第20話 害虫VSサイコパスVSストーカー
20話ー① シークレット任務「すとーかー」
僕たちが、根源共鳴の反動で体調を崩してから二日が経った。
体調はほとんど回復したが、今日は仕事を休むことにした。
妹がかなり怪しい男とデートをするからだ。
休んだ理由は、僕たち二人で尾行するためなのだが......
「ルーク。決戦の日よ。全力でストーキングを実行するわ。」
「そうだね。神術に最高位魔法、スキルに隠密術、認識阻害の装備や魔道具。持ちうる限り最大限使おう。エリーは僕ら並みの実力で、かつ警戒心も強い。どこぞの脳筋夫婦とは違う!」
「それでは作戦を開始するわよ。観察目標は害虫X。きっとゴキブリみたいな気持ち悪い外見よ。」
「いや、それは知らん。」
そうして僕たちは妹と怪しい男、害虫Xと命名された二人の尾行作戦を開始した。
今回エリーが害虫Xとデートする予定の「第十惑星ユーストゥス」に来ている。
ここは一風変わったおもしろい文化を持っている。
この惑星には海抜0mから上に、陸地がほとんど存在しない。
しかし全体的な海洋の平均水深はかなり浅く、惑星全体の約3分の1が10m未満の水深なのだ。
基本的に建物は海の中から建設されており、道路は存在せず、その代わりに小舟で水路を移動する。
舟が数隻並んで通れる幅の、細く入り組んだ水路を小舟で進む。
そしてそれが、陸でいうところの道路の代わりを果たしている。
また、建物はかなり密集する形で建設されている。
区間によっては、建物間に張り巡らされた空中通路や、建物内を繋ぐ連結廊下を使って移動できる。
「晴れてたら綺麗なんだろうなぁ......」
「晴れる事もあるみたいよ?でも薄暗くて昼でも明かりが灯る街並みも、綺麗じゃないかしら?」
街並みの風貌は、海賊のポートロイヤルのような入り組み方をしている。
加えて、天候が大体曇りのため、年中どんよりとした空気感を放つのだ。
「でもここ......神界惑星の中でもかなり治安悪いよ?」
「......まぁそうね。海賊とか出てきそう......。」
「それは大分偏見だな......」
そこで僕たちは、主に水の中に潜水して移動することにした。
そして移動しつつ、隠蔽と暗号化魔法が組み込まれた神術で会話をする。
「エリーちゃんと害虫Xが集合したわ。この映像を見て。」
「ふむふむ。イケおじ?何だこのちょび髭は......全然似合ってないぞ。」
この映像は先ほど使役魔法で使役したハエと視覚共有し、ハエの視覚を映像化している。
この映像を映している水中モニターも、エリーの近くを飛んでいるハエにも、隠蔽がかけられている。
そして……これらのやり取りは全て水底で、しかも腹ばいの状態で行っている。
これだけ見れば完全に変質者なのだ。
「エリーちゃんが動き出したわ。私たちも動くわよルーク。」
「了解......てか水汚っ!?」
僕たちは水路の底を泳いで移動し始めた。
保護魔法で体の周りに薄い膜を作っているが......あまりにも水が汚いので、視力も強化する羽目になった。
「レストランに入ったわ。ルーク。このレストランの評価は?」
「……星5中の星2.9だね。」
「殺すわ。」
「怖っ......」
そしてしばらく観察を続けた。
濁っている水底で潜水用のウェットスーツに身を包んで……
誰にも見られてはいない。
しかし、段々とこんな思考が僕の脳内を駆け巡る『何やってんだろう......』と
「もう少し観察を続けよう。実はいい人......とかいうオチはよくある。」
「そうね。邪魔をしてしまっては良くないわ。」
僕たちは尾行と観察を続けた。
ある時は天井に張り付き。
ある時は床に成りすまし。
ある時は小舟の底にしがみついて監視した。
そして!僕たちは一つの結論にたどり着いた。
「......普通にクソ野郎......」
まっ。現実そんなもんだよね!!
僕は悟りを開くことにした。
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