48話ー⑤ 忠義を貫く『最強の騎士』
大きな搬送エレベーターがゆっくりと上昇していく。本来は物資を運ぶためのものだろう。
巨大で無骨な円盤の上に僕たち3人が立っている様子は、どこか場違いで不格好に見える。
「お前は……いや、お前たちは頭がいいな。」
「え?」
「限られた情報からヴァラルにたどり着いた。特にルーク、お前は別格だ。あと数億年もすれば、十神柱を軽々と凌駕するだろう。お前なら、あの方の大願を叶えられるかもしれん。」
「いえ……僕は運が良かっただけです。情報をくれた『何か』や、アファルティア様がいなければ、僕は今でも何も知らないまま......全てを諦めていたでしょう。」
......アファルティア様がいなければ、僕はあの星と共に喰われていた。今頃は巨大な星龍の腹の中だろう。
あの時、僕は一度折れてしまったのだ。高みの遠さに絶望し、圧倒されてしまった。
世界最強を目指していた昔の自分は、もっとギラギラしていたのを思い出す。
いつからだろう……実力を隠し、保身に走るようになったのは……
いつからだろう……必要最低限を守れればいいと思い、燃え盛るような野心を失ってしまったのは……
今も野心は残っている。ルシアが背中を押してくれるおかげだ。
だが、昔のように底知れぬ欲望に突き動かされてはいない。
......そして、その変化の理由を自分でも思い出せない。
「あの人の大願というのは……」
「……ヴァラルの完全撃滅だ。封印ではなく、完全な消滅。そして、この箱庭にいるすべての存在が、自身の力で次の次元へ進化することだ。」
箱庭――またその言葉が出てきた。
話の流れから察するに庭とは名ばかりで、1つの世界を指しているようだ。
だが、箱庭が具体的に何を意味するのか、まだ分からない。
「あの人とは……一体誰ですか?」
「……この箱庭世界の創造主にして、2代目全神王の妃。ヴァラル最大の宿敵であり、世界の集大成......最終到達存在リリィ。」
「最終……到達存在? 世界の創造主……?」
「すべての存在は、彼女を生み出すための過程に過ぎない。お前も、他の誰もが試作品だ。概念存在や理外存在、管理者さえもが彼女を生むための試作段階に過ぎない。」
またしても、とんでもない存在の話が出てきた。
雷華様が「自分の弱さを呪って生きている」と言っていた言葉が、今ではさらに重く感じられる。
確かに雷華様は僕よりも強いが、この話を聞けば彼女が弱さを感じるのも無理はない。
「彼女は私の憧れだ。志も、神としての在り方も、この髪型も、全て彼女から教わった。私の姉であり、師であり、憧れであり……そして君主だった。今でこそ一国の王である私だが、元々私は彼女の騎士だったんだ。どこに行くにも彼女に離れんと食らいついた。」
「騎士……アウルフィリア様が……」
「彼女が去るとき、私は神界に残り、守るよう命じられた。だから、私は永遠にこの神界を守り続ける。他の十神柱が去ったとしても私は去らない。母上と主君の愛したこの神界を。」
「アウルフィリア様……皆、あなたに感謝しています。その方とも会えたら、ぜひお礼をお伝えください。」
アウルフィリア様は騎士だった――その事実に驚きを隠せなかった。
騎士神という異名を持つのは、彼女が騎士の代表という意味ではなかったんだ。
最強の騎士......きっとそんな意味が込められていいるのだ。
しかしアウルフィリア様は少し寂しそうな顔をしながら僕に返答をした。
「主君とはもうしばらく会っていない。主君の居場所は、2代目と母上しか知らない。だから私は、再びお姿を見られるその日まで......神界を守り続ける。」
「早くお会いできることを、心から願っています。」
「……そうだな。励みになる。」
黄金神アウルフィリア――その奥深い一面に触れた気がした。
彼女はどこまでいっても指導者ではなく、忠実な騎士なのだ。
神界武力の頂点に立つ存在という漠然としたイメージが、次第に具体的で実在する人物像へと変わっていく。
おかげで以前よりも行動パターンや思考のパターンを正確に予測する事ができるだろう。
そう考えている間に、エレベーターは止まった。結局脱線はしなかった。
「心を強く持て......何を見ても圧倒されるな。」
「はい……」
ゆっくりと開くその扉からは......
僅かな明かりも感じられなかった.......
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
明かされる箱庭の主の正体?その正体は最終到達存在にして二代目の妃?
騎士として君主に忠誠を果たす、アウルフィリアの本質が明かされる。
もし面白い、続きが気になる!と思った方は
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更新は明日の『『20時過ぎ』』です!
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