54話ー② 知謀のルーク





「僕にこの策を使わせるとはな。」


「はったりか?」



 すると空中にひとつの映像が映し出された。


 それは……ザラームと戦い始めた遊園地の映像だった。

 画面には、深い傷を負ったまま倒れ込む『狂乱のエリス』と『虐殺のファリス』の姿が映し出されている。

 瀕死ながらも辛うじて息をしている彼女らには、まだ意識が戻っていない。



「何のつもりだ?」



 倉本という男は、静かにルークに問いかけた。



「僕が……何の目的もなく、腕を…切り落とさせたと思うか?」


「え?あれ、わざと、ゲホッ」



 ルーク……あなた、一体……どこまで読んでいたの?

 彼がザラームと戦う前から、もうこの展開を想定していたの?

 彼の計画がどれほど綿密だったかを思い知らされ、恐怖すら感じた。



「発言には気をつけろ。拙者の一刀にその命を握られていることを忘れるな。」


「ハハ……」



 しかし、私はその後見た。ルークの……あの邪悪な笑顔を。

 そこには、恐怖の欠片もない。むしろ余裕すら感じさせる表情だった。



「お前達こそ気をつけろ。切られた腕の中にはな……超小型の魔道核爆弾が仕掛けてある。」


「な!?貴様ぁぁ!!!俺達の仲間を人質に取ろうというのか!」



 嘘でしょ……ルーク、いつどうやってそんな爆弾を……しかも私に内緒で?

 頭の中が混乱し、心臓が激しく脈打った。信じられないと言いたいけどルークなら……やりかねない。



「動くな!!少しでも動いたら爆発させる。当然、僕かルシアが死んでも、爆発するようになっている。」


「倉本さん!これはハッタリです!もし本当なら、俺との戦闘中に爆発させない理由がありません!」



 ザラームの焦りが滲んだ声が響く。

 しかし倉本は動じなかった。彼は冷静に、ルークを見つめた。



「……なるほど。呪術か。」



 その言葉に、ルークは微かに笑みを浮かべた。確信に満ちた表情だ。



「そうだ。こんな、状況でしか発動しない制限を課すことで、威力を底上げした。」


「なら、二人にはとなってもらおう。」



 倉本の声は冷たく言い放つ.......その瞳には、一切の迷いがない。その無慈悲な態度に、私は背筋が凍る。

 ――そうだこの男......倉本という男は、正義の味方ではない。悪に組みする者なんだ。


 ルークがこの可能性を想定していないわけがない。

 でも、これ以上時間を稼ぐ策なんて……



「待ってください、倉本さん!彼女たちは仲間です!!」



 ザラームが必死に叫んだ。

 だが倉本の態度は変わらない。冷酷な目でザラームを見下す。



「仲間?生まれて5億年程度の最上位神に敗れ、今なお拙者の足を引っ張り、あまつさえヴァラル様の脅威となりうる者たちの人質になっているやつがか?」


「それでも……の殲滅力は侮れません……」


「侮れぬ?一理どころか、一分の論理もない意見だ。他で補完できる。二人はあくまで数合わせだ。歴代の害厄王とは比べるまでもない。」



 歴代の害厄王? 他の害厄王はどこに行ってしまったの? どうして世代交代が……?



「まだ強くなる可能性は……」


「敗者がそれを言うか?そもそも言ったはずだ、世界軸の移動はお前にはまだ早いと。それでも後を考えて、待機させていたのだ。戦闘するなという命令をなぜ破った!!」


「それは……」


「……なるほど。貴様、そういうことか。」



 ――どういうこと?少なくとも、そこにルークがこうなると予想した何かがあるのか?

 倉本はふと空を見上げた。そしてその瞬間、彼の表情が一瞬だけ険しくなった。



「ひとまず撤退だ。これだけ大きく力を使ったのだ。アウルフィリアに見つかりかねん。一度やり合ってみたい気もするが……今日ではない。」


「ですが!あそこには人工的とはいえ、理外存在が……」


「その程度で倒せるわけがなか…….......これは!?」



 突然、空間が揺れ始めた。まるで宇宙そのものが震えているかのような感覚。

 地震ではない……空間共振か!? 振動と轟音が広がり、空気がピリピリとした緊張感に包まれる。



「じ……地震!?いやここは宇宙……空間共振か!?」



 そして、極めて不快な音――空間が壊れるような音が響き渡った。


 黄金の波動が、目にも止まらぬ速度で僕たちの前に到達する。まるで時空そのものを押し流すかのようだ。

 降り立った瞬間.......周囲の小惑星が根こそぎ吹き飛ばされ、圧力によって全てが粉砕されていく。



「……倉本か。隣にいるのは報告にあったザラームだな?」



 その声が響いた瞬間、全てが静まり返った。黄金の波動の中から姿を現したのは、アウルフィリア様だ。

 それまでの絶望的な空気感は、彼女の安心感によって吹き飛ばされた。


 そして倉本は悔しそうに叫んだ。



「アウル……フィリアか!」



 表情が強張った。そんな害厄王に、彼女は威厳に満ちた声で言い放つ。

 ちなみに僕たちには、いつのまにか回復薬がかけられている......



「我が主の命により、これより掃討を開始する。」


「やれるものならやってみろ!!害厄王二人と!この魔物の軍勢を打ち破れるのならな!!!」



 そして僕たちは知ることになる.......

 天上神界最強と歌われる黄金神の異次元の強さを。






 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 爆弾事態は仕込んでありましたが、この作戦事態は思い付き。

 腕に爆弾や切断用のワイヤーを埋め込んで調査に臨んだ狂気のルーク。

 そしてザラームが必死に彼女を助けようとする理由とは?


 次回!天上神界最強の黄金神が、ついにそのベールを脱ぐ!


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は

 【応援】や【レビュー】をしてくれると超嬉しいです!!


 更新は明日の『『20時過ぎ』』です!


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