35話ー③ 遥かなる頂き





「あ。おかえり〜。2054年の地球どうだった?」


「     」


「面白いもの見つけたの?珍しーね?」




 驚愕、その一言に尽きる。


 太陽は全ての色を孕んだ球体に変化した。


 そこからは花びらのようにも、翼のようにも見える何かが次々と広がる。


 そして天空は余すことなく、全能の色彩で覆い尽くされる。


 強大だとか、感じた事もないとか、そんな生易しいレベルの力じゃない。


 ……想像しようと試みた事さえない規模の力の波動……


 神話や架空のどんな存在と比較しても別格。



「迷い込んじゃったんだってー!」


「   」


「だよね!凄い運命力だよね〜。」



 どうやらミリティアさんは意思の疎通が取れているらしい。

 私は堪らずその何かに質問してしまった。



「あなたが……この世界の全ての頂きにおらす方なのですか?」


「えーとね。半分肯定してるよ。」



 意思疎通が……取れる?

 一個としての自我が本当にあるなんて……



「矛盾している。そう思うか?自分が創った摂理に自身が縛られる道理はない。だってさ。」


「今……心を?読んだ?」



 読心術自体は魔法にも魔術にも神術にもある。それ自体は珍しくないものだ。

 しかし私は意識体を保護する神術を常時発動している。



「この世の全て。未来から過去に至るまで自分の定めたとおりに進み、そして自分の予測の外を出ることはない。才能も、運命も因果さえ頂きの前では等しく無力なのだ。って言ってるよ?」


「……世界は予定調和でしかないと?」


「    」


「それでは哀れだから。故に私は選択肢を用意してるんだって。道は1つにせずに、他の選択を取れるようにしてるみたいだよ。」


「私達は決められた選択肢をただ選んで進んでいるだけという事でしょうか?その意思さえも自由がないと?」



 もし本当であれば世界は1本映画だ。

 世界中の生き物の葛藤や苦悩も制作者の意図した通りに流れ、そして……終わる。



「あーもう!面倒臭いよ!自分で話してよぉ!」


 そう言うと空から声が聞こえてくる。明らかに私たちの知らない言葉……

 いやもはや言語でさえない、音であるかも分からない。


 しかし……恐ろしいことに内容は分かる。



『望みは1つ。予測を超える何か。1秒でも良い。その積み重ねが世界を我が範疇の外へと逸脱させる。』


「ですが……全てが分かり、思い通りになる事はあたなとってそれは退屈なのでしょうか?そもそもその様な感情を……」



 これもあくまで私たちの尺度の考え方なのだろう。しかし私は好奇心でつい聞いてしまった。

 しかし返ってきた返答は予想とは大きく異なるものだった。



『無論つまらぬ。故に全能をも超越せし、自身の力を自身で制限している。』


「力を……制限している?自身の存在さえも自由自在?」



 物語に出てくる神が自身の遊戯として、世界を影から操るなどという話はよく聞く。


 しかし彼は違う。力を抑えて見えない、できないことを楽しんでいるのだ。

 全ての過程や行動原理が矛盾している。


 叶えられぬ事がないほどの超常的な力。

 その力により自身を弱体化さえ実現させてしまう。


 真の意味での全能……全能を全能で無くすことさえも可能なのだ。



『事実。範疇を超えた存在はある。ここにいる生命の祖。友たる灰の神。そして……『アレ』。君達にも期待をしている。』


「……私達が……期待されている?それはどういう事ですか?」


 そもそも何故私はここに迷い込んだろう。

 話していた内容からして、簡単に迷い込める場所では無いはず。


 前もそうだ。向こうから干渉してきた。

 十神柱や4代目全神王にさえ、何一つ介入してこないのに……



「あはた達はね。光を背負って生まれたんだよ?導びく光になる因果と摂理!間を繋ぐ数字も持ってるの!」



 間を繋ぐ数字?その人が持つ何かの数値という事なのだろうか?

 それとも関連の深い数字?とにかく分からない。



「彼以外は好き嫌いで選べるものじゃないんだよー?私は3。あなた達は11。それぞれ運命を大きく手繰り寄せたり、力を発揮する間があるの。数が小さいほど凄いとかはないけど、凄い人達は20未満が多いよ!だから2人とも期待大だね!」


「数字?一体何を言って……」



 数字と言われても、関連する数字が運命に関わるなど認識できたことさえない。

 話についていけないが、世界の根幹に関わるような内容なのだろうか?しかしそうでない可能性も十分にある。



『この干渉は君から忘却する。案ずるな生命の祖との記憶は残る。』


「待ってください!!この記憶は後々必要になる気がします!どうか残して貰えないでしょうか!!」



 忘れさせる意味も分からない。



「ほう?面白い。」


「え……今のは神界の言葉?」


『が拒否する。ではな。』



 すると再び世界は暗闇に包まれた。

 あれだけ美しかった平原も、包み込むように香る暖かな草木の匂いもない……


 無機質な暗黒。



「あっ……」


「バイバイ。またね?」





 気がつくと寝室のベットの上で目が覚めていた。


「あれ?ママ?ぅぅ……何か大切な事を忘れているような……にしても気持ち悪いわ。」


 酔い潰れた拍子に専用の解毒魔法を解いてしまっていたようで、体が本当に重い。



「お。ルシアおはよう。よく寝れた?」



 私は……


 私は隣にいるルークの顔を見て、深い安堵に包まれた。



 いつか……彼の顔を見られなくなる日が来るのだろうか?







 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 35話ー③をここまで読んでくださりありがとうございます!


 ついに降臨する全ての頂き、初代全神王?

 そして頂の意図?とその存在の片鱗が明らかとなる??


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は【♡応援】や【星レビュー】をしてくれると.....超嬉しいです!!


 何かあればお気軽にコメントを!


 更新は明日の『『22時過ぎ』』です!

 明日も更新できるか分かりません可能な限り更新します!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る