48話ー➃ 『ルシア・フェリウス』






 少しずつ巨大な建造物が近づいてくる。

 これまでは詳細が掴めなかったが、目の前に広がるその全貌は圧倒的だった。



「こ……これは……」


「おそらく恒星間を低コストで移動するための宇宙エレベーターだろう。ワープ技術においては、我々天上神界の方が進んでいるらしい。神界は観光以外の目的で、こんな輸送手段を使うことはまずない。」


「そうですね……この文明が転移技術を開発できていれば、こんな滅び方をしなかったかもしれませんし……」


「そうだな。文明の進歩は一様ではない。どの技術が発展し、どれが滅びへの道を開くかは誰にも予測できぬものだ。」



 文明の進化は偏りがちだ。破壊兵器の進化に重きを置いた文明もあれば、生命の神秘を探求する文明もある。

 だが、どれほど技術が進んでも、それがすべての問題を解決するとは限らない。



「さて、ここを調べるぞ。私はコンピューターは詳しくない。この機械の調査はお前に任せる。私は周囲を探索する。目は離さんが、決して油断するなよ。」


「はい。」



 目の前には古びたパネルがある。僕は慎重にそのシステムを調査し始めた。


 壊れ方や内部構造が分かれば施設の目的や、どうして文明が滅びたかの手掛かりが得られるかもしれない。

 ルシアを魔法で作ったクッションに横たえ、僕は機械と向き合った。



「不可解な破損だな……回線が切断されたような痕跡がある……やっぱりこういうのはルシアがいないと詳しくは分からないか……」



 調査を続けると、多くの故障は劣化によるものだと分かった。

 しかしいくつかの箇所には、大きな衝撃や人為的な破壊の痕跡があった。



「これは直していいものか……罠って可能性もある。そもそもこれだけ年数が経っているのに、直せる箇所があるのも怪しいなぁ。」



 僕は不安を抱きつつも、このままでは進展がないため、修理に取り掛かることにした。

 少なくとも一部のシステムのエネルギー回路が分かれば、何か手掛かりが得られるかもしれない。


 探知魔法を使い、破損箇所と風化具合を調べながら、修理可能な部分を修復した。



「どうやらすべてが未知の金属ってわけじゃないな。見慣れた素材もある。原子配列も分かるしこれなら一部なら修繕できるな。」



 しばらく作業を進めると、予想を超える結果が返ってきた。



「マ……マジか……」



 なんと、システムの一部が完全に復旧してしまったのだ。

 しかも、そのコンピューターに映し出された開発情報には、驚愕の名前が記載されていた。





【開発者名:ルシア・フェリウス】




「は?」



 フェリウス......結婚をする前のルシアのファミリーネーム。

 結婚後、ルシアは僕の苗字を名乗りたがって改名したが.......


 これは紛れもなく彼女の苗字......そもそもシステムの組み方にも見覚えがあった。

 だからこそ、ここまで簡単にシステムを復旧できたのだが......



「本当に……ルシアが開発したシステム? いやそんなはずがない……流石に時代が違いすぎる……」



 まさか、名前が偶然一致しているだけなのか?

 先代の光が同じ名前?いやこれまでの情報から推察するに、可能性は極めて低い......


 そう考えていた矢先、後ろからアウルフィリア様の声が聞こえた。



「何か発見したか?」


「……システムの一部が復旧しました。」


「なに? 何のシステムだ?」


「エレベーターと、情報アクセスのシステムです。ただし、途中で破損している可能性がありますが……」



 実際には、途中で壊れている箇所もあるかもだが、少なくとも上層に向かうエレベーターのエネルギー回路は復活している。

 アダマンタイトが使われていなければ、ここまで修復することはできなかったかもしれない。


 とはいえ、神術で一時的にアダマンタイトを模しただけだ。

 魔力の特性上そこまで長くは持たない。


 何より物質構築系の魔法は魔力消費がバカでかいので、この状況ではもう使いたくはない。



「アウルフィリア様……上層へ向かいますか?」


「……もとより飛んでいくつもりだったが......エレベーターが動くなら、何か手掛かりがあるかもしれん。あえて乗るのも悪くない。」


「分かりました。今からシステムを起動します!」



 パスワードも操作方法も分からないため、システムを起動するには時間がかかる。

 きっとルシアが起きていれば秒で終わらせてくれたのだろうが、こっちはそこまで天才ではない。



「ただし、異変を感じたら私が側面の壁を破壊する。そこから即座に脱出する準備をしておけ。」


「OKです。」



 あぁ、どうしてこの時の僕は......

 ルシアが起きるまで待たなかったのだろうか。








 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 システムを作ったのはまさかのルシア?

 謎が謎を呼ぶ衝撃の事態に、流石のルークも一旦思考中止?


 次回、衛星間軌道まで到達するエレベーターをあがります!


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 更新は明日の『『20時過ぎ』』です!


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