第34話 覇道神との宴





 ルークの怪我の状態を考慮してか、珍しくギルドでの報告ではなくなった。

 ただそれだけではなく、なんと十神柱が訪ねてくるというのだ。


 そして突然の事だった為、私は大急ぎで準備をしていた。

 しかし予定よりも早くバシレウス様は到着しまったのだ。



「おぉう!人はおるかー!!」


「ようこそお越しくださいました。ご連絡下されば領地の入口までお迎えに行ったのですが……」


「良い良い。此度の訪問、公のものでは無い。故に気楽にするがよい。それよりも貴様ら!酒はいける口か?」


「えぇ……人並み以上には……」



 ちなみに言えば私はお酒に弱い。だからお酒専用の解毒魔法を開発している。

 こういった場面で旦那に損をさせない為だ。



「それでは酒の宴を始めるとするか!!」


「ではルークをお呼びします。」


「車椅子でよいぞ?気遣いで悪化を招くのは愚者の行いぞ。良いな?」


「はい……」





 ーーーーーー応接室ーーーーーー



 そして応接用の広間に僕ら3人が集まった。


 シャンデリアの掛かった大きな部屋には、ルシアが一人で用意した豪勢な食事が並んでいる。

 実の所どうやってもてなしたらいいのか、ルシアは困ったのだろう。



「ははは!!!粋な計らいではないか!!気に入った!!」


「ありがとうございます……」



 覇道王は豪快に食事を食べてはいるが……その所作には気品と礼儀を感じる。

 豪快でかつ品性を感じる姿は、そのまま威厳として僕らの記憶の深くに焼き付いた。



「さぁて。与太話もなんだ。本題よ。あそこに現れた2柱の怪物の話だったな?。」


「「!?」」



 アファルティア様のように前置きを置かない超ストレートな話の掴みに、僕達は少し動揺した。しかしこれは確かに今最も知りたい情報だ。


 するとバシレウス様は威厳に満ちた声で語り始める。



「あやつらはヴァラル直属の戦闘集団、害厄王よ。」


「害厄王?」



 これまでも色々な情報を集めてきたと自負していたが……

『害厄王』 はここに来て初めて聞く単語。



「最もその呼称は余らが勝手につけたものであるが。あやつらは6人おる。」


「6人!?あんな化け物が!?」


「奴らは余とフィリア除く、十神柱はマトモに相対する事も叶わぬほどの強者よ。余も2人以上と同時に対すれば、その勝利は確実とは言えぬであろうて。」


「そんな……神界の最高戦力である十神柱が勝てないなんて……」


「ん?余は勝るぞ?エドルモ相手は分からぬがな。」



 僕同様ルシアも俯いている。

 それと同時に、ヴァラルについて伏せられている理由の一つも分かった。


 十神柱の内3人がヴァラルの配下にさえ勝てないのだ。

 もしそんな事が知られれば、天上神界は大きな混乱に陥るだろう。



「しかし……ザラームとかいう小僧は初めて見たわい。これまで『害厄王』とは何度も矛を相見えてきたが……あれはイカンな。秘めたる力を感じる。あれはエドルモに並ぶ強者になりうるぞ。」


「潜在能力......」



 今までの状況推察や話の内容から、バシレウス様はエドルモ以外の害厄王には問題なく勝てるのだろう。

 そしてどうやらエドルモとは因縁があるようだ。



「これより十神柱しか知りえぬ話。新たに加わった害厄王は分からぬが……奴ら詳細についてだ。 まず害厄王の長!エドルモは殺した敵の力を奪う。」


「殺した敵の能力を……奪う?」


「そんな……勝てるわけが……」



 アニメや漫画では、主人公が持つような力だ。

 更に言えばエドルモは生きた時間が桁違いだ。溜め込まれた能力の量もそれだけ多い。



「だが!エドルモは能力を使う事を好まぬ。生まれ持った自身の力のみで戦いに望むまんとする事が多い。その傲慢にして高潔たる矜恃に付け入る隙はある!」


「する事が多いって言葉、僕は聴き逃してませんからね……」


「ダハハハハハハ!細かな事を気にとめるでない!奪えぬ能力もある!固有の力の中には奪えぬ力も多くあるのよ。余の力やフィリアの小娘の力も奪えぬ。」



 能力を使わずして十神柱序列2位と張り合うほどの強さ。ヴァラルが来なくても害厄王だけで神界を滅ぼせそうな勢いだな……



「そして!もう1人の害厄王は倉本重蔵。変形する刀と膨大な魔力を扱う魔剣士の怪物よ。多彩な剣術に無尽蔵の魔力。更には害厄王としての身体能力がある。エドルモ同様、天道の者とは因縁の相手であるな。」


「それはどういう……」


「さぁて次だ次!!」



 師匠達にとって因縁?何か過去にあったのか?




