20話ー➂ 多分......只者じゃない。
......そんな一日が終わろうとしていたその時......
......僕たちの背筋は凍り付いた......
「ぬしら。そこで何をしておるのじゃ?」
「「!?!?」」
突如現れた袴を着た老神が僕たちに声をかけてきた。
老神の頭部には髪がなく、白くて長い髭を生やしている。
その佇まいはまるで達人のようだ。
僕たちは隠蔽の術をこれでもか!というくらいに重ねているのに、見破られるなんて……
これを見破れるのは十神柱くらいのはずだ。
「いえ!私たち怪しいものでは……怪しいものでは……あー.....あや、しいかもしれませんが!」
人気のない草むらに潜伏する、ウェットスーツを着た男女二人組。
もはや完全に変態の構図だ。
ルシアが必死に弁明してくれている。
「決して!悪いことをしようとしている訳ではないんです!!」
「嘘でないのは分かるがのぉ。人様の恋愛事情に顔を突っ込むのは良くないことじゃ。」
「な……なぜそれを知って……」
今日一日の動きがこの人にはすべてバレている……!?
「この星には用があっての。立ち寄っただけなんじゃが。あの男がどぉにも気運が怪しくての。一日見守っておったのじゃよ。」
「で……僕たちを見つけたと……」
「見た限りでは害意はないようじゃったのでな。ひとまず放置したのじゃが。」
この老神は僕たちに気付いただけでなく、敵意が無いことまで読み取っていたのか。
本当に世界は広いな……
「兄妹じゃろう?氣が似ておるわい。そしてぬらは二人は片割れじゃな?同じ氣をしておるわ。」
「そ……そう、です。」
「近頃は片割れもとんと見なくなってしもうたわい。かつてこの世に力が満ちていた頃、多く生まれておったのじゃがのぉ。」
まずい……片割れだとばれるのはあまりいいことじゃない。
片方を殺せばもう片方も自動的に死ぬ。
そんな弱点をみすみす晒すことになるからだ。
「安心せい。儂はもう隠居した身じゃ。未来を担う若者に何もせんわい。」
「あ、ありがとうございます。」
「そうじゃ。儂の愛弟子が体術の道場を継いでおってな。教わってみぬか?深澤の紹介だと言えばよくしてくれるじゃろう。お主らは才能に溢れておる。」
ここで断るのは後々まずいかもしれない。
僕はそう判断して、この申し出を受けることにした。
片割れだとバレた相手に反抗するのは愚策だと考えたのだ。
「わ……分かりました。」
「おぉ。そうかそうか。紙で悪いが場所はここじゃ。都合が良ければ尋ねてやってくれ。また会えるといいのぉ?」
すると老神の姿はなくなっていた。
霧のように居なくなったのではない、気づいたらどこにもいなかったのだ。
「き……消えた。」
「何者だったのかしら……老いにくい神の肉体であんな……」
以前にも話したが、神族の肉体はほとんど老化しない。
しかしあの老神……種族や肉体の構造は間違いなく神族のものだった。
遥か太古から生きるアファルティア様や魔導神ソロモン様でさえ、見た目は若々しい。
あの老神がどれほど長い時間を生きてきたのか、もはや検討もつかない。
「それにルーク……あの人も」
「あぁ。魔力……いや体内にエネルギーが無い……」
僕たちのことをどうやって見破ったのだろうか。
もしかすると実在も疑わしいが、氣功使いなのか?
「おにぃ?おねぇ?何やってるの??」
「あっ……」
「えー……」
僕たちはその後、何故か戻ってきたエリーに、必死の弁解と謝罪をしたのだった。
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