51話ー➂ 禁断の破壊兵器
「……攻撃開始。」
近接型、デバフ型、遠距離型の3体で構成された60部隊が、一斉に砲撃を開始した。
切頂20面体の頂点に、ザラームを中心として部隊が配置されている。
「リトルルークの陣形は僕の指示通りに。」
「分かった……」
ここからは完全に読み合いの段階だ。一瞬の隙や判断ミスで、勝敗がどちらに転がるか分からない。
「P1-αからH3-αまで、ザラームを起点に左旋回。H5-γからH12-γまでは後方に距離を取って一斉砲撃。」
「ル、ルーク、それだと防御が薄くなる箇所が……」
「左に旋回した隊はそのままザラームに接近。」
「ルーク……」
指示されているザラームは恐らく、この誘いには乗ってこないだろう。
防備が薄い箇所をどう動くかで、敵の行動パターンが見えてくる。
相手が僕以上の知恵を持つならば、恐らくあの位置から動かないはずだ。
「え?どうして?」
「……だろうな。」
やはり……ザラームは動かなかった。確実にこちらの意図を読み切っている。
しかし、僕より知略に長けた相手を誘い込むための対策は、すでに打ってある!
「ビンゴ!ルシア!前線を一気に押し上げて奇襲だ、包囲網を狭めろ!」
「え?でも!それじゃあ遠距離特化の意味が……!」
「早く!!」
「もぉ、教えてよ!」
リトルルークは陣形を維持しながらザラームへと接近する。
防備が狭まったことで、ザラームも回避の余地がなくなり、防御に手を取られ始めた。
このペースで防御を続ければ、再生が間に合わず、持って数分といったところだ。
「ルーク……これなら。」
「……来い。」
「え?ルー......」
「闇の!!滅殺剣!!!」
その瞬間、ザラームが恐ろしい威力の剣撃を放ってきた。
しかし、範囲は限定的だ。おそらく本来であれば広範囲を吹き飛ばす技なのだろうが......。
今のザラームでは、せいぜい陣形に穴を開ける程度の力しか残されていない。
そして、ザラームが激しく叫ぶ。
「うぉあぁぁぁぁ!!」
「ルーク、突破される!ねぇルーク!」
「リトルルーク、自爆プログラム発動!」
「え?私そんなプログラムなんて……」
ルシアの戸惑いとは裏腹に、リトルルークは次々と爆発を始める。
リトルルークに上書きされた自爆の術式は、密度が薄い箇所と高い箇所を意図的に作ってある。
この爆発の威力なら、今のザラームには致命的なはずだ。
「ははは。他に凌ぐ手段があるなら、試してみろよ!ヴァラル!!」
「ぐぉあぁぁ!」
ザラームは僕の誘導したい経路に沿って回避している。もはや彼には、このルートを通る以外の選択肢はない。
防御に転じれば再生が追いつかず、命はあと十数秒といったところだ。
死にかけのザラームに、ヴァラルがどれほどの指示を与えようとも、行動の選択肢は限られている。
「ルシア!とびきり遠くへ転移だ!どこでもいい、急げ!」
「う、うん!!」
僕たちは遥か遠方へと転移した。
周囲は真っ暗闇の宇宙が広がり、星々や銀河が美しく輝いている。
「ルーク……ここは?」
「ルシア、衝撃に備えて。」
「......え?」
「構築・光柱障壁、発動。」
次の瞬間、目の前で途方もない規模の爆発が広がった。
ガンマ線バーストに匹敵するほどの膨大な爆発だ。
ルシアも、その爆発の発生源が僕たちがもともといた地点だとすぐに気付いたようだ。
「ル、ルーク!!あんな破壊兵器、どこで手に入れたの!?天上神界でも個人の所有が厳重に規制されているのに!」
「いや、あれは本来の破壊力じゃないんだ。」
「え?」
「呪術で、破壊力を極限まで強化した。」
「不利条件ってやつ?」
魔力と呪力など異なるエネルギーの融合は通常、相性が合わないことが多い。
だが、科学は例外だ。科学技術はあらゆるエネルギーや術と親和性が高く、ほとんど邪魔をしない。
それによって、通常の性能を超えた兵器を作り出すことが可能になる。
もちろん、膨大な知識と幅広い分野の原理に理解が必要だが、僕はその条件をすべてクリアしている。
実力で勝てないのなら。それをひっくり返す手段を予め準備しておけばいいだけの話だ。
「不利条件を課した結果だよ。……ほぼ不可能に近い条件をね。」
課した条件はこうだ。
・超格上の相手がこちらの攻撃により瀕死状態
・一定の軌道で起爆位置の4m以内を通過しなければ起爆しない。
・ザラーム以外に対しての効力を極限まで弱める。
・最後の条件は、万が一自分たちが巻き込まれた場合、自死をしなくてはいけない。
この普通起こりえないような条件がすべて揃った結果が、あの爆発力だ。
今のザラームが生き延びられるはずがない。
だけど……何だ、この不安は。
「ルーク、高速接近反応が……」
「ハハ……何でだよ。もう策もほとんど残ってないってのに。」
「これからどうするの?諦める?ルークがそう言うなら私……」
「まさか。構えてルシア。生きて帰ろう......」
ルシアの顔は、さっきとは違う。
ザラームというトラウマに怯えていた先ほどとは、まるで別人のようだ。
そしてルシアは静かに答えた。
「任せて。死んでもあなたの隣を走り続けて見せるわ。」
「できれば死なずにがいいな?」
――ザラームとの最終ラウンドが、いよいよ始まった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
知略戦を制すことのできなかったルーク......
万策尽きた彼に襲い掛かるものは一体何なのか?
もし面白い、続きが気になる!と思った方は
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