25話ー➂ 何人も抜けぬ究極の絶剣





「お困りかい?それでは私の武器屋を見ていかないか?」



 振り向くとそこには、深紅の服を来た茶髪の美青年がいた。



「ルークどうする?」


「着いてくだけ着いてってみよう。一応警戒しとくように......」



 僕らは通信神術でそんな会話をしつつ。



 外面では......


「是非!」


 そう言って店に着いて行った。





 しばらく付いて行ったのだが......

 何とも、怪しい裏路地に連れてこられてしまった。



「ここが私の武器屋だ。是非見ていきたまえ。」


「は、はぁ。分かりました。」



 店?の中に入ると確かに剣がずらりと並んでいた。

 店内は武器屋というより、アンティークな雑貨屋のようで何とも洒落ている。


 そして驚くことに、そこに並んでいるのは、どれもこれも超1級の名剣ばかりだった。



「これは......」


「どうだい?私の断絶の剣達は気に入ったかい?好きに見ていきたまえ。」



 正直驚いた......

 どれもこれも桁違いの付与効果があり、超緻密かつ高度な魔力回路が埋め込まれているものばかりだ。


 僕の知人には、これほどの腕を持つものはいない。

 是非仲良くしたい!!!!



「ルシアちゃんは何をお探しだい?」


「!?」


「おい。何でルシアの名前を知っているんだ!」


「さっき呼んでたじゃないか君が。だから覚えただけさ。君はルークだろ?」



 あー。確かに名前を呼んでたかもしれない。


 僕らはお前とか君とか、敬称は使わずに名前で呼び合うから......

 よく考えれば危険だ、今後は気を付けよう。



「声を荒らげてすいません。」


「気にする必要はない。それでどうかね?ルシアちゃん。」


「そうですね......両刃の細剣で私の手に馴染み、折れず、曲がらず、切断もできて、軽くて魔法、魔術効果増幅、にその他戦闘で必須となる効果を詰め合わせ『全部乗せ』の剣ないでしょうか?」



 細か!?長!?

 いやあるかよそんな剣!?


 まぁルシアも言ってみただけだとは思うが。



「君の手に馴染むかは、分からないが......あるな。持ってこよう。」


「ホントですか!お願いします!」


「うえぇ?マジでぇぇ!?」



 あるんかい!?

 てか、あの人妙に声低いし、話し方もトーンもペースも何か貫禄あって落ち着いてる。


 けど......ジジくさすぎて胡散臭い......



「これだよ。鞘に入ってはいるがね。」


 店主?が出てきた剣は見た目だけでも超高級品だろう。


 柄頭と剣格には、大きな紫色の魔宝石が埋め込まれいる。

 握り手と鞘には、巨木の枝先を形どったような彫刻や、色とりどりの装飾が施されている。



「き、綺麗......」


「!?!?」



 やっべぇもんが出てきやがった......

 マイ〇ラで目の前に突然、ク〇ーパーが出てくるような衝撃だ......


 いざ鑑定してみると......それは剣マニアの僕からするととんでもない代物だ。


 一言で言うと国宝を遥かに超えるレベルの極剣。

 恐らく値段は僕の住む浮島を、正規の値段で買うよりも遥かに高い。



「ナンスカ?コレ。」


「剣だが?」



 いや!そうじゃない......


 まず内包できるエネルギー量が尋常じゃない。

 アファルティア様の全魔力が、霞んで見える程の魔力量を内包している。


 そして剣の刀身や、中心部の魔石に使われている物質は......

 そもそも何の物質なのか、何の分からないのだ。



「これは......遺物か何かでしょうか?」


「うーむ。まぁ遺物と言えば遺物か。極めて古いものだからね?」



 磨いて綺麗にはしてあるが......

 とてつもなく古い。恐らく遺物かロストテクノロジー......その類のものだろう。


 ただこのレベルの絶剣は、付与効果の変更などは不可能だ。

 そもそも古すぎるし、回路や付与方法が未解明なので、解除する事さえ難しい。


 技術的にではなく理論的にも、現代の神界の文明レベルでは不可能なのだ。

 中身がルシア向きの付与効果だといいが......



「ルーク!私これが欲しいわ!」


「アハ......お、お値段の方はぁ......」



 久々に物を買う時に、お金の心配をした。

 それほどにこの剣は高価なのだ。



「安心したまえ。この剣はタダだ。抜く事ができればな。」


「え?これ抜けないんですか!?」



 おいおいおい!?

 上げて落とす新手の詐欺かてめぇは!?


 ここまで目をキラキラさせた嫁の喜びを返しやがれ!



「少なくとも今までもの達は抜けなかったのだよ。」


「あのぉ。店主さん?」


「ん?どうしたんだい?」


「抜け......ました。」



 その瞬間......僕の脳内には宇宙が広がった。


 ......つまりフリーズだ......


 うちの嫁さんは、国宝を超えるかもしれない遺物を、普通に抜いてしまったのだ。

 僕は口を空けて、呆然とするしかなかった。



「ほう?素晴らしい。では約束通りタダで君にやろう。」


「本当ですか!ありがとうございます!!ルークやったわね!」


「......ふぁ??」



 現実についていけない。

 適当に立ち寄った武器屋に?


 たまたま誰にも抜けない遺物があって?

 それをルシアが抜いて更にはタダ?国宝超えの遺物剣が?


 しばらく木目の天上を眺めて現実逃避をした......シミの数は55個だ。


 2人は何やら話しているが、内容は何も頭に入ってこない。

 もはや、ぶつぶつ話声がする事くらいしか、認識できていなかった。



「君の髪色と刀身が同じ色をしている。まぁこれも因果だな。」


「何か運命的なものを感じますね......大切に使います。」


「スキルの中身はカスタム出来るのだが?どんなのがいいかね?その気になれば1万個くらい効果を選べるがどうする?」


「1万!?ですか??ちょっと分からないので......店主さんの最強だと思うオススメの組み合わせで!!」


「ほう?ただそうすると、今の君の魔力量では、一振りで魔力切れになってしまうなぁ。よし!魔力が増えたら、段階的に解除されるようにしておこう。」


「そんな事が!?ありがとうございます!」



 話がなぁんにも入ってこない。

 頭が白濁している。それほどまでに衝撃的な出来事だったのだ。



「また来ますね!ほら!ルーク?ボーとしてないでないで行くわよ!」


「ぁい。」



 僕はルシアに引っ張られるように店の外に出た。

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