21話ー➂ この僕が一本......取られた!?






「ふーん?ルシアは子供が欲しいの?」


「ふぇぇ!?」


「ほらほら。早く答えて。」


「ぅぅ、もうぅ......ほ、欲しいけれど。私......母親になれる自信ないわ......」


「それは......僕もそうだよ。それにこの天界では相応しい家庭にしか子供は生まれない......らしいから。心から欲しいと思わないと生まれない可能性さえあるかもね。」



 この世界は、子供を育てる力のない家庭や、問題のある夫婦間に子供が誕生しない。と習った。

 どのような基準値かは分からないが......


 とにかくこういった要因が、ただでさえ低い誕生率を更に低下させている。



「そんな家庭にしか生まれないにも関わらず、神界にも孤児がいるのよね……」


「それだけ生きていれば状況は移り変わっていくってことさ……夫婦の関係も周りの環境も何もかもね。」


「悲しい......どこの世界にも不変なものなんてないのね......」


「僕は不変な世界って超退屈だと思うけどね~。」



 不変なものはない。

 だから初めに相応しい家庭でも、一歩踏み間違えれば変わりかねないんだ。


 しかし、不変である必要もない。

 変化があるからこそ、僕たちは生命なのだ。



「んでさ?ルシア、チェックメイト。」


「!?、ちょっまっ!!タンマァ!」


「ダメ。僕の勝ち。これでさらにリードだね。」


「ぅぅぅぅ。ズルい......ズルいズルい......同時にやるの苦手なの知ってるくせにぃ。」



 ルシアは超一点集中型だ。

 一つの事柄に極限まで集中できれば、自身の能力を超えたパフォーマンスを発揮する。


 しかし、その反面彼女は、並行して二つ以上のことを考えるのは苦手なのだ。

 加えて、彼女は自由度の高いゲームや、ルールのない読み合いは少し苦手な傾向にある。


 彼女がその真価を発揮するのは、一定の法則と制限下における敵との刺し合いなのだ。



「勝ち逃げしたいから敷地内の散歩にいこう。」


「嫌!勝ち逃げズルい!絶対動かないから............!?」



 僕は彼女の唇にキスをする。



「散歩いくよ。」


「......いじわるぅ......」



 そうして勝ち逃げしたい僕の要望を無理やり押し通し、敷地内の散歩をすることになった。





 僕の敷地は直径30kmほどの小さい浮島だ。

 敷地内には森や湖、川などがあり、小さな渓谷なんかも存在する。


 屋敷の周りの1.5kmほどは平野になっている。

 特に手も加えていないので、本当に草しか生えていない。


 少し離れた所に1本の木と、昔暮らしていた小さな小屋がある。

 それ以外は何も無いただの草原だ。


 本当は芝生を植えてから、もっと色々と改造する予定だったのだが......

 ……結局何もしていない。


 僕らは別に家庭菜園なんかに興味はなかったのだ。

 ちなみに本で読んで、知識だけは人並み以上にある......


 ルシアは敷地内をゆっくりと歩いて散歩しながら問いかけてくる。



「さっきの話の続きなのだけれど、私たち片割れって何なのかしら?」


「うーん……元々一つで生まれてくる存在が、二つになって生まれてきたって聞いているけど……」


「片方が死ねば、もう片方も死ぬ。お互いに引っ張られる存在。あまりにも生命の本質とかけ離れてる気がしない?」


「そうかな?僕はさ、片割れは最小単位の種なのかと思ってるよ?」



 ルシアは神族の在り方や、片割れについて色々歪さを感じているのだろう。

 特に片割れは特殊だ。


「根源共鳴」や「根源共有」など他にはない様々な特性がある。



「片割れは同じ場所、同じ親から生まれないのよ?いわば必ず、恋愛関係になれる位置で生まれる......これって変じゃない?」


「なるほど。世界に定められた恋仲…...か。しかも必ず異性として生まれる。てかさ。片割れって他人同士だとデメリットしかないよね?」


「......デメリットどころじゃないわ。想像するだけで怖いわ......」


「だよね。別々の仕事に就くのも怖かったよね。」



 知らない場所で知らない内に、片割れが死にました!

 こちらもすぐ死にます!とかなったらヤバすぎる。


 そして......もし片割れがいることを認知していなかったら、突然訳も分からず死ぬことになる。



「なんであるのかしらこんな法則が。何か別の意図や目的があるとしか思えないの......」


「昔の方が片割れが多かったって、この前の老神さんが言ってたよね?この発言ヒントになるんじゃない?」


「それはまぁいいわ。私は話を聞いて欲しかっただけだから。」


「えぇ!?折角盛り上がってきたのに!?」


「さっきの仕返し......」


「うわぁマジかよ!?」



まさかの返しに僕は一本取られたなぁと感じたのだった。


まぁいい。また今夜......次回で取り返す!!

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