第53話 『頂の神』と『命の祖』
53話 ここには、私がいる!
―――遥か太古―――
「なんで……どうして……」
私は嘆いた。
私は悲しんだ。
自らの無力さを、憎まなかった日は無かった。
母として、子供たちを守る力さえない自分を――。
子供たちのために命をかけられない母が、この世にどこにいるというのか?
――古の時代……私はヴァラルとの戦いに敗れ、回復不可能なほどの致命傷を負った。
それ以来、私の存在力は回復することなく、日に日に力を失っていった。
今では、一日のほとんどを眠りに費やし、立ち上がることさえ難しい。
もし彼がいなかったら、私はもうとうに朽ち果て、死んでいただろう。
「私……何のために存在してるの……」
後悔と自己嫌悪に沈む私の背後から、いつもの声が聞こえてきた。
「また、その話か?」
彼......私が愛する存在。この世の全ての頂に立つ言語化の不可能な『ソレ』
概念すら超越したこの世界の支配者でありながら、人間味のある自我を持ち合わせている、この世界の最大の矛盾。
ここは、彼の世界の最深部。
その中でも最も隔絶された領域だ。『アレ』でさえも、この領域への侵入を許したことはない。
この場所は、究極の幻想世界にして絶対的な領域なのだ。
「なら……どうにかしてよ! あなたなら、ヴェルちゃんならできるでしょ?」
「うーむ、ヴァラルには少し期待してるからなぁ。私の想像を超える可能性を持っている。だから、殺すには惜しい。」
「……ふざけないでよ!!」
「私は至って真面目だがね?」
何て……何て人間臭い頂き……これが擬似的な人格だと分かってはいる。
でも私は子供達を助けたい。子供達が幸せなら私は……苦しまなければ私は……
私は信じたかった。子供たちを助けられる可能性を、彼が切り開いてくれることを。
たとえそれが私の希望的観測であっても、私は母として子供たちを守りたかった。
違う......これは言い訳だ。私は恋をして女としての側面を持ってしまった。
だからこそ、母としての本分を果たせず、こんな無力な自分を許してしまったのだ。
「……私は……お母さん失格だね……」
「良かろう。ならば手を貸してやる。」
「ま、また心を読んだの?」
「いや、君の考えていることなど、読まなくても分かる。」
「じゃあ……何するの?」
彼はいつもそうだ。全てを見通し、全て意のまま......
全知全能を超える力を持ってして、自身の全知さえ封印する化け物......
「複合文化統一世界を作る。」
「ふくごう……? 何それ?」
「乱立する数多の文明を一つに統合するのだ。一つの巨大な文明ならば、ヴァラルに蹂躙されることはあるまい。私も、可能性の宝庫であるオリジナル世界を無闇に破壊したくはない。」
「そんなこと……」
――できる。彼ならば、できるだろう。だが、それは筋道に外れた行為ではないだろうか?
圧倒的な力で統合された世界が、本当に子供たちのためになるのだろうか?
「君には無理をしてもらうことになるが、生命そのものを進化させるのはいつも君の役割だ。」
「……やる。」
私はとうに壊れた体を無理やり酷使し、立ち上がった......
「では、手始めに……この世界の神として、どこかに降り立つとしよう。」
こうして、彼は世界統一を開始した......
それは、圧倒的な力を用いた壮大な暇つぶしのようでもあった。
だが、彼は自らの力を直接振るうことはしなかった。
あらゆる状況で、彼は常に相手と同じ条件で戦い続けたのだ。
その結果――
「こんな……こんなにあっさり……」
「ゆっくりと、5年も掛けたのだ。少しは楽しませてもらわねばな。」
彼は不敵な笑みそう言った。その道のりは当然のごとく全勝無敗......
たった5年。たったそれだけで、彼は宇宙全ての文明を統一してしまったのだ。
そして……後に第5惑星アルケコリフィと名付けられる惑星で、始まりの演説が始まった。
超常の城、その最も高き場所から、彼は子供たちを見下ろしている。
「臣民の諸君。私が新世界の神である。」
その突飛すぎる宣言に、子供たちは唖然とした様子を隠せない。
いくら圧倒的な力で新たな世界を創り上げた英雄でも、開口一番「新世界の神」と名乗るなど誰も予測していなかった。
「喜べ、私がこの天に居る限り、君たちが敗者となることは無い。」
その一言に、多くの人々が涙をこぼした。この時代、世界はそれほどに絶望に覆われていたのだ。
その涙を見た私は、自身の不甲斐なさに胸が痛んだ。
これほどまでに彼らが苦しんでいたというのに、私は何一つ、子供たちを救うことができなかった。
「すべての絶望、数多の障害、押し寄せる外敵……すべてを凌駕する、頂点の力でねじ伏せてよよう。」
「ありがとう……」
誰にも届かないような小さな声で、私は呟いた。
「ここに、世界すべての神々の頂点、『全神王』が天上神界の建界を宣言する!」
歓声は上がらなかった――誰一人として、喜びの声を上げることができなかった。
それは、異様な光景だった。だが、それほどまでに、この頃の世界は荒れ果てていたのだ。
子供たちの顔には、力が抜けたような安堵の表情が浮かんでいた。
そして、彼はその後、伝説の言葉を放つ――後に彼の代名詞ともなる言葉を。
「君たちはもう、勝利以外を味わえない.......
それは、絶対常勝の時代が幕を開けた瞬間だった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
第53話は天上神界の建界の理由についてでした。
次回はまたルーク達の物語に戻ります!!
もし面白い、続きが気になる!と思った方は
【応援】や【レビュー】をしてくれると超嬉しいです!!
更新は明日の『『20時過ぎ』』です!
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