20話ー➁ ワンチャン焼けば食えんじゃね?







 そして!僕たちは一つの結論にたどり着いた。



「......普通にクソ野郎......」


「殺す殺す殺す.......」


「怖い怖い怖い。呪怨か!?」


「半日前に言った言葉は全面撤回するわ。超ド級のドクズね。」



 何だ?超ド級のドクズって......意味重複し過ぎだろ......

僕はそんなどうでもいいツッコミを心の中でした。


 ちなみに「害虫X」について分かったことを整理するとこんな感じだ。


 ・家があると言った場所には、家どころか土地の所有者自体いない。

 ・出身だと言った名家の名簿を調べ、確認も取ったがそんな人物は実在しない。

 ・デート費などの金銭も一円も払わず、全てエリーに負担させている。何なら高額の物をねだって買わせる。


 そして極めつけは......犯罪歴まであると来た。



「真っっ黒じゃん。これどうする?」


「当然。殺......二度と近づけないようにしてやるわ。独房に放り込んでやるのよ。」



 今一瞬不穏な言葉が聞こえたような気がしたが......気のせいだろう。

 しかしルシアはやはり心が優しいのだろう。出てくる報復が全部大したことなくて可愛い。



「いやぁ。流石にそれは厳しくない?犯罪歴はあるけど、前回の出所からは再犯してないっぽいし。」


「......じゃーやっぱり殺す?」


「はいはい。何だかんだ殺さない癖に......イキんないの。」


「ぅぅ。」



 何度も捕まっているが……前の出所から再犯はまだしていない。

 そのため検挙は極めて難しい。


 そもそも......僕たちが逆に捕まるだろう!!!


 そうしていると害虫Xが動きを見せた。



「こんな。人目のない場所。どうして来た?」


「鈍いなぁ。ゼレトルスちゃん。クフフッ」



 よし来た!!遂に尻尾を出しやがった!!

 助かるわぁ、既に38パターンの殺害方法を考えてある。


 もしエリーに何かしようとした瞬間、即効で叩き殺す!



「君を誘拐するんだよ。君みたいなロリっ子はね、高く売れるんだよ。ほんっとにバカだよね?ノコノコ付いてきちゃって。」


「悪い人?」


「ニヤ。そうだよ。でももう直に僕らなしじゃ生きられない身体にな、」



 僕たちが飛び出そうとしたその瞬間。

 僕たちよりも早くエリーが害虫Xに襲いかかった。



「悪い人。倒すOK。殴殺。」


「ちょ!?何だこの腕力と速さは!?クソ!こんなばず……ブベゴハ」



 エリーは害虫Xをボコボコに殴り始めたのだ。


 あまりの速度で殴るため男は倒れることも許されない。

 次第にどんな顔だったか分からないくらいになってきた。


 容赦なく眼球を潰し、骨を粉々に砕いているその様に、隣のルシアが呆気に取られていた。

 そんな事はいいとして......前に比べてエリーの体術が明らかに向上している。


 これは兄としては嬉しい収穫だ。



「やめ!あっが!ゆる......し、ブヘッ......たすけ.......ドゥハッ」


「ダメ。」



 段々と元々人型だったことが、よく分からない見た目の肉塊なってきた......

 


てか、もうここまで来ると焼いて食べれそうだな。 ※彼はエリーの兄です。



 それにしてもやはり体術だと、僕よりエリーの方が僅かに実力が上だ。

僕の前に大きく腕を上げたのに、エリーは更に強くなっている。



「#%$!&」


「ちゃんと話す。言ってること、不明。」



 流石に理不尽だろ......その状態でちゃんと話せってのは......



「ね、ねぇ。ルークよりも惨いことしてない?」


「ん?あぁ。昔から敵にはエリーの方が容赦なかったからね……」



 そして害虫Xは文字通り、害虫のような見た目になるまで、グチャグチャにされてしまった。

 エリーはボロボロになった害虫Xの、髪の毛??のようなものを掴み夜の暗闇の中、引きずっている。



「録画した。引き渡し、お金、貰える?嬉しい。」



 そうしてエリーは、夜の港町の中に消えていくのだった。



「なんて無駄な一日を過ごしたのだろうか。」


「……言わないで。泣きそうになるわ。」



 こんなことなら全部エリーに任せていれば良かった。

 そもそも僕が心配するほどエリーはか弱い妹じゃなかった......


 どちらかというとこれ、犯罪を起こす側に近いのでは?



「帰ろっか。家に......」


「何食べる?何か簡単に作るわよ?」


「何の食材が余ってたっけ?」


「......じゃがいも?あとセロリ?あとは覚えてないわ......」






 ......そんな一日が終わろうとしていたその時......


 ......僕たちの背筋は凍り付いた......

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