56話ー② 最高の騎士神
アウルフィリア様は、害厄王二人に対してゆっくりと黄金に輝く絶剣を構え直した。
剣はまるで今にも溢れ出そうな黄金のエネルギーをその内に宿し、輝きを放っている。
しかし、倉本の目に浮かんでいるのは、絶望の色ではなく、むしろ興奮と闘志に満ちていた。
「……黄金とは一度相対してみたかったのよ!死んでもここで引き裂いて見せようぞ!!」
「倉本さん!勝てるわけがありません!!」
「いや、ここで殺らねばもう倒せぬ。黄金神の力は広範囲……護りながら戦うことに最も向かぬ力よ。」
確かに、その言葉には一理ある。先ほどの黄金の波動も、アウルフィリア様は僕たちを傷つけないように剣を振るっていた。しかしふと脳裏に疑問が浮かぶ。あの剣捌きは、守ることに慣れている者の剣捌きだ。
「愚弄するな……私は今なお、主君の騎士だぞ!!」
その言葉に、一瞬で腑に落ちる。
アウルフィリア様の剣はただの攻撃手段ではなく、かつて主君を守るために研ぎ澄まされた剣だったのだ。
一体そこにどれほどの苦悩があっただろうか......
これだけの破壊を守護の力にするその過程は『最強の原素エーテル』で片付けていいものではない。
「何だと?貴様……何を言っている!!」
「倉本、貴様……そんな事まで忘れさせられたというのか……」
「何を言っている?」
アウルフィリア様の顔には一瞬だけ哀れみの表情が浮かんだ。
しかし、その表情は次の瞬間には殺意に満ちたものへと変わっていた。
「……そうか、ならもういい。消えろ……」
「倉本さん!!私が命をかけて範囲外に出します!なので……」
「……いやよい。此度のは範囲技ではない。お主だけでも逃げおおせい。」
「ゼニス流剣術・長姉式。」
先ほどまで大河のように広がっていた黄金の光が、全て剣に吸い込まれていく。
その剣から放たれる光はあまりにも眩く、美しい紋様が見えないほどの強烈な黄金光を放っている。
「……何?舐めておるのか?拙者に剣術でも勝っている気か!!」
「……来い。」
たった一言......その一言が何よりも頼もしい。
その瞳からは強い自信と揺るぎない信念が感じられた。
アウルフィリア様は動かず、不動のまま構える。
剣を構えたその姿には、圧倒的な威厳が漂う。
決して自分からは仕掛けない。完全なる受けの剣術……まさに不動の強者。
「……良かろう。二人もろとも切って落とす。紛い物の理外存在と同列に思うなかれ。」
「倉本さん!!」
「案ずるな、ザラームよ。ここを去れ!! 天仙闘法……」
――倉本が放った言葉を最後に、彼の姿が僕らの視界から消えた。
いや、消えたのではない――それは幻術の類ではなく、圧倒的な速度によってのみ成立する事実。
そしてただ消えただけでは無い、足音、空気の振動、気配、殺気さえも感じさせない。
その身体操作の完璧さから、彼の異常な技量が垣間見える。
「そんな……これが最上位の害厄王なの!?」
「うん、そしてエドルモとかいう奴の実力は恐らく……これより遥かに上なんだと思う。」
しかしアウルフィリア様は一切動じることなく、彼の一挙一動を見極めている。
――そしてアウルフィリア様は驚愕の一言を放った。
「弱いな。」
「「「!?!?」」」
僕たちが彼の姿を捉えられたのは......倉本の片腕が宙を舞った後だった。
「倉本さん!!」
「ば……化け物かぁぁぁ!!!」
「嘘だろ……これほどなのか神界最強って。」
「ルーク......私達って......」
しかしアウルフィリア様は追撃することなく、ただ静かに立っている。
それが倉本のプライドを刺激したのか、彼は怒りに満ちた声で叫んだ。
「何のつもりか!武士を辱めるつもりか!!」
「武士?バカを言え。貴様は武士などでは無い、ただの醜い『害厄』だ。自惚れるのも大概にしろ。そして私は騎士だ。武士ではない。」
「そなたも拙者を愚弄するか……」
アウルフィリア様は、倉本に向かって静かに問いかける。
「……頂の老剣神に敗れ、己が身を堕としたかつての剣聖神。貴様の哀れな生をここで終わらせてやる。」
「ビキッ……大概にしろ。そなたも拙者に!哀れみの目を向けるか!!!才は拙者の方があったのだ!!」
「好きこそ物の上手なれ。剣祖様は既に『冠』の域にいらっしゃる。お前ごときの穢れた愚者が測っていいお方ではない。」
「口を紡げ!!!頂が長女!!」
倉本は自らの全身に膨大な魔力を纏い、アウルフィリア様に向かって突進していく。
その瞳には憤怒と執念が宿っており、これまでとは異なる狂気が感じられる。
長い別世界での戦いの最終局面が始まった……
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どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
生まれながらに授かった『最強の能力』
しかしそれは彼女の成りたい姿とは異なる能力だった。
一切の努力を怠らなかった大天才、アウルフィリアの軌跡……それは主君に捧げる勝利の美酒!!
もし面白い、続きが気になる!と思った方は
【応援】や【レビュー】をしてくれると超嬉しいです!!
更新は明日の『『20時過ぎ』』です!
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