21話ー➁ 生命の本質から外れた命
「ルーク。神族という生き物……いえ私たちの生態について、あなたはどう思う?」
「どうした急に。」
「いいから......答えて.......」
「神族とは呼ばれているけど、僕ら別に神ではないだろう?この天上神界に来る時に身体の再構築について説明されたし、何の不自由もないよね?」
「私......思うことがあるの。話に乗ってくれない?」
「いいよ。こういう議論は大好きだからね!」
僕たちのように別の星から神界に召し上げられた生命は、神界に上がる際に新たなる肉体を与えられる。
この肉体は生前の肉体をベースに再構築され、僕のようにCPUなどの特殊構造はより強化されて残るのだ。
そして実はこの提案は断ることもできる。
この天上神界には様々な生命がいる。
僕たちのように作り替えられた生命。
元から神界で生まれた生命。
元の肉体をそのままに召し上げられた生命。
唯一共通しているのは、物理法則の縛りが緩い世界ということだけだ。
この天上神界の物理法則は、他の世界とは大きく異なる。
「ルーク。不自由がないのは、生きている実感が薄れることだと思うの。食事も睡眠も要らない身体。ほぼ無尽蔵の時間、充実した社会制度。平和だけれど......生前より漠然と生きている人がほとんどだわ。」
「なるほど。確かにそうかもね?でもさルシア、この世界は工夫と努力次第でどこまでも上に登れる可能性を秘めてる。何かを学ぼうと思えば、幾らでも知識が手に入れられる。ある意味で超競走社会とも言えないかな?」
僕自身は天上神界は最高の競走世界だと感じる。
何不自由なく生活ができ、時間が無尽蔵にある故にその差はどんどんと開く。
オマケに天界には階級がある。
それは〜神と言われる階級と、そうでない階級だ。
無尽蔵の寿命と超的な肉体を持つのは初神という階級以降なのだ。
それより下の階級では、頻度こそ少ないが食事、睡眠は必要になる。
寿命も確かに長いが、神族のように無尽蔵というほどではない。
僕らは天に召し上げられる段階で、神になれるほどの実力があっただけ。
本来はもっと下からスタートなのだ。
「あなたも味わったでしょ。初神転生の儀式を......あれは肉体改造なんて生易しい代物じゃない。例えるなら生まれ直しに近いわ。成長速度や最終到達点は人それぞれだとは思うけれど......」
「まぁ……確かにそうだね。新しい物理法則に適応できるよう、新たな肉体を与えられたって感覚は否定しない。」
ちなみにこの儀式は誰が行っているか分からないのだ。
初神以上に認められると、まるで大いなる意思から祝福を受けるかのように選択肢が提示される。
神の肉体になるか......己が肉体のまま神に挑むか......
「ねぇルーク。生命の本懐って何?」
「そうだな……種を繁栄させることじゃないかな?」
「なら......私たち神族の......この異常な繁殖能力の低さは何?」
「…….」
僕ら神族の繁殖能力は著しく低い。子供は滅多な事では生まれない。
迷い込んだ子供や、召し上げられた子供たちの方が圧倒的に多い。
だからこそ生まれた時の祝われ方や、大切にされようは凄まじい。
この世界では子供は文字通り未来の財産なのだ。
「でもバランスは取れてるよ。僕らには無尽蔵の寿命がある。数年に1人のスパンで子供が出来てみなよ。流石にこの巨大な天上神界だってすぐに入らなくなっちゃうよ?死なないから人の数減らないもん。」
「それは分かるわ。でも種の繁栄から遠ざかった私たちは、ある意味で命の可能性が閉じている生き物だとは思わない?」
一理ある意見だ。種としての可能性......
種全体の進化という一点において、神族の可能性は完全に閉じている。
「種として全体ではなく、個で進化することをコンセプトにして生み出された生命......とか?」
「それは.......あるかもしれないわ。でもね。私はもっと別の目的で作られている生き物なんじゃないかと思っているの……種の繁栄ではなくもっと別の......誰かの宿願のような……」
中々興味深い意見だと感心してしまった。
「そうなると……この身体再構築のシステムを作った人に、確かめる必要があるね。」
「人物でない可能性だってあるわ。理や世界の意思かもしれないわよ?」
結局この議題の答えを今ここで出すことはできない。
「ふーん?ルシアは子供が欲しいの?」
「ふぇぇ!?」
そう!いついかなる時も唐突にぶち込む。
それが......僕だ!!!
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