33話ー④ 本物の現実
「私......あなたの隣にいる資格なんてないかもしれない。」
ルシアは罪悪感を貼り付けたような顔で、僕にそう告げた。
苦しそうな悲しそうな……そして悔しそうな何とも言えない表情だ。
「私……あの時のルークの姿見て後悔したの。分かってるつもりで何も理解できてなかった……どこか物語みたいな都合のいい死を想像してたの……現実の死はあんなに惨めで汚くて、凄惨で……」
「まぁ......あれは割と酷い方だと思うよ?二人で同じ場所にいれただけでも、運はいいかもだけどね。」
実際、拷問されて死ぬケースばかりではない。
いきなりあんな凄惨な終わりをイメージしろ!というのも無理な話だ。
「ルークは……あんなのも想定した上で覚悟してたんでしょ……あなたはパニックにもならずひたすら冷静に足掻いてた。折れずに諦めずに。」
「ぶっちゃけもっと凄惨なのも想像してたよ お!このくらいで済んだ?ラッキー!って少し思ってた事は否定しない。でもさ、冷静でいるべきなのかな?あの場面って」
「え?」
ルシアは予想と違う答えが帰ってきたようで驚いている。
「それこそ物語じゃない?追い詰められた時に冷静でいた方がいいなんて。君がパニクって剣をぶっ刺したから生き残れたんだよ?」
「でも……」
「冷静に判断した事で死ぬ事もあるし、パニクって生き残る事もよくあるからね?どっちが良いなんて話は無意味なんだよ。」
「じゃーどうしたらいいの?私は!もうあんな事いや!過去に戻っても同じ選択を選べない!あなたの本物の覚悟に……泥を塗ったのよ!!こんな私薄っぺらい私にルークの隣に立つ資格なんて……あるのかしら?」
ルシアが声を荒らげるのは珍しい事だった。こっちが少し気圧される程に、この3ヶ月ルシアは悩んだのだろう。
「後悔して何が悪い?君は薄っぺらくなんてないよ。覚悟に本物も偽物もないよ。その時が来て揺らぐか揺らがないか。今回揺らいだって事は、それだけ僕の事を大切にしている証拠なんだよ。」
「それでも私は……後悔してしまう弱い自分を許せない……」
「後悔する事はあるよ。必要なのは後悔する選択を選ぶ決意だよ。」
「後悔する選択を取る……決意?」
僕だってきっとこの先後悔する事はある。
でも生きてる限り後悔さえ背負って前に進まなきゃいけない。
それが生命体に与えられた唯一の選択肢。
立ち止まって死ぬか。進んで生きるか。
死んだように生きるか。活き活きと死ぬか。
「だからルシア。恐怖を恐れないで。自分に素直になるんだよ。その、気持ちは後ろめるべきものじゃない。」
「ルーク……私……」
僕はルシアを引き寄せて抱きしめた。
その体はガタガタと恐怖に震えている。
「怖かったの……ルークがグチャグチャにされるのを見て……嫌だったの苦しかったの……耐えられなかったの!もう嫌だよぉ自分がああなるのもルークがああされるのも怖いの……もっと、もっと強いと思ってたのに震えが止まらないの!」
「震えは止めなくていいんだよ。怖がっていいんだよ。それが無いと何も始まらないから。絶対その気持ちは邪険にしちゃダメだよ。」
強烈な感情を克服するのは極めて難しい。
もちろん出来るに越したことはないが、ほとんどの場合向き合って苦悩しながら進むしかない。
たまに克服したり、全て背負って進み続ける、イカれた強さのメンタルを持った猛者もいたりするが……
「ルーク……どうやったらあなたみたいに強くなれるの?あなたみたいに決意できるの?恐怖に打ち勝てるの?」
「ルシアは僕にはなれないよ。」
「え?」
「なる必要もないし、なるべきでもない。恐怖との向き合い方。決意の仕方は人それぞれ。だからルシアだけの方法を探そうね?」
「うぅ……ぅぅぅぅ」
ルシアは数時間泣き続けた。
単に今回の件が怖いというだけではないだろう。
僕が3ヶ月意識が戻らなかったことに対する不安や、自責の念のようなもので感情が爆発してしまったのだ。
僕は不安定なルシアを寝かしつけ自分も寝ることにしたのだった。
でも……あとから考えればこれはまだ始まりに過ぎなかった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
33話ー④(最終)をここまで読んでくださりありがとうございます!
ルシアの絶望とルークの精神力。
そして土壇場での2人の本質が出た第33話。
最初に任務を受けるか迷っていたのは、ルークだったにも関わらず、いざ蓋を開けみれば想定が甘かったのはルシアの方でした。
もし面白い、続きが気になる!と思った方は【♡応援】や【星レビュー】をしてくれると.....超嬉しいです!!
何かあればお気軽にコメントを!
今後と2人の関係と更なる大きな運命とは??
更新は明日の『『22時過ぎ』』です!
明日も更新できるか分かりません可能な限り更新します!
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