32話ー⑤ 光の消失





「ならば致し方あるまいて!押し通る!!」



 そして気がつくと私達2人は6輪のチャリオットに乗せられていた。



「貴様!いつの間に!?」


「さぁ行こうぞ我が臣牛達よ!!そこに立つ若造を砕壊せよ!!」



 先程よりも濃く、強く、そして鮮やかに6輪のチャリオットはザラームに向かって突進していった。



「貴様諸共叩き切ってやる!!闇の暗剣!!!」


「大した技であるなぁ!だがそれで止められるほど我が覇道は温くはないぞ!!」



 ザラームは剣で止めようとしているが……

 覇道王に剣が届かないどころか、前のベヒーモスにさえ触れる事ができていない。

 チャリオットはどんどんと速度をあげ、それを止めようとしているザラームの両足は地表を抉っている。



「な……なぜ切れぬ!!結界か?」


「フハハハハハハハ!!まだ若いな小僧!一騎打ちならば余に勝るかもしれぬが、世の術理たるものを測る眼力に欠ける!!」



 進んでいるチャリオットと先頭のベヒモスの間には衝撃はのような膜があり、それがザラームの剣戟を押しているのだ。


 結界術ではない。それが何なのかも私には分からなかった。



「さぁて小物よ!!我が覇道の路端に転がる小石となるが良い!!」


「貴様ァァァァ!!!」



 そう言うと戦車の前の衝撃波のようなものが更に強力な圧力を放つ。

 遂にザラームは、堪らず後方へと吹き飛ばされていった。


 前方ではなく後方にだ。



「若造!!戦の勝敗を決するものは、なにも個の武威だけとは限らぬぞ!!ゆめ忘れるでないわ!!ヌゥハハハハハハハハ!!!」



 あれだけ絶望的に感じたザラームが、まるで小物のように見えた。

 強さと人間的な魅力は比例しない。

 バシレウス様の心血に間近で触れ、改めてそう感じた。



「おい、そこの女。名乗りそして答えるがいい。そっちの肉男は、余が森を駆け抜けるまで持つか?」


「ルシアです。ルークは……分かりません……今にも事切れそうです……」



 ルークは今死んでもおかしくない。生きている事が不思議なほど衰弱している。

 辛うじて息を留めているのは、私が生きているからなのだろう……


 私も重症だがこのチャリオット?の中で、話す事ができる程度には回復させて貰った。



「女。何としても持たせよ。主らは片割れであろう?その肉はもはや並の回復は受け付けぬ。故にルシアよ。貴様自身を少しでも回復させよ。」


「分かりました……やってみます……」



 ルークは執拗に強力な回復阻害が施されていて、現在私が使える回復神術では回復は困難だ。

 回復、治癒を専門とする治癒士か回復法師の治療が必要となるだろう。


 それに比べて、私に掛けられた回復阻害はルークのものより数段緩い。微小ではあるが私ならば回復神術で回復が可能だろう。



「第153位階神術。エクストラキュアヒール。」


「余は回復術は得意でないが......まぁ無いよりはよかろう。余も直々に手伝ってやる。もうじき他の十神柱も駆けつける。」


「ありがとうございます……本当に……本当にありがとうございます……」


「全く他の小僧どもは。若人の為に己が命をかけられぬ指導者がどこにおる!黄金の小娘なら迷わず森に突っ込むであろうに。」



 少しずつではあるが自身の傷が癒えていくのを感じる。


 しかしそんな努力とは裏腹に、ルークの生命力は少しずつ弱くなっていく。

 今にも事切れそうな、か弱い生命力が更に弱くなっていくのだ。



「ルークお願い……もう少しだけ私と……」



 涙をこぼす余裕さえない。自身を回復させながらただ祈る事しかできない。



 チャリオットに揺られながら、自身の無力さと不甲斐なさを噛み締めた。




 そしてついに……ルークは事切れた……






 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 32話ー⑤(最終)をここまで読んでくださりありがとうございます!


 思いの外難なく2人を助けだすバシレウス。

 しかし、実はかなり危ない綱渡りだったり?

 そして遂にルークが事切れました。

 今後の展開は!?


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は【♡応援】や【星レビュー】をしてくれると.....超嬉しいです!!


 何かあればお気軽にコメントを!


 遂に33話スタート!何やら初っ端から不穏な空気が??

 更新は明日の『『22時過ぎ』』です!と言いたいのですが、明日は更新できるか分かりません……

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