48話ー⑦ 理外存在







 その瞬間、背筋に悪寒が走る。初めに感じたのは恐怖ではなく、不気味さだった。

 力の差があるという次元ではない。理解を超えた何かが、そこに立っているという印象だ。



「#&$%......有音言語か。聞こえるか、矮小な虫よ。」


「……誰だ。」


「は!その言語、オリジナルの天上神界から来たのか。僥倖、僥倖。」



 その存在の強大さは、勝ち負けの問題ではない。物理法則すらも超越している。

 アウルフィリア様も尋常ならざる気配を感じたが、それを超える程の圧倒的な力を感じる。



「アウルフィリア様に何をした!!」



 時間を稼ぐしかない。

 アウルフィリア様がまだ生きていると信じて……



「空間ごと潰れてもらった。防御も回避も無意味だ。あの金髪の者がいた空間そのものを押し潰した。貴様らが無傷な訳は後ろの死体に聞いてみるがいい。」


「な……何だよ、そのデタラメな力……」


「そんな……私たちのせいで......」



 空間に干渉する術自体は天上神界にも存在する。

 しかし神術だろうと何だろうと全ての攻撃手段に対してレジストで抵抗できるのが、世界の法則だ。


 しかし、この存在はその法則を書き換えたと言った。

 防御も瞬間移動も無意味だ。空間の法則が変われば、どんな手段も無駄になる。


 レジストで抵抗自体は可能なのかもしれない……

 しれないが、アウルフィリア様が抗えないレベルの力ならもはやレジストなど作用しないに等しい。



「貴様らはヴァラルに連れてこいと言われている。あんな奴の命を聞くのは癪だが、奴は箱庭に侵入する依り代の音がある。大人しく付いてこい。」


「ウグッ」



 息が詰まるほどの威圧感。逆らえば何が起きるかは容易に想像がつく。

 ルシアはトラウマを思い出し、隣でパニックに陥っている。



 ――ポンッ



「案ずるな。」



 アウルフィリア様が、何事もなかったかのように後ろから姿を現した。

 そしてルシアの頭に手を置いて、その震えを止めた。



「貴様......無傷だと?」


「あの程度の児戯で怪我などせぬ。2人にまで危害を及ぼすのは不快だがな。」



 アウルフィリア様のその言葉は決して虚勢ではなかった。塵一つついていない、完璧な姿だ。

 見えていなかったが、彼女が守ってくれたおかげで僕たちは無傷でいられたようだ。



「……貴様、頂上神の娘か。話が違うではないか、ヴァラルめ。」


「貴様は理外存在だな?久しく見ていなかった。」



 アウルフィリア様でも勝てないのではないか?

 直感的にそう感じてしまうほど目の前の相手は圧倒的だ。


 しかしそんなこちらの直観とは裏腹に、アウルフィリア様は冷静に問いかける。



「引け。友人にも理外の者はいる。今なら命までは取らん。」


「……勝てるつもりか?」


「貴様は理外存在の中では下の下だ。貴様では私には勝てん。引け。」


「その口、開けなくしてやろうではないか。舐めるな、理の内の矮小な存在が!!」



 そう言うと男からは到底信じられないほどの魔力が放出された。

 それは感覚的に言えばアファルティア様の100倍。本能で分からされる。


 ザラームよりも強いと……


 この相手はこちらの策略や戦術を、無に帰すほどの力を持っている……

 恐ろしい事に相手はまだ遊び程度の力も出していない。



「警告はしたぞ? 行け、私はこいつを片付けて後を追う!!身を潜めつつこの場所の調査を続けよ。」


「はい!!」



 ルシアはまだ軽快に動けるほどに回復していない。

 僕はルシアを抱き抱えて輸送エレベーターまで転移魔法で移動する。


 しかし、エレベーターの床に足をつけた瞬間、巨大な魔法陣が浮かび上がった。



「な!!」


「ルーク?これ、何?」


「しまった……転移陣だ。僕が読み違えた!?クソ!ルシア捕まって!!」


「う、うん!」



 当然、エレベーターに何らかの罠が仕掛けられていることは予想していた。

 しかし、ここまでの流れを全て読んでいる敵であると仮定すれば、対策が容易な転移系の罠を連続で仕掛けるとは考えにくい。

 だからこそ、僕はその可能性を軽視してしまった。


 もしかすると理外の者クラスの何者かが複数体存在し、こちらの命を狙っているかもしれない。

 そう思い、高速脱出と防御に全力を注いだが、それが仇となった。


 万全の状態であれば、違った判断ができたかもしれない。

 だが、刹那の判断時間と根源共有の負担が、僕の思考能力を鈍らせていた。


 さらに、ルシアを抱えていたことで、回避のタイミングも遅れてしまった……運が悪かったのかもしれない。

 いや、むしろここまで全てが計算されていた罠だったと考えるのが妥当だ。



「ただの悪党じゃない……何万年後の状況まで予測しきる、稀代の策略家……一本取られたな。」



 僕たちは、そのまま見知らぬ場所へと飛ばされた。







 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 飛ばされたルークとルシア......

 その先は二人が良く知るあそこだった?


 ついにアウルフィリアと分断され絶体絶命に!?


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は

 【応援】や【レビュー】をしてくれると超嬉しいです!!


 更新は明日の『『20時過ぎ』』です!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る