37話ー④ 『完全神の破壊剣』






「ルシア。刀は引いて斬るものらしいよ。」


「は?」



 僕はルシアから距離を取った。



「な、何のつもりよ!!わざと負ける気!?」


「遠距離なら僕に勝てると思ってる?」



 ちなみに!神界には様々な刀剣類が存在する。

 刀はマイナーでこそ無いが、使用者が多いとは言えない。


 ただ伝説の上で、剣の祖と呼ばれた原初の神が振るったとされる世界で最も古い剣類なのだ。



「いきなり何よ?」


「君の負けだよ。」


「な!?」



 ルシアから更に距離を取った。


 それはもう全力で距離を取った。


 当然ルシアの攻撃は僕の事を追尾してくる。


 そして……ついに惑星一つを一望できるほどの高度まで到達したのだ。

 距離を取れば弾幕の密度は自ずと少なくなる。いくら追尾しているとはいえ、近づかせない為にはかなりの範囲をカバーしなくてはいけない。


 それならもう弾幕の相殺はしない。

 防御を捨て、一点をぶち抜いてルシアを仕留める。



「まさか……こんなぶっつけ本番の戦術を試すほど追い詰められるなんて……流石ルシアだ。」


「な、何をするつもり……」


「さぁ〜?」



 やる事はシンプル……ではないクソ複雑だ。


 第777階梯神術の仮想理論を、光子エーテルで再現する。

 光子エーテルは変幻自在……魔力だって再現できるはずだ。


 そして魔力では理論上不可能な、第777階梯の神術を仮想法術として再現する。

 根源共鳴をしていなければ発動するだけで反動で恐らく死に至る。


 そもそも魔力では第357階梯が限界点なのだ。

 速度威力共に使える技の中でも、現時点で最強レベル。それを切り札を発動した状態で起動するのだ。その威力は計り知れない。



「第777階梯 神術 完全神の破壊剣」



 すると丁度いいタイミングでルシアから、通信神術がきた。



「何が来ても対応して見せるわ!!来なさい!!」



 そう呟いた瞬間……



 ……僕は既にルシアの目前に到達していた……



 探知するよりも早く。

 全ての防御を貫いて1本の剣が飛来する。



「え……?」



 そう声を漏らした時、僕の剣はもうルシアの心臓に到達した。


 そして彼女は吐血しながら倒れ込んだ。



「オリジナルの探知神術と防御神術に頼りすぎたのが敗因だよ。弾幕で自身の視界を遮ってなければ対応できたかもね。」



 ルシアからの返事はもうなかった。

 すると観戦していたガリブがこちらに飛んでくる。



「トンデもねぇ技だな。空間ごと破壊しちまってんじゃねぇか。」


「……この結界どうなってんだろうな、ガチで。」



 するとエリーとベレスも駆けつけてきた。



「おねぇ……平気?」


「ルシアっち中々起きないっぽくね?。これマジ平気??」



 傷はとうに治っている。実はルシアは寝てはいない。根源共鳴している状態だから分かる。


 ただ悔しくて放心状態なのだ。

 そしてそれを隠す為に狸寝入りしている。


 僕は根源共有を使ってルシアに問いかけた。



【流石にそろそろ起きろや。皆が心配してるぞ。】


【……イヤよ。分かってたら避けれたし!】


【知らんわ。狸寝入りだってバラすよ?】


【ぐぅ……起きるわ。】



 するとルシアはゆっくりと起き上がってきた。



「負けた。再生に時間が掛かってしまったわ。」


「お!ルシアっち起きた。ドンマイドンマイ次頑張るっしょ!」



 いや仮想結界内だから、再生速度とか関係ないだろ……



「おねぇ、狸寝入り?」


「ビクッ!そ、そんな訳ないでしょう?」


「フーン……」



 エリーは懐疑的な目で見つめている。

 ルシアは冷や汗をかきながら、そっぽを向いた。



「おいルーク!この結界、神界全域を再現してんだろ?だったらここで色々冒険できんじゃんか!」


「いや。再現してるって言ってもね。地形くらいなもので、細かな装飾は再現されてないんだよ?個人情報もダダ漏れになるだろ?」



 とはいえ……悪用しようと思えば、いくらでも悪用が出来る。

 悪用しないと信頼されて、託されているわけだ。



「じゃールークの浮島に行ってみようぜ!家はねぇだろうけど、どんくらい似てるか確認しようぜ!!」


「それは面白そうだね。丁度休憩しようと思ってたしみんなで行ってみるか!」



 そうして僕らは、浮島がある第11惑星に向かった。

 しかし……待ち受けていたの衝撃の結果だった……

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