 そしてその後もバシレウス様は話を続け、他の害厄王についても判明した。


『狂乱のエリス』

 自身と自身の所有権を持つもので触れた相手の、思考を狂わせる。

 相手に幻術や幻覚、錯覚や乱心を起こす事ができる。


『虐殺のファリス』

 エリスの双子の姉で桁違いの魔力量から繰り出される神術で、ひたすら敵を殲滅するかつて神童。姉妹仲は最悪。


『空席の6人目』

 6人目の害厄王は現在空席らしい。誰かを入れるつもりなのでは?とバシレウス様は言っていた。


 2人の姉妹はバシレウス様いわく愚か者の弱者との事だが……まぁありえないだろう。

 なお、上の二人はエドルモや倉本に比べれば実力は数十段劣るらしい。




「十神柱が持つ情報はざっとこのあたりよ。」


「ありがとうございます……」


「ありがとう……ございます。」



 そうしてその晩は酒を飲み続けた。ルシアは解毒魔法で頑張っていたが、途中でダウン。


 僕はそもそも毒物に対して異様な耐性にある為、最後まで酔い潰れずに飲む事ができた。

 神族の体を酔わせる毒物だ。他の星の生き物が飲んだら最早酒ではなく……激毒だろう。



「いやぁ!良い宴であった!!ルークと言ったか!中々に見どころがある若造ではないか!途中で潰れはしたが、その小娘も中々の飲みっぷりであった!!」


「お褒めに預かり光栄にございます。」



 ただの酒。されど酒なのだ。全神王を目指すならコネクションがいる。

 気に入られる為ならば、酒だろうが何だろうが僕は飲み干す。



「余は戻るぞ。余の国に来ればいつでも来客として歓迎しようぞ!見送りはよい。余は戦車で来た故な!!」


「かしこまりました。本日はわざわざ御足労頂きありがとうございました。」



 相変わらずルシアは酔い潰れている。失礼かもしれないが僕一人で見送りをするしかない。



「それでは再び集う時を楽しみにしておるぞ!!タァ!!」



 バシレウス様は炎と雷を纏い、轟音を立てながら僕の領地を後にした。

 公的なものでないはずなのに、隠れる気は全くない……



「さぁてと。片付けでもするか。まずルシアを寝室に運ばないとねぇ。」



 僕は大広間の長テーブルで潰れているルシアをお姫様抱っこで運んだ。車いすのままで......

 車いすで引きずった方が楽なのかもしれないが、こういうのはお姫様抱っこと相場が決まっているの。



「ルシア。部屋まで運ぶね。」


「…………」



 ここで甘えてくれたり、理性が吹き飛んで変な事をしてきたり……そんな事を期待したが……



「あー。ダメだこりゃ完全に意識がぶっ飛んでんな。……にしても深く沈みすぎじゃ。」



 お姫様抱っこはしているが、当然しがみつくこともない。腕はダランと下に垂れている。


 まるで死人を運んでいるようだ……

 体はかなり火照っており、顔は真っ赤だ。


 汗もかいていて、少し不審に感じる。



「……何だ?この感覚は。」


「…………」



 結局その後寝室で服を脱がせ体を吹き、着替えさせて寝かせる事になった。


 その後の片付けは体にたたるので、流石にやめる事にした。



「あー。もう使用人雇おうかな?アハハ……独り言乙……」



 その日窓から差し込んできた星々と月の光は、ただ空虚な僕を照らすだけだった。










 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 34話ー①(最終)をここまで読んでくださりありがとうございます!


 バシレウスの口から語られる『害厄王』

 ヴァラル直属の部下達が内部に入り込んでいるという異常事態を前に、天上神界の運命は?


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は【♡応援】や【星レビュー】をしてくれると.....超嬉しいです!!


 何かあればお気軽にコメントを!


 今後と2人の関係と更なる大きな運命とは??


 更新は明日の『『22時過ぎ』』です!

 明日も更新できるか分かりません可能な限り更新します!

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