52話ー② 邪剣の害厄王
舞い散った塵が晴れ始めると、何やら見慣れない人影が見える.......
そしてその人影から落ち着いた威厳のある声が発せられた。
「良き太刀筋よ。」
「……誰だ。」
瀕死のザラームの前に立っていたのは、一人の侍だった。和風の袴をまとい、口や目が埋め込まれた気色の悪い刀を握りしめている。
佇まいからもただ者ではないのが分かる。恐らく、栄治郎先生と同じ魔剣士だろう......
「才に満ち溢れている。ここで死なすには惜しい。」
「それは……どうも。」
間違いない……こいつは万全な状態のザラームよりも遥かに格上だ。
そして、ザラームとは違い、弱体化の影響を受けていないのだろう。
「く、倉本さん……すいません……俺、」
「言ったであろうが。そちにまだ世界軸の移動は早いと。」
「すいません……」
やはり、世界軸の移動は何らかの弱体化を伴うようだ。
ならば世界軸の移動で弱体化をしない条件は何だ? そして……なぜ僕には何の異変も起きない?
もしや世界軸の移動には慣らしが必要なのか?
「ヴァラル様の格を貶めるような結果を出しよって。」
「本当に面目ありません……」
「まぁよい。もう下がっておれ。あとは拙者がやる。」
状況としては最悪だ。ザラームを上回る実力者が出てくるとは……限界を超えたところで、相手は本物の怪物。
勝機はない。 根源共鳴を通じて、ルシアの震えた声が聞こえてくる。
「ル、ルーク……私達……もう。」
「方針変更......全力で逃げる。戦うよりその方が確率は高い。」
戦えば成長する間もなく、負ける。今の限界を超えても、あの侍には到底勝てないだろう。
たとえ成長したとして、追いつく前に殺されてしまうのがオチだ。
――すると、倉本と呼ばれた侍が、殺気を放ちながら口を開いた。
「逃げるか?そう考えたのだな?」
「ゾワッ……」
彼の殺気が重々しく濃密な絡みついてくる……圧し潰されそうだ。
僕は辛うじて抵抗できているが、ルシアは完全に気圧されている。必死に抵抗しようとしているものの、その瞳には絶望が浮かんでいる。
「そんなうぬらに朗報だ。」
そう言うと、倉本という男はゆっくりと手を振りかざした――
「な!?」
「……嘘、こんなのもう……」
全方位から、無数の魔物が出現した。巨大な軍勢だ。その一体一体が、狂化した黒龍以上の強さを誇っている。
無限に広がる宇宙空間が、それらの魔物たちによって埋め尽くされていく。
その中には、原初熾星王に匹敵するほどの強さを持つ個体もいる。
しかし、僕が魔物に気を取られていた時......
「死ね。」
「ッ!?」
「ルーク!!」
その刹那......
僕の肉体は.......冷たい刃に切り裂かれていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
ザラームには勝ったものの......新たなる強敵が出現。
一瞬でルークを切り裂き、ルシアは再びあの日のトラウマを思い出す。
逃れられるはずのない脅威に、果たして二人の物語は終わってしまうのか?
もし面白い、続きが気になる!と思った方は
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