32話ー➂ 世界の現実
「ル……ルーク?」
意識が戻った私が目にしたのは凄惨な光景だった。
そこら中に散らばる肉片と骨片。
私の隣に打ち付けられている肉塊は、紛れもない私の最愛の人なのだ。
「ルーク!!こんな……私が不甲斐ないせいで……」
私は恐怖も忘れて、彼をこうしたであろう元凶を睨みつけた。
「安心しろ殺してもない、意識もある。お前が犯される所を見せなくてはならないからな。最も、目はもう見えないがな?」
「酷い……なんて酷い事を……」
「後悔しているのか?ハッ!男の方と違い生温い覚悟だな。」
「ッ……」
覚悟していた。いや覚悟しているつもりだった......
ルークも私も、互いを失う事は想像していた。
しかし私が想像していたのはもっと......もっと綺麗な死だったのだ。
物語のような......最後の言葉を都合よく聞くことのできる死。納得できる死。
私は後悔してしまったのだ。変わり果てたルークの姿を見て。
悔やんでしまったのだ。ルークを後押しした自分を……
「お前は壊しがいも犯しがいもありそうだ。そっちの男は悲鳴1つあげなければ、砕けることもなく興が冷めていたところだ。」
「許さない……絶対に許さない。」
拷問をされている本人は後悔していないのだ。
つくづくルークと私との覚悟の違いを思い知らされる。
私は口では許さないと言っているが......
心はもう、ほとんどバラバラに砕け散ってしまっている。
「さぁ。まずその魔力の鎧を剥いでやろう。」
「屈しない……絶対に……」
「そういう女が1番屈服させがいがあるのだ。諦めろお前らは死ぬ。」
「いや.....こんなの......嫌!」
その時だった。
根源共鳴の感覚共有で、ルークから声が届いた。
「ナイス位置取りだルシア!そのまま膝をついて、絶望するふりだ。頭を下げて。」
私が膝を曲げた瞬間。
ルークの頭上に突如小さな針のようなもの輝いていた。
そしてそれは信じられない速さで、男を襲う。
「ぐぁっ!?き……貴様らぁ!!」
その瞬く光針は、男の肩元を貫通した。
本当は心臓の核を狙ったのだろうが、咄嗟に躱されたのだ。
攻撃の終了と共に、私達の根源共鳴は解けた。
つまりこれは、根源共鳴の全エネルギーを圧縮した「一点攻撃」だったのだ。
にも関わらず男を仕留めるまでに至らなかった。
更に言えば傷口が塞がり始めている。
再生阻害は敵の魔力密度が高すぎるため、効果が薄い。
私は咄嗟にこの間、購入した剣を抜いた。
「させない!」
はっきり言えばパニックだ。致命傷を与えられる訳じゃないだろう。
ルークがつけた傷口を塞がせてたまる!!
そんなよく分からない思考原理で、私は刃を突き立てたのだ。
「そんなもので傷がつく訳が……!?」
「うぁぁぁぁぁ!!」
「ぐぉぁぁぁぁ。バ、バカな!!!」
「さ……刺さった?」
傷が付くどころか......その剣は男の肩を難なく貫通した。
底力などではない、剣の圧倒的な性能だ。
手から伝わる、まるで紙を破るような軽い感触。
ここまでの剣であれば、ここから心臓部にある核まで斬れるかもしれない。
私の頭に消えていた【【ルークを助けられる】】という希望が再び浮かび上がってきた。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
「バカが......闇の波動」
しかし、その希望は叶わなかった。
一撃。たったの一撃......
私は飛ばされルークの隣に叩きつけられた。
後ろの木......硬すぎる。
恐らく敵が魔力で強度を上げている。ルークの拷問の為だけに......
ルークほどではないが......私も内蔵が外から見えている。
身体中の骨が粉々に砕け、筋肉が断裂しているのだ。物理的に力を入れる事ができない。
「もういい。犯さずに殺す。2人まとめて死ぬがいい。」
「……」
あぁ。これが現実……ルークは既に意識が失われている。
核が損傷した状態であんな攻撃を放ったのだ。
結局2人で力を捻り出しても差は埋まらなかった。
一矢報いただけで何になるというのだろう。
向こうがその気なら2人ともすぐに殺せた。
結局この世界は理不尽。
……誰の助けも来ない……
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
32話ー➂をここまで読んでくださりありがとうございます!
人の心の底は自分自身でも測りきれないものです。
2人の決意の違い。蓋を開けてしまえば、土壇場で冷静なのはルークだったようです。
もし面白い、続きが気になる!と思った方は【♡応援】や【星レビュー】をしてくれると.....超嬉しいです!!
何かあればお気軽にコメントを!
次回、2人の運命は?
更新は明日の『『22時過ぎ』』です!
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