43話ー➅ 暖かな思い出と『奇跡の果実』









「エリー......もう朝だ。小学校に遅れるぞ?」



 もう朝......何だか長くて辛い夢を見ていた気がする。



「お兄ちゃんおはよー。抱っこしてー。」



 私はいつも通りお兄ちゃんに甘える。

 面白くて、頭がよくて、優しくて、周囲からも一目置かれている。そしてイケメン。



「もう大きいのに?母さんが下でしびれを切らしてるぞ?」


「うえー。私怒られちゃう?ねむねむさんなだけなのにぃ......」



 そうだ。あれを手に入れる前まで分からなかった。

 この時に感じた異質な違和感の正体を......


 あの時、愚かにも私が無視してしまった違和感......



「よいしょっと。」


「あれ?おにぃ?」



 それはとても小さな違和感。

 しかし明確に昨日とは違う相違点......


 昨日までは私をおぶるので精一杯だったお兄ちゃんは.......

 私を片手で、赤ん坊のように持ち上げた。


 汗の一つかかずに涼しい顔で......



「そうなんだよー。秘密裏に筋トレしてたんだ!ママには内緒だぞ?」


「じゃー何で......震えてるの?凄く嬉しそうな悲しそうな......寝不足みたいなクマもあるし......」


「あー......嬉しそうな顔は良く分からんけど、昨日遅くまで筋トレして寝不足なんだよ。震えは普通に筋肉痛。マジで痛い!」


「ふーん?じゃー私も一緒に筋トレやる!」



 今更言い訳にしかならないけど……

 本当は不審な事に気づいてたんだよお兄ちゃん……本当に……



「いや……別にそれはいいや。」


「えー!何で!じゃー代わりにシャボン玉ぁ!」


「いやそれこそ何でだよ!?」


「早くー!」



 どうして......どうして気づかなかったのだろう私は......

 本当に好きなら、もっとよく見てあげるべきだった。本当に愛しているのなら......


 お兄ちゃんはずっと一人で戦っていたのに......

 どうして......助けてあげられなかったんだろう。まだあの頃なら間に合ったのに......







 ――場面は移り変わる――




「お兄ーちゃん!何してるのー?ママとパパももう寝たよ?筋トレ?」


「筋トレはもう終わった。それよりもこれ!エリーにあげようと思って取ってきたんだ。」



 お兄ちゃんが見せてきたのは、この世のものとは思えないほど美しい果実だった。

 ゴルフボール大の多さのそれは、流水のように模様を変え、で生きているかのようだ......


 水色を基調に光り輝いていて、おとぎ話からそのまま出てきたようだった。



「綺麗.......ナニコレ?私の為に取ってきてくれたの?」


「エリーに食べてほしくてね。めっちゃ美味しいんだよ!3つあったんだけど、旨すぎて2つは食べちゃったよ。」



 脈打ってこそいなかったが......まるで生きているような果実だ。

 きっと持ってきた相手が、お兄ちゃんじゃなければ口にしなかっただろう。



「食べる!ありがとうお兄ちゃん!」


「遠慮なく食べな。僕が食べたくならないうちにさ。キャッチして。」


「はーい。......え?」



 兄が腕を振り上げた瞬間......服の隙間から夥しい量の傷跡が見えた。

 それは決して昨日はなかった傷......


 ......にも関わらず、それは昨日今日に付いた傷跡ではない。



「お兄ちゃん......その傷なに!どこでそんな怪我を......」


「ん?え、何これ怖っ!?......何だろう?エリーこそ覚えある?」



 上手な嘘だ......この時の私はコロッと騙されてしまった。

 思えばその日は長袖しか着ていなかった......ママも朝10分ほど忽然と姿を消したと言っていた。。


 不審な点は山ほどあったのに......

 どうして......どうして無視してしまったの?


 私は本当にお兄ちゃんの事好きだったの?



「うーん......ないから心配。朝も変だったし......お兄ちゃん何かあったの?」


「いや......朝のはマジの筋肉痛。てか早く食べて!段々食べたくなるんだよ......生殺しになりそう。」



 私は果実を受け取ったことはすかっかり忘れていた。

 後から思い返せば、お兄ちゃんは私に果実を食べさせる事が目的だった。



「おけ。」




 私は......何の疑問も持たずに果実を食べた。

 ゴルフボール大の果実を丸のみした......



「愛してるよ、エリー......」


「え?いきなりどうし......」



 その瞬間.......想像を絶するほどの激痛が体中を襲った。

 まるで全身の細胞の一つ一つが、余すところなく虫に食い破られるような激痛。



「が......あが......」


「ごめんね。持ってこれたのは奇跡。生き残ってくれ......毒物耐性で......」


「おにぃ......ちゃ......」


「さよなら......エリー......」


「イャァァァァァ!」



 地獄の蓋が開いたような悲鳴を聞き、すぐに両親が駆けつけてきた。

 病院へも救急搬送されたが、医療では何一つ処置をすることができない。


 私は自身の力でゆっくりと回復する他なかった。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 ついに明かされるエリーとルークの過去。

 ルークはこの話の階層は全て忘却しています。


 そして『奇跡の果実』が何と過去?に来たルークの手に?

 それ何?という人は第11話へどうぞ~


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は

 【♡応援】や【星レビュー】をしてくれると超嬉しいです!!


 更新は明日の『『21時過ぎ』』です!


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