動しているらしいが、一切その姿を捉えることができない。

 しかし、そんな本来なら絶望的な状況の中でさえ.......アウルフィリア様は一切その場から動かない。


 僕たちの前に立ち続け、片手で剣を構える。


「絶殺剣・奥義!奈落、落とし!!」


「......奈落はこの程度ではない。」



 アウルフィリア様は先ほどと同様、片手ではじき返した。



「ルーク……何なのこれ!?これが害厄王の実力なの!?」


「空間を自由に駆け、全方位から連撃を繰り出す空間剣術……その完成形かもしれない。」



 その剣術はあらゆる角度から攻撃を加え、相手に隙を与えない超高等な戦術だ。

 だが、アウルフィリア様は一切揺るがない。倉本はあたかも未熟のような言われ方をしているが......


 先生の剣技と同等かそれ以上の技量がある。



「アウルフィリア様、僕たちには構わず.......」


「案ずるな。」



 バキンッ。


 その音は剣が交差した金属音ではなかった。空間そのものを砕くような重く、それでいて鋭い響きだ。

 空中での剣術は同じ型の攻撃でも、自身の場所、向き、位置などにより相手に届く太刀筋が変わる。


 この剣術はそれを最大限利用する、予測不可能な幻剣……しかしそれははったりや虚実の類では無い。

 神知を超越した彼の運動性能と、超絶的な剣の力量が為せる『真実』なのだ。

 空間全体が倉本の斬撃に切り裂かれていく中でも、アウルフィリア様の防御は一切揺るがない。


 ただ、彼女の眼差しには冷たい光が宿っている。



「ハァァアァァァ!!!」



 倉本はさらに声を張り上げ、渾身の力で攻撃を繰り出す。

 しかし、アウルフィリア様は淡々とその攻撃を受け流し、僕たちを完全に守り切っている。

 まるで、彼の攻撃が取るに足らないものだと言わんばかりに――。


 空間が切り刻まれ、数光年先の惑星の残骸が引き寄せられるようにこちらに飛来してくる。

 一合交わる事に世界が軋むほどの衝撃が走る。

 それは僕らを含め、完全回復したザラームさえもが防御の一手を選択するしかないほどに……



「その程度か?倉本よ。」


「抜か……せ!!奥義!死兆星!!」



 突然、倉本の斬撃が無数の鳥に変化し、全方位からこちらへと迫ってくる。

 それは圧倒的な力であり、全てを飲み込むかのように広がっていく。

 その瞬間......アウルフィリア様は初めて剣を両手で握りしめ、倉本の一撃を鮮やかに打ち砕いた。



「もういい。ここで潰えろ。」


「潰えるのは貴様だ!化け物が!!天仙闘法・最終奥義!!無連円斬!!!」



 魔剣神の一つの到達点……


 全ての技を繋ぎ、それを連撃とせず一つの斬撃、すなわち「円斬」に納める害厄王の最終奥義……

【複数を一つにする】という、この世の摂理さえも逸脱した圧倒的な攻撃だ。


 しかし……



「もういい。魔の者よ、散れ……」


「!?」



 アウルフィリア様の刀身が密度をそのままに高速で射出される。

 先程の超広範囲の攻撃とは違い、今回の攻撃は範囲が小さい。

 極限まで引き伸ばされた黄金の光剣は……


 絶頂を極めた『害厄王』の剣術を全て……正面から叩き潰した。

 その光景は圧倒的を超え、もはや同情と哀れみを持ってしまいそうなほどに……

 まるで彼が積み上げてきた『神生』全てを否定するかのように……



「終わりだ。」


 アウルフィリア様は剣を倉本に突きつけ、高らかに宣言した。

 トドメを刺さないのは彼女の騎士道ゆえなのか、それとも何か別の意図があるのか――。



「……」


「倉本さん!!!」



 勝利が確定した。アウルフィリア様は倉本を圧倒し、ここにいる僕たちの安全を守ってくれた。

 僕のやるべきことも明白だ。倉本とザラーム......さらにもう二人の害厄をここで排除するため、残しておいた最後の手段を使う。



 ――切り落とした腕に仕込んだ爆弾を起爆させる。――



「はは......」



 邪悪な笑みを浮かべた瞬間、ザラームは僕の害意に気がついた。



「待て……待て!まさか貴様!!!」


「ザラーム......これが結末らしいよ。」


「やめろ……やめろぉぉぉおぉ!!!!」



 僕は一切の躊躇なく、遊園地に仕掛けた爆弾の起爆した。







 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 圧倒的なアウルフィリアの力の前に、成す術のない害厄王。

 瀕死の二人を守ってなお、揺らがない黄金神を見て勝ちを確信したルークは......


 次回は驚きの人物登場!?


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 更新は明日の『『20時過ぎ』』です!





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