27話ー③ 神界最強の武技
そうして僕らは2人で音羽様に向き合った。
もちろん体術の訓練なので、素手でだ。
僕らは体術もかなりのレベルで身につけている。
剣術ほどではないが、それこそ最上位神にも引けを取らないほどに。
「ルシア。」
「分かったわ、ルーク。」
僕らは目配せで、お互いの意思を共有する。
そして僕は......
持てる限り全速力で、音羽様の食道あたりを中指一本拳で突いた。
「いきなり!?」
避けられる、または何らかの形で防がれると思っていたが......
なんと音羽様はそのまま受けたのだ。
だが壊れたのは......僕の指の方だった。
とても、首の硬さだとは思えない。
僕は顔色一つ変えずに二打目、三打目を打ち込んでいく。
「ルーク!!」
そのまま僕が突きを放ったのと同じタイミングで、ルシアが頭部に蹴りを放った。
しかし......
音羽様はルシアが蹴った方向に一回転した。
その蹴りをヒットさせたのに、当たっていない?不思議な感触から......
ルシアは重心を崩し、指1本であっさりの転がされてしまった。
「うふふ。お2人とも部位鍛錬をしているのですね。少し関心いたしました!
神族の強力な肉体を得ると、ほとんどの方がその性能に頼り、基礎的な鍛錬を疎かにしてしまうので!」
「......どうも。」
あっ何も言えん。
世界は広いなぁ......僕だって強いはずなのに.....
その後も僕とルシアは、音羽様に立ち向かっていった。
いつしか周りの門下生は、僕らと音羽様の高速の組手に夢中になっている。
打たれ、
揺らされ、
いなされ、
避けられ、
投げられ。
僕らが音羽様に拳を放ったのに、
逆にこちらが吹き飛ばされるなど、理解不能な事も多々あった。
そして......
パンッ。
音羽様が手を叩き組手は終了した。
「ありがとうございます。よく分かりました!お2人ともお疲れ様です!」
「ハァ、ハァ、ありがとう、ございます。」
「ゼェ、ゼェ、私も……ありがとうございます。」
僕らは着ていた道着が乱れに乱れている。
しかし音羽様の道着は、組手を始める前と何1つ変わらず綺麗だ。
「お2人とも打撃の技術はかなりのものだと思います。突きや蹴りは動きに大きな問題はありません。」
「ありがとうございます......」
「ですが……柔術、武術は打撃に比べてかなり未熟さを感じます。お二人の動きはどこか格闘技的です。その辺をこれから磨き上げていきましょう?」
「はい……」
差があるとは思っていたが......
体術だけでも、これほどの差が開いているとは。
僕らは音羽様が使った体術の術理を、半分も理解出来ていない。
「それと体力不足ですねぇ。神族の体は長くとも数十秒で回復します。しかしこれは
『止まって休む事ができた時』の話です。永続的に戦い続ける為の体力もつけていきましょう!」
「分かりました。本日はありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
ーー千冬の紹介宿屋『終わりの先』に帰還ーー
僕らはその日の鍛錬を終え宿屋に戻った。
「あー。ダメだなやっぱり全然敵わないわ」
「でも神界最強の武神が、女性の方だったなんて驚いたわ。性別的な差が少ないとはいえ、肉体能力は男性の方が訓練しやすいのよ?」
確かに神界においては性別での肉体性能の差は少ない。
しかし身長によるリーチや近接戦闘に対するイメージにより、この神界においても女性の拳法家は男に比べて少ない。
しかし......
「あー。ルシアは気づかなかったのか。」
「え?どういうこと?」
「あの人の肉体。おかしいんだよ......」
「え?」
そう......あの人は明らかに尋常ではない点がある.....
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