第49話 神界外惑星ルーモスペス
49話ー① 見慣れた風景の知らない場所
「ルシア、無事?怪我はない?」
「ぅぅ、私は平気……ここは……」
どうやらどこかに強制転移させられたようだ。
「……嘘だ。ありえない……」
「ど、どうしたの?」
信じられないが、目の前の光景が現実だということは否定できない。
僕の目の前には、毎日見ている見慣れた風景が広がっている。
こんな場所にあるはずがないものが、そこに存在しているのだ。
「あの山脈、見覚えがあるだろう?」
「そんなんあるわけ……え?もしかして……」
「あぁ、間違いない。あれは僕らの住む、第11惑星ルーモスペスのガルバン鉱脈だよ。」
「はい!?」
周囲を探知してみても、12の主神惑星は存在しない。ここには11惑星だけがぽつんと浮かんでいる。
ガルバン山脈は『灯光結晶』と呼ばれる魔石が採掘される鉱脈で、魔道ランタンや他の魔力源に使われている。
僕たちの住む惑星は、こうした鉱脈を中心にした豊かな資源で成り立っている。ちなみに特殊な光のお陰で土が枯れないため、産業も盛んだ。
「でも、どうして……地形は間違いなく第11惑星なのに、周りの座標や風景が違いすぎる……」
「……並行世界。たぶん僕たちの世界とは世界軸が違う。ここは多分......これは初代全神王が神界を作らなかった世界線なんだ。」
「そんなことって、ありえるの!?神界では何度もパラレルワールドの観測を試みたけど、発見されたことなんて一度もなかったじゃない!」
「もし発見されていたとして、それが公表されると思う?こんな滅亡した状態なら尚更だよ。」
目の前の文明もすでに太古の昔に滅びているようで、至るところが荒れ果てていた。
しかし、先ほどの世界とは滅び方が違う。こちらは血痕や魔物の痕跡が至るところに残されている。
また、技術水準も先ほどの世界とは異なる。ここは機械文明ではあったが、超高度な科学技術には至っていなかったようだ。
それに、こちらの文明はさらに風化が激しい。つまり、先ほどの文明よりも遥か昔に滅亡したことになる。
「……何が何だか、僕にもさっぱりだ。」
「調べよ?」
「そうだね、立ち止まって考えても仕方ない。動いてみよう。」
僕たちは周囲を調べるために歩き始めた。
「ルーク、どうしてこの世界軸の初代様は神界を作れなかったのかしら……」
「……違うよ、ルシア。作れなかったんじゃない。初代様は作らなかったんだ。」
「ど、どういうこと?」
これまでに得た情報やキーワードを繋ぎ合わせ、僕は1つの推論にたどり着いた。
ヴァラルの拠点が見つからなかった理由、時代のズレ、そして文明の違い。
理外存在、箱庭の創造主やリナス機構の特性。そして、管理者に関する断片的な情報。
まずここは、箱庭と呼ばれる世界ではない。そして、箱庭でないならば当然、それを守護する管理者も存在しない。
「おそらく、初代全神王はすべての世界軸に存在しているわけじゃないんだ。初代も箱庭の創造主も、世界をまたいで1人しかいないんだよ。」
「それじゃ、この世界は……」
「この世界には、理外存在や上位存在がいない。彼らはすべての世界軸を通して1つだけなんだと思う。」
「つまり……これは、初代や2代目、私たちの世界でいた『凄い人』がいなかった世界軸ってこと……?」
「そう。だから、この世界の文明は滅んだんだ。ヴァラルに対抗できる『怪物達』がいなかったんだよ。」
僕は自分の言葉が重く響くのを感じた。この世界では、ヴァラルに抗うことができなかったのだ。
もし僕たちの世界でも、初代がいなければ……管理者たちがいなければ……この荒廃した結末を迎えていたのだ。
そう考えると、胸の中に冷たい恐怖が広がる。
目の前の光景はただの荒廃した世界ではなく、僕たちの未来の可能性そのものだ。
「こんな、こんな結末……この世界軸の全文明が……滅びてしまったの?」
「そうだと思う。この世界軸では、これが終焉なんだよ。」
「もしかして……他のすべての世界軸も滅びてしまったんじゃ……」
「流石にそれは無いと思うよ?並行世界がどうやって生まれ、どう分岐しているかはわからないけど.......100や1000じゃ利かないくらいあるだろうし……」
ルシアを安心させる為にそう言ったが、可能性としてはなくはない話だ。
しかしこれ以上考えると、根源共有で伝わってしまう為、思考を止める。
「でも待って、ヴァラルが世界軸を移動する手段を持っているなら……」
「だからこそ見つけられなかったんだよ。数多ある世界軸を移動できるヴァラルの捜索なんて、ほぼ不可能に近い。」
「じゃーここも、さっきの文明も......」
「うん。奴に何の意図があるか分からないけど.......移動した先の世界を全て滅ぼしたんだよ。ありえないほど凄惨で残虐な手段を用いてね......」
「そ......そんな酷いことを?」
世界軸の影響も干渉も受けない、『超常の存在』は単一であり唯一なのだ。
だからこそ僕は予想する。並行世界を意図的に創造している存在がいる、と......
するとルシアが覚えた声で、問いかけてくる。
「ル、ルーク……何か聞こえる……」
「!?」
その瞬間、全身に緊張が走った。
遠くの方から聞こえてくる楽しげな音楽......
......荒廃した世界に淡い明かりが灯っている。
「ルシア、行こう……」
「……うん。」
この先は......進んでも引いても地獄だろう。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
転移してきたのは......別世界軸の11惑星?
そこで見たものは.......凄惨な滅亡を迎えた機械文明だった?
そして聞こえてくる不気味な音の正体とは?
もし面白い、続きが気になる!と思った方は
【応援】や【レビュー】をしてくれると超嬉しいです!!
更新は明日の『『21時過ぎ』』です!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます