第56話 黄金の最強神

56話ー① 絶対破壊の黄金神





「やれるものならやってみよ!!害厄王二人と!この魔物の軍勢に勝てるのならな!!!」



 確かに状況は最悪に近い。あまりにも膨大な数の魔物と、絶大な力を持つ害厄王が二人……

 だが、何故だろう。心の奥底で、不思議と大丈夫な気がしてならない。

 これほどの戦力差があっても、自信に近い安堵すら感じている。



「倉本よ……何と哀れな。まだそんな場所をさ迷っているとは……」


「何?」



 アウルフィリア様の口から放たれたその言葉に、倉本と呼ばれる男がわずかに反応を見せる。

 二人には、何らかの面識があるのだろうか?しかし倉本という男の方からはそんな雰囲気はしない。


 以前から感じていた違和感が、今この瞬間に疑問として明確になる。

 ヴァラルのような存在が、部下を持ち組織を作ること自体、何か奇妙だ。

 この絶対悪とされる存在が、果たして自身が害さない対象を作るのだろうか?



「ここで、その終わりなき因果ごと滅ぼしてやる。世界の害厄よ。」


「倉本さん……」


「計画を見直すとしよう。最終兵器はここにて確実に……切って落とす。」



 倉本は冷徹に言い放ち、正面に魔刀を構える。その鋭い眼差しと共に、全身に張り詰める殺気。

 だが、アウルフィリア様はまったく怯む様子もない。彼女は凛と立ち、黄金の剣を手にしている。



「私は潰えない。なぜなら私は!!神界最後の砦なのだから!」



 倉本が剣を前方に構えたのとは対照的に、アウルフィリア様は剣を体の横に構えた。

 そのまま深く息を吐き、剣から放たれる黄金の光が周囲に満ち始める。

 そして......しかし倉本という男の方からはそんな雰囲気はしない。


 瞬く間に視界を埋め尽くす黄金の輝き……

 いや、輝きというにはあまりにも強大すぎる――まるで世界を覆い尽くすような......。



「ルーク……あれって……」


「嘘だ......嘘だ嘘だ!そんなバカな!!理論上どれだけのエネルギーが必要だと思ってる!!ありえない!!」



 驚きと狂喜が交じり合い、僕は思わず笑みを浮かべる。

 リナス機構に匹敵する未知の領域が、今目の前にある。


 今ここに現れたのだ――僕が求めていた「未知」が目の前で顕現している。

 およそ信じられない......世界条理の外に逸脱した『個』を僕は初めて目撃した。



「ルーク?」



 そうだ、理論上でもありえないほどの力……真面目に考えるだけバカバカしいと思っていた力......

 現実となった今でも信じられないが……目の前の全てが僕の常識を破壊し続ける。



「あれは……あの黄金のエネルギーは……」



 ......原素エーテルだ......



 全てのエネルギーの中で最も純粋で、最も根源的な力……神知をも超える絶対のエネルギー。

 それほどの圧倒的な力を、魔力のように放出している事実だけでも理解の範疇を超えている。


 余波だけでも0.02秒あたりにアファルティア様、数万人分の魔力が消えている計算になる。



 過去のステアの発言が、頭の中で蘇る。

【燃費なしに原素エーテルを、バカスカ無駄打ちできたら最強なんじゃない】という発言が……



「君の言った最強が……今、目の前にいるよ。」


「ちょ。ルーク!君って誰のこと!?ねぇ!!」



 その問いかけも気にする余裕すらない。アウルフィリア様の剣から放たれる輝きは......

 言葉で表現することさえ愚かに思えるほどのもので、僕の常識もすべて破壊していく。


 ――アウルフィリア様は、黄金の輝きを纏った絶剣を後方に引く。

 すると剣先に無限のエネルギーが凝縮されていくのを感じる。



「二人とも、動くな。」



 彼女が静かにそう告げた瞬間、剣から溢れる黄金の流れがこの世に生まれ出た。

 それは光の川、いや黄金の激流。目測で計れるものではない。


 遥か遠方、数百万光年の彼方にまで到達している――

 その激流が星々や銀河を消滅させながら、魔物の軍勢にゆっくりと迫っていく。



「ルーク、これ何? 何なのこれ!!頂って、こんなに遠いの?」


「これだ!これこそ未知だ!!僕の求めていた本物の未知!! 不可能の領域!!」



 アウルフィリア様の剣が、黄金に輝く絶対の力を纏いながら静かに振り抜かれる。

 僕たちに直接の衝撃はない。......まるで映画を見ているようだ。



「黄金の輝きの中、安らかに眠れ。」



 一振りの剣が空間を切り裂く。黄金の川がゆっくりと魔物を飲み込み、前方の全てが光で満たされていく。

 その光景は、この世の終わりと言われても、納得せざるおえないほどの力。


 無数の魔物がただの塵さえ残さず消滅していった。

 その後に残るのは静寂……ではなく、アウルフィリア様から放出される元素エーテルの轟音。



「バカな……こんな事が……倉本さん!!こんなのに勝てるんですか!!」


「黄金神……この化け物が!」


「次は貴様らだ。」



 最強の黄金神は、その剣を突き付けて高らかに言い放つ。





☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


かつてステアの言った『最強の構想』の伏線が回収されました。

アウルフィリアは無限の原素エーテルを内包しており、条理の外側にいる人物の一人です。


次回、まだまだ続く『現神界最強』の戦い!


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は

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 更新は明日の『『20時過ぎ』』です!



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