44話ー➃ ヴァラルの意味
最後の仕上げが残っている......
母の口と舌、そして表情を操り......
最後の瞬間に子に注ぐ『愛』さえ歪めてしまえばいい。
「はは......うえ?」
「憎い......死ね!!シジルム!!穢れた息子よ!!ずっと憎んでいた......」
実の息子に望まぬ恨み言を吐き、自らの手で刺殺させる。
これこそ母の苦痛......愛あるが故の絶望。
あとは少しずつ、ジワジワと大切に......
これまで子に注いだ愛が全て無意味になるほど......凄惨に。
慰める友も、愛する人も全て奪う......決して心を逃しはしない。
44分の恨み言と数え切れぬほどの刺刃により。
ついに私の分体は事切れた......
「がは......」
「サ......ぁ。」
この瞬間......私の心は晴れ渡った。
何という幸福感......
何という愛おしさ......
何という安らぎ......
これまで地獄にも等しかった、私の世界は瞬時に鮮やかとなり、まるで楽園のような悪意が全身を駆け巡った。
あぁ......これこそが真の幸福感。
生れ落ちて初めて......私は喜びを得た。
その後、父を殺し、各々に適した方法で村人を虐殺。
手引きした盗賊も拷問し鏖殺。
母はまだ殺さない。
生かしておいた方が不幸であろう。
「......世は上手く創造されている。」
一つ心残りなことは.......
この世の全員に、最も不幸な手段をとる事が不可能な事実だ。
誰かの最上の不幸を達成するには、他の誰かの不幸を妥協せざる負えないのだ。
故に.......最大の不幸を与える対象は、慎重に選ばなくてはならない。
他は不幸は全体の不幸を成就する為の、部品だと考えればいい。
目的は個人の不幸ではなく、世界の全てを不幸で埋め尽くす事なのだ。
今後、一人に時間をかけられない場合も訪れるだろう。
「神よ。いるのならば止めてみよ。その時は等しく絶望させるまで......
もし神が顕現したその時は......神さえ絶望させる。
この世全てに問を投げよう。悪とは、断ずるべきものなのかと。
「私の悪意に際限などありはしない。」
そうして私は神聖大教皇として、惑星文明を混沌へと導いた。
積み上げた屍の山、向けられる憎悪、囁くように聞こえてくる絶望の叫び。
その全てが傷つき粉々に砕けだ私の心を、健全な状態へと癒していく。
「名を......この世の悪意である我が名を。」
意味など要らない。
理由さえも必要ない。
何故なら私の名が『意味』となるからだ。
悪と聞いた瞬間......誰もがその言葉を思い浮かべる。
その言葉の他を、思い浮かべる事さえ叶わなくなる。
そうなるまで世界を私の悪意で染め壊す。
私以外の全ては被害者となろう。
この世に加害者は私一人で事足りる。
......ヴァラル......
「意味など不要。これより生まれる......」
その瞬間、私は世界の敵......絶対純悪ヴァラルとなった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
絶対純悪ヴァラルの誕生。
世界はここから混沌へと変わり出していきます。
次回45話からはルーク達の物語に戻ります。
もし面白い、続きが気になる!と思った方は
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更新は明日の『『21時過ぎ』』です!
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