48話ー➂ 原因不明の衰弱





 ルシアは限界がきたのか、その場で崩れ落ちた。

 息はあるものの、彼女の身体を調べても異常は検出されない。


 にもかかわらず、彼女は苦しそうに息を切らしていた。僕たちは原因不明の不調に戸惑いを隠せなかった。



「何か原因がありそうだな。片割れの感覚で何か分かるか?」


「分かりません……体には異常がないようですし、精神的な問題でもないようです。」


「なるほど……原因不明か。一先ずルーク、お前が彼女を背負って、可能なら片割れの能力で回復を試みてみろ。ただし、根源共鳴はまだ使うな。」


「かしこまりました。ルシアを背負って、後に続きますので、気にせず調査を進めてください。」



 僕はルシアを背負い、根源共有を開始する。

 負担にはなるが、一か八かで僕の正常な状態に彼女を引き寄せるしかない。


 逆に僕が彼女の不調に引き込まれる可能性もあるが、それならば原因が掴めるかもしれない。



「ぐっ……結構キツイな……」


「ぅぅ……」


「その若さで根源共有を前準備もなく行えるとは、才能というものは恐ろしいものだな。」



 ルシアの感情や身体の感覚が鮮明に伝わってくる。

 以前よりも深く感覚を共有できているのは、実力が上がりルシアとの繋がりが強化されたからだろうか。



「どうだ?癒せそうか?」


「……はい、ゆっくりですが回復に向かっています。時間はかかりそうですが……」



 運が良かった.......もし回復の見込みさえなければ、これ以上の調査は不可能だっただろう。



「アウルフィリア様、一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「なんだ?」


「なぜ、僕たちをここに連れてきたのですか?」


「……建前を言えば、未来ある若者に機会と経験を与えたかったからだ。」



 アウルフィリア様は遠くを見つめながら答える。

 その眼差しは遥か遠くを見据えているかのようで、僕たちとは違う次元の景色を見ているようだった。



「本音を言えばな、直感だ。」


「ちょ……直感!?」


「そうだ。ただし、これは母から受け継いだ世界で最も信頼に足る直感だ。その直感が、此度の調査に今代の光を連れて行けと告げたのだ。」


「アウルフィリア様……その“今代の光”とは……」



 僕が聞き返そうとした瞬間、地面が激しく揺れ始めた。

 地震とは異なる、ゆっくりとした震源の移動を感じさせる揺れだった。



「やはりスターワームか……ルーク、身を隠すぞ。」


「はい!」



 徐々に揺れは大きくなり、地中で何かが這い回っていることが感じ取れる。

 4代目から渡された隠蔽神装を使って隠れているため、気づかれる様子はない。



「アウルフィリア様……これは……」


「来るぞ。」



 その瞬間、揺れが......止まった。そして、地面から直径10kmほどの巨大な何かが現れた。

 それはまるでミキサーのように、周囲の建物や地表を削り取っていく。


 至る所に文明の残骸や金属片がくい込んでいるその姿は、恐ろしいほど異様だった。



「あ……あのミミズは……」


「スターワーム......文明や星そのものを喰らい尽くす怪物だ。だが、あれはまだ幼虫だ。歳を重ねた個体は、原初熾星王さえも喰らうとされている。」



 現時点で原初熾星王よりも弱いのであれば、僕らでも倒せる。

 その程度なら、アウルフィリア様が隠れたのはなぜだろう。ルシアに配慮してくれているのだろうか?



「幼虫のスターワームは群生生物だ。1匹を刺激すれば、仲間が集まってくる。そうなれば調査対象がすべて破壊されてしまう。」


「な……あんなに巨大なのに群生するんですか!?」


「この星に卵が流れ着いたのだろうな......人為的でないとすれば、不運なことだ。母体が近くにいなければいいが.......もし母体に見つかれば、この星も丸ごと呑み込まれるだろう。」


「それは祈るしかありませんね……ルシアの回復にもまだ時間がかかりそうですし。」



 母体がいる可能性は低いだろう。この文明には所々に戦闘の痕跡が残っている。

 にもかかわらず、この星が無傷で残っている。母体が襲来していれば星は消滅していただろう。



「見えるか?あそこにある最も大きな建物に向かう。なぜか、あそこだけスターワームの被害を受けていない。さらに言えば細かな戦闘痕さえついておらずほぼ無傷だ。」



 み、見えない.......塔があるの見えるがそこまで詳細な状態は視認できない。

 いったいどんな視力してるんだ.......



「分かりました!すぐに移動します!」


「うむ、行くぞ」




 僕はルシアを背負ったまま、アウルフィリア様の指示に従い移動を開始した。

 すでに思えば既に、壮大な敵の術中に嵌っていたのかもしれない......







 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 何とか調査を続行することとなったルーク達。

 しかしその決断は果たして最適か?


 文明を食らいつくすスターワームはどこから来たのか!


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 更新は明日の『『20時過ぎ』』です!

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