49話ー➂ 『狂乱』と『虐殺』の害厄王

 





 ......条件は全て達成した。


 この状況なら、ある程度の緊張感が走っても不信には見えないだろう。

 ルシアがトラウマと不調から多少ボロを出しても問題ない。



「さようなら〜。ザラームが言ってた程の脅威じゃないじゃ〜ん。」



 僕は奇襲の確かなる成功を確信した上で、ルシアと最速で剣撃を仕掛ける。



「え??」



 敵と思わしき少女から呆気に取られたような声が漏れる。

 それもそのはず彼女の体には、既に大きな十字の斬撃が刻まれていたのだ。


 僕たちのしたことはシンプルだ。手を繋ぎ根源共鳴の発動を直前で止める。

 そしてぬいぐるみに触れる瞬間に根源共鳴を発動し、最速の斬撃を二人で叩き込む。

 油断している上に、近接戦闘が得意でない低能に防げる道理はない......完全な直撃だ。



「ガハッ。な……なんで……いつから……」



 答える必要はない、速攻で叩き殺す!

 間髪入れずにトドメを刺そうと、次の斬撃を繰り出す。



「死ね。」



 バキンッ。


 しかし、その光刃が彼女に届くことはなかった。

 六角形の小さなシールドが瞬時に現れ、僕の光剣を防いでいたからだ。



「エリス、またやられてる。相変わらずのクズでバカだね。」


「お姉……ちゃん……」



 振り向くと、トンガリ帽子を被った魔女が宙に浮いていた。

 彼女は箒の上に乗り、溢れんばかりの膨大な魔力を垂れ流している。

 会話からして、この二人は覇道王様の話に出てきた害厄王、『虐殺のファリス』と『狂乱のエリス』だ。



「さぁてと。あんたたち?死んでもらおうかな?」


「簡単に殺せるかな?」



 ルシアは既に隣で、超大型のオリジナル神術を構築している。

 そして僕はその隠蔽を見破られないよう、敵の意識を逸らす。



「殺せるよ。だって、あなたたち弱いもの!!」


「なっ!?」



 突然、天井が壊れた。直後、上空を埋め尽くす神術の発動陣が目に飛び込んでくる。軽く見積もっても100万はある。

 発動難易度が極めて高い神術を、同時にこれだけ展開できる事実は......彼女がどれだけの魔道の高みにいるのかを現している。



「死んじゃって!クズゴミ妹と一緒にね!!」


「一体どうやって、こんな量の神術を操作できるって言うんだ......」



 もちろん時間稼ぎではあるが......半分は僕自身の好奇心で尋ねている。

 事実、これだけの神術を同時に展開できれば、戦術の幅は広がる。



「死ぬだろうし、最後に教えてあげる!才能だよ♡  術なら全部見ただけで全部できちゃうんだ!」


「それは……凄いな。つまり神法は無理って事か。」


「それがどーしたバァカ!さよーなら♡」



 すると、上空いっぱいに展開された破壊の神術が、僕たち二人のいる一点に集中砲火される。

 その光景は遠くから眺めれば壮観だろうが、目の前にある僕らにとっては不可避の絶望に違いない。



「言い忘れてたけど、僕たちも才能があるんだ.......」


「は?」


「君以上の才能がね。」


「テメェ何言って……」



 当然今の会話は、ルシアのオリジナル神術が発動するまでの時間稼ぎだ。

 彼女のオリジナル神術構築はギリギリだったが、なんとか間に合った......ふぅ一安心。



「ルシア。よろしく。」


「グラディス発動。反神術フィールド。」



 覇道王様から話を聞いた時点で、彼女たちに対する対策は既に立てている。

 創造グラディスでも即席で作れるオリジナルの法術には限度がある。しかし、時間をかけて構築すれば話は別だ。


 ルシアの法術創造グラディスは、神術や魔法と同じ効果を創造する固有能力であって、魔力で発動する神術そのものではない。

 つまり光子エーテルを使う僕らにとって、このフィールドでこちらに影響するのはない。



「わ、私の神術が!?消えた!?」


「お姉ちゃんダサ。噛ませ犬以下じゃーん!」



 チャンスだ。完全に意表を突いている。今最優先に殺すべきは『狂乱のエリス』の方だ。

『虐殺のファリス』も神術以外の技を使ってくる可能性はあるが、現時点でより脅威なのは目の前の少女だ。

 躊躇う必要はない。思考誘導や洗脳、幻覚の類は、戦いにおいて時に最悪の要素になり得る。


 ――僕は迷わずエリスを切り付けた。



「あ……え?」


「クソ!浅い!」



 狂乱のエリスを切りつけたが、咄嗟にのシールドで防がれた。

 それにより急所を分断することまではできなかったが、致命傷は与えた。

 しばらく彼女は意識を取り戻さないだろう。


 その瞬間、上から強力なが降り注ぐ。



「ムカつくな。私を無視して!クズゴミの方が脅威と見なしたのがホントにイラつく!!」


「ハハ。だってもう君雑魚じゃん?」


「ふざけんな!!!!」



 勝利条件は全て揃った。

 僕はこのラウンドの勝利を確信した......









☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 魔法創造グラティスは、時間をかければかけるほど強力な術を生み出すことができます!

 もちろん根源共鳴状態が前提にはなりますが......基本的に万能です。


 そしてお気付きかと思いますが、封じるのは神術なので魔法は使えます。


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は

 【応援】や【レビュー】をしてくれると超嬉しいです!!


 更新は明日の『『20時過ぎ』』です!




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