32話ー➃ 現実は物語より奇怪なり
誰も......誰も助けにこない......
「ザラーム。何をしておる。」
現れたのは先程私達を見逃した異形の怪物......
「殺そうとしていただけだ。何かやり方に不満でも?」
「その方らは、珍が慈悲をやると決定した矮小たる者共だ。」
どういう事?何故……
「見逃せとでも言うのか!!!エドルモ!」
「見逃す?慈悲を与えたに過ぎぬ。それとも何か?王たる珍の決定に異を唱えると申すか?」
「王だと?貴様もヴァラル様の配下としてここにきたのだろうが!!最古参だからと調子に乗るなよ!俺はヴァラル様の右腕だぞ?」
「配下?珍はただ古い馴染みに頼まれただけに過ぎぬ。そこいらの傀儡と同列にするでない。」
何やら揉めているようだ。ただおかげで助かる可能性が少しだけ出てきた。
しかし......私はもうルークを背負って森を抜ける事さえ不可能な状態だ。
更に言えば万全の状態でのトップスピードで運ばなくては、ルークはもう事切れてしまう。
「まぁいい。どちらにせよこいつらは死ぬ。そこにまで文句を言うつもりか?」
「珍は慈悲と言った。珍の決定を知った上で殺すのなら看過しがたいが……珍の決定を知る前の行動により死ぬのであれば、その責を問うのはいささか哀れというもの。」
意味が分からない。同僚に許しを与える事によって、見逃した私達が死ぬのはいいってこと?
筋が通っていないとは言わない。なぜなら物事の筋道は、文明や種によって変化する曖昧なものだからだ。
私達からしたら荒唐無稽で全く筋が通っていない意見だとしても、こいつらにとってそうかどうかは別......。
だからといって納得できるものでもない。
このままではルークは死ぬ。ルークが死ねば私も死ぬ。
するとザラームという男が口を開いた。
「……こ、この力の波動は何だ!?森を消し飛ばしている!?何より……一直線でこちらに向かってくるぞ。」
「十神柱……奴も天に帰しておるとは。久々の対面となる道理か?覇道王。」
すると遠くから一直線に稲妻と獄炎が向かってくる。その膨大な力の波動は、間にある全てを薙ぎ払いこちらに向かってくるのだ。
「ヌァッハハハハハハハハハハハハ!!!!」
そしてそれは……稲妻と獄炎を纏い6輪の戦車に乗って現れた。
戦闘用そりの様な形状の乗り物を、小型のベビーモス8匹で引いている。
身長2mは超える大男。焦げ茶のマントに、荒々しい焦げ茶の髪、豪快な髭を携えていている。
鎧からむき出しになる腕は筋骨隆々、まさに豪傑な『漢』という風貌だ。
「余は覇道王!!十神柱序列2位ぃぃ!!バシレウスである!!頭を垂れよ!!」
「十神柱だと!?ノコノコと殺されに来たか!!」
するとバシレウス様は焦ることも無く、余裕の声で問いかける。
「ん?ヴァラルの部下か?ん~?見慣れん顔だな。新入りか?」
十神柱を罠に嵌めるための場所に、十神柱が来てしまった……
つくづく私たちの頑張りと死は何なのだろうか。
そして……
「おぉ。エドルモではないか!久しいなぁ!次は敵として相見えるとは思っておったが、こんな形になろうとはな!」
「覇道王よ。案ずるな。珍とその方の決着は相応しき舞台、相応しい時であるのが理というもの。王同士、今ここで相見える事はない。」
「ヌァハハハハそれでこそ王道よ。エドルモよぉ!貴様も真に王であるな!ではこの2人は貰ってゆくぞ?」
「好きにせよ。珍はその方らに慈悲を授けた。その方が勝手に救う分には珍も手は出さぬ。」
エドルモという異形の化け物は、本当によく分からない。
十神柱を殺しに来たと言いながら、バシレウス様とは相見えないと言っているのだ。
しかしザラームという男も同じ事を思ったようで。
「エドルモ!!貴様これはヴァラル様に対する裏切り行為だぞ!!最古参だからと言って何をしても許される訳ではない!!」
「珍がヴァラルの部下だと言わんばかりの言い分であるな?ならばヴァラルに言えが良い。ヴァラルの部下に座す意味がないと悟れぬ時点でザラームよ。お主はヴァラルが何たるかを分かっておらぬ。」
エドルモの話は分からない……置いておこう。
そもそもバシレウス様は来れないという話だったはず……何故この場に?
「とにかくこやつらは余が連れて帰るぞ!!異論はないな!!」
「行かせぬぞ。十神柱2位の実力がどれほどかは知らんが俺は認めん!!」
すると覇道王は大胆な笑みを浮かべた。
「ならば致し方あるまいて!」
そして気がつくと私達2人は6輪のチャリオットに乗せられていた。
「押し通る!!!!」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
32話ー➃をここまで読んでくださりありがとうございます!
種の違いは価値観や思考順路の違いになり得る。そしてエドルモの発言の意味とは?
十神柱を超える実力者ザラームを前に、果たしてバシレウスは?
もし面白い、続きが気になる!と思った方は【♡応援】や【星レビュー】をしてくれると.....超嬉しいです!!
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更新は明日の『『22時過ぎ』』です!
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