43話ー➃ ショタと魔物と急展開?








「不味いわ!エリーちゃんとショタくんがいる方向よ!」


「四の五の言ってられない!すぐに向かおう!結界を破るほどの魔獣なら、市民に甚大な被害が出る!!」



 急がなければ……魔獣のいる地点までは約500メートルもある。

 周囲の市民を衝撃波で巻き込むわけにもいかない。


 第7惑星は強力な結界の影響で、使える術も限られているため、思うように力を発揮できない。



「くそ……最速でも3秒はかかる。」


「話してる時間が無駄よ!早く!」



 ルシアの言葉に急かされながら、僕たちは即座に行動に移った。

 目的地に向けて筒状の簡易結界を張り、僕たちが飛び出すと同時に衝撃波を内部に閉じ込める。


 結界を維持しつつ、そのバリアを上空へと吹き飛ばすことで、衝撃波が市街地に広がらないようにするのだ。


 神術などの強力な術は結界で封じられているため、移動速度には限界がある。

 しかも、この都市に暮らしているのは神族だけではない。


 超音速で移動すれば、衝撃波で市民に甚大な被害が及ぶ危険性がある。

 トニックブームを伴う移動は、極めて慎重でなければならなかった。



「ルーク!!あそこよ!!」


「不味い!間に合わない!」



 ショタくんは、まだ魔獣の位置を正確に把握していないようだ。

 しかも、熊型魔獣の攻撃が彼に向かって一直線に迫っている。


 エリーも少し離れた場所で焦った顔をしているが、どう見ても時間が足りない。

 間に合わない……!


 だが次の瞬間、僕たちは信じられない光景を目にした。



「痛ったぃ!?何?」


「は!?」



 熊型魔獣の攻撃が、確かにショタくんに直撃した。

 しかし、彼には傷ひとつない......攻撃の衝撃で吹き飛ばされるどころか、魔獣の爪が折れていた。



「うわぁ。何ぃ!?熊?リーちゃんのペットだったりする?」


「ん、違う。」



 エリーが否定した時......熊型魔獣は既ににバラバラに切り刻まれていた。

 空からは肉片がボトボトと落ちてくる中、エリーはほっとした顔を見せる。



「ハルト……怪我ない?大丈夫?」


「ないよ?僕、ちょー硬いから。」


「良かった……」


「……こういうの、男の僕がやるんじゃ……」



 彼は身体強化や防御術を使った形跡がまったくない。

 間違いなく、彼自身の肉体的な耐久力が異常なのだ。


 しかし、魔物が倒されたなら、次にやるべきことは決まっている。



「よぉし!もう一回隠れよう。」


「そうね、エリーちゃんの意識が彼に向いているうちに……」



 僕たちは即座に隠蔽魔法を展開し、急いで元の位置に戻った。

 これなら、万が一誰かに感知されたとしても、僕たちだとバレることはないはずだ。



「ハル……硬い?そんな、レベル?」


「ちょっとした特殊体質なんだ。圧力を受けると、その圧力分だけ肉体が硬化するんだー!だから普段はプニプニしてるよ!ほら。」


「気持ちぃ、プニプニ。ゼリー?」


「そこまで柔らかくはないよ。寒天くらいかなー?」



 ……何だこの会話。

 噛み合っているようで、何かがズレている気がする。



「この死体。どーする?」


「確かにー!どうしようかな。僕が買い取ろうかな?」


「何使うの?」


「農場持っててね。そこで小型の豚さんをたくさん飼ってるんだ!だから加工して餌にしようかなって!」


「豚さん?農場?儲かる?」



 豚に魔物の肉を食べさせるだって?

 それ自体は理論的には可能だが、どうにも引っかかる。


 資金があるなら、わざわざ餌代をケチる理由が薄い。



「ルシア、調べて。」


「もう調べてるわ。至って普通の農場よ。魔物の肉を食べさせてるって、公式サイトにも書いてある……これ、多分ただの興味本位ね?」



 本当かよ……魔物の肉は、神族に悪影響を与えるほど汚染されていることが多い。

 調理しても食べられるのは、種族によって違うが全体の七割は無理なはずだ。



「豚で儲けてるっていうより、魔物肉を無害化する加工技術で稼いでるんだー!すごい?特許も取ったんだよ!」


「……お金の匂い、する。ブランド。立ち上げられる。」


「問題は味だね……食べられなくはないけど、美味しくないから人には受けない。しかも新参者だから、農場主も買ってくれないんだよね……僕、神界に来たのは比較的最近だし……」



 最近、神界に来た?それにしては立ち居振る舞いが馴染みすぎている。

 デートに備えて調べたとしても、彼の行動にはどこか違和感がある。



「ん。私コネ沢山、大口取引先取れる。一緒やろ。」


「ほんとぉ!じゃー僕の方からも軍用兵器企業の最新情報と購入権利をいくつか渡すね!ビジネスに施しは厳禁だから!」


「良き、分かってる。」


「短期間で稼いでてね……かなり疎まれてるけど大丈夫?」


「ノー問題。金で黙らす。」



 彼ら、かなりのビジネスパートナーとしては良さそうだが、恋愛面ではどうだろうか?

 これだけ噛み合っていても、必ずしも上手くいくとは限らないのが現実だ。



「ルシア?どう思う?もし付き合ったとして。続くかな?」


「それは分からない。趣味が合うから、同じような価値観だから上手くいくとは限らないもの……私達は仲良しだけど、片割れっていう強力なアドバンテージがあった……周りでも破局は山ほど見てきたし。」


「まぁそうだね。僕たち仲良しで良かったね。」


「ぐっ……しれっと突くわね。」







 ――その後も僕たちは、二人の観察を続けた。



「エリーがあんなメスの顔を……」


「下品な言い方ね。もう少し言葉を選びなさい。女の顔とかにしなさい?」


「はい……」



 最近、完全にルシアの尻に敷かれているきがする。

 彼女の指摘が的確すぎて、反論する余地がどこにもないのだ。



「だいぶ周りも暗くなってきたわね?このままホテルにゴールかしら?」


「うん?君の言い方も大概じゃないか?」


「あなたのような勘のいい......」


「そのネタもういいって。擦りすぎ。」



 周りも暗くなってきた。

 2人は遥か上空に浮遊する『リリィ空中料亭・アイボリー』に入ってゆく。


 料亭とは名ばかりで様々な施設が併設されており、庭園が本当に美しい。


 かなり高い高度に浮いているので下には大陸の夜景が広がり、上は満点の星空を見上げる事ができる。

 正に遥かなる上空に浮遊する楽園だ。



「当然、僕たちは入れないけどね。」


「当たり前よ。完全予約制だし、値段も……」


「でも庭園があるから、監視用のハエを大量に使えるよ。」


「確かに、これならより細かく監視ができるわね。」



 我ながら随分と無駄な事に能力を使っている。

 収納魔術の中で物体の向きを固定したり、ハエを高度数十キロまで飛べるよう強化したり......


 しかしそんな与太話は、二人のただならぬ雰囲気で全て消し飛んだ。



「リーちゃん……聞いて欲しい。」


「何?どーしたの?」



 あ、これ、あれじゃね?

『告白』じゃね?



 ……僕は全てを察した。








 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 ついに来るか?

 果たしてエリーの恋の行方は如何に??


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は

 【♡応援】や【星レビュー】をしてくれると超嬉しいです!!


 更新は明日の『『21時過ぎ』』です!



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