47話ー➃ 奇跡を創る【リナス機構】





 何の変哲もないない道が......壁が......組み変わっていく。

 僕たちはただアウルフィリア様の後ろを歩いていた。


 だが、不思議なことに道が自ら組み替わり、僕らを別の場所へと導いていた。

 曲がり角や坂道を歩く感覚もなく、ただ平地を歩くように感じていたが、景色だけが変わっていく。


 目の前に広がる真都の景色は圧巻だった。

 空中に浮かぶ水晶、地上では数百年に一度しか目にできない魔道具が大安売りされている。


 さらに、ファンタジーと科学が完璧に融合したかのような巨大な天空球体が中央にそびえ立っていた。


 これこそが真の天界文明なのだ。

 これまでの認識が揺らぐほどの感銘を受けながら、無言で歩き続けていた僕らだったが、アウルフィリア様が突然立ち止まった。



「ここだ。」


「え?」


「へ?」



 気づいたら、僕たちは先ほど都市に入った時に目に飛び込んできた。空中に静止する巨大建造物の前に立っていた。

 まただ......また気が付いたら目的地についていた。これは何か仕掛けがありそうだ。


 しかしそんな思考は目の前の建造物に対する感情に押し流された。



「嘘だろ……」


「ルーク……こんなのって……」



 目の前にそびえるその構造物は、想像を遥かに超える大きさだった。

 しかも、建物には継ぎ目が見当たらず、まるで一つの有機体のように存在している。


 何より驚くのは、この建物が自ら魔力や呪力といった様々なエネルギーを放出している点だ。

 それは、まるで.......巨大な心臓のようだった。



「驚いたか?これが天上神界の心臓、リナス機構だ。このリナス機構こそ、2代目が退位した後も天上神界を存続させた理由そのものだ。」


「それは一体……」



 これだ......これこそ神秘だ!未知だ!僕の知識欲と好奇心は掻き立てられた。

 未知なる力、これこそ求めてやまない、まだ見ぬ何かだ。


 今すぐにでも、この建造物について調べたい衝動を必死に抑えていた。



「リナス機構は全種エネルギーを周囲に放出し、そのエネルギーが届く範囲の運命をねじ曲げる。ヴァラルに対する最強の防衛手段。これはな……『装置』だ」


「人為的に……奇跡を起こす?」



 初代や2代目の存在が外部に漏れない理由について......

 このリナス機構が関わっているとすれば、全てが説明できる!


 外部に記憶が流出しないだけでなく、偶然の要素すらも排除できるのだ。

 ......まさに「奇跡」



「しかし、リナス機構とて万能ではない。エネルギーを放出しているという性質上、発生源から離れるほど運命を歪ませる力は弱まる。奇跡とはいえ.......1を100にできても、0を100にすることはできない。」


「このエネルギーの範囲は、天上神界の12惑星全土に及ぶのですか?」


「……今はそうだ。そして、このリナス機構の管理権を持つのが......『全神王』だ。」


「!?」



 全神王がただの役職ではなく、天上神界全体に影響を与えるというのは考えていたが......

 まさかこれほどの権限を持っていたとは……。


 十神柱が武力で全神王を上回っていても、リナス機構の管理権を考慮すれば全神王が頂点である理由は明白だ。



「しかし、リナス機構の管理は容易ではない。私も詳しくは分からないが4代目は先代と比べ、まだリナス機構を完全に掌握できていない。全神王となった今も、彼女はそのことを悔やんでいる。不甲斐ない自分をな。」



 リナス機構は運命や確率さえも支配できる本物のチートだ。

 そんなチートがあるのに神界を思うように発展させられない自分に、強い劣等感を抱いているに違いない。



「そんな......3代目と比べても勝るとも劣らぬ名君だと思うのですが......」


「そうね......福利厚生やインフラ整備なんかは3代目の頃と比較しても大幅に改善しているわ。3代目の時でさえ、大して不満が漏れなかったであろう天界を更に発展させたのは事実なのに......」



 ルシアも言葉を途切らせた。確かに、4代目全神王は国を繁栄させた名君だ。

 しかし、支持率は55%3代目の88%には遠く及ばない。


 数字からも分かる通りほとんどの国民が、3代目全神王の方が優れた王だという認識を持つ事は否定できない。

 あくまでイメージの話だ......しかしそれが大衆の総意となり、事実として扱われるのは世の常だ。



「今回はそのリナス機構に備わる転移機能を使う。これにより、本来は突破しなければならない数々の障壁を一気に飛び越えることができる。術の発動という根本の過程すら必要ない。」


「しかし......摂理を改変できるのはエネルギーが届く範囲内なのですよね?それなりに近いとはいえ、数光年あるわけですし......そこまでエネルギーの範囲は及ぶのですか?」



 アウルフィリア様は答えた。



「無論。今のままでは及ばぬ。しかしそれは球状にエネルギーを放射している時の話。エネルギーを一点に集中して放射すれば可能だ。ちょうど4代目がその操作を始めるころだろう。」



 その瞬間、淡い光が一方向に向かって放たれた。

 確かに今まで球状に放出されていたエネルギーは薄くなった......ような気がする。



「始まったな。あの光の中に、一箇所だけ黒い部分があるのが見えるか?」


「見えます!」



 その黒い部分は、まるで空間に穴が開いたかのような純黒のモヤだった。



「覚悟を決めて、私に着いて来い。あそこに飛び込むぞ!」


「「はい!!」」



 決意。お互いの決意が伝わってくる。

 ルシアの覚悟の重さが分かる。僕もその覚悟に答えなくてはならない。



 これは僕が初めた僕の物語......僕の抱く夢なのだから。

 そして固い決意と覚悟を互いに視線で確認し、穴に向かって飛び込んだ......


 思えばこれが、始まりだったのかもしれない......








 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 人為的に奇跡を生み出す天上神界の心臓『リナス機構』

 いったい二代目は何の目的で、どのようにして作ったのか?


 次回!ついに遺跡探索始まります!!


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は

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 更新は明日の『『20時過ぎ』』です!


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