27話ー➃ 運命の分岐点:方針転換
「あー。ルシアは気づかなかったのか。」
「え?どういうこと?」
「あの人の肉体。おかしいんだよ......」
「え?」
「筋肉繊維の構造と強度、骨強度から皮膚の性能、神経回路の構造や再生力、解毒力に至るまで......あらゆる肉体能力がもう鍛錬でどうこうなるレベルじゃない。」
僕らが無防備な彼女に全力で斬りかかっても、傷一つ負わせられないだろう。
アファルティア様も、元々の種族的な影響で肉体強度が高いが......
音羽様に関しては根本から違う。
生物的に次元の違う別の何かだ。
「あれはさ。多分生まれながらの異常個体だよ。構造そのものが僕らとかなり違う。普通に殴り合いして龍に勝つ人が、武術まで極めてるんだからね……」
「そうなるとそれに対抗できる先生も......何か隠し持っているのね。」
更にはあの部屋には......
毒拳の鍛錬をしている門下生や、冷気を使っている門下生もいた。
「しかも音羽様ってさ。隠してはいるけど、膨大な魔力を持ってる気配があるんだよ。武術と生まれ持った能力に加えて、魔法なんかで身体強化して、そこからさらに毒手や冷気なんかも使うんだったら……」
「なるほどね......想像もできないわ。」
やはり僕らはもっと強くなる必要がある。
時間制限ありの根源共鳴を抜きにした強さを、『十神柱レベル』まで引きあげたい。
以前はそのまで必要ないと思っていた。
それは十神柱が武力の世界最高峰なのでは無いか、と考えていたからだ。
だが初代、2代目全神王の事や、ヴァラルの事を知ってしまった以上、
そんな甘んじた事は言っていられない。
「ルシア......この前の話......」
「いいわよ?ゆっくりで。」
「これからはさ......隠すのをやめようと思う。慎重すぎる方針は転換しようと思う。」
「分かった。ちゃんと話してくれて助かるわ。いきなり変えられたら戸惑うもの......」
ここ最近でハッキリした。
僕らは......いやルシアを巻き込むのはやめよう。
僕は......慎重になって力を隠すほど強くない。
「馬鹿だったよ。力を偽ろうが、偽らなかろうが本物の強者にとっては無意味だ。
だから全力で強くなるしかない。」
「ならこれからの方針は決定ね。出し惜しみしない!」
ルシアは少し嬉しそうだ。
確かにこれまで......色々負担をかけてきた。
「あぁ。これからは全力だ。迫る危険よりも速く......強くなろう!」
「光の速度で駆け上げるわ。モタモタしてると置いてっちゃうから。」
「あ~そう?一か月後にギャン泣きしてる、ルシアの姿が浮かぶな~?」
「んなぁ!?負けないし!!」
そうして僕とルシアは、新しい目標と手段を話し合い......
一日を終えることとなった。
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