16話ー➁ 中央主神惑星『ネオコスモス』





 界立中央図書館は、12ある天上神界の惑星の中心に位置する、

「中央惑星ネオコスモス」に存在する。


 この中央惑星ネオコスモスは、天上神界の要となる惑星で、その神都であるネラスには巨大な塔がそびえ立っているのだ。


 今回は昨日の今日で行くことを決めたので、星間遊覧船は使わずに飛行魔法でやってきた。


 飛行魔法で来る場合、本来厳重な入星審査があるのだが......

上位神以上は本人認証だけでなので、ほとんどフリーパスに近い。



「見えて来たね。」


「……何度見ても圧巻だわ。」


「軌道上に浮遊している建造物に、ぶつからないようにね~」


「い、いつまでそんな昔の話を引きずるのよ!!」



 星といってもネオコスモスは見た目からして、ただの惑星ではない。

惑星全体を覆うように巨大構造物が建造されているのだ。


 ネオコスモスは、惑星全体の天候や地殻などエネルギー資源に至るまで、完全に支配できる文明力を保有している。


 かつて魔力の制御ができなかったルシアは、構造物に激突したことがあるのだ。

そして今でも皆からいじられている。


 並大抵の速度では、衝突できない設計になっているので、ちょっとしたニュースとして騒ぎになったほどだ。



「ホントに面白いくらいに綺麗に激突したよね~。泣きべそかいてたっけ?」


「ぅ……あの頃はダメダメだったの……もう触れないでぇ……」



おし、おk。触れない。



「よし!そろそろ図書館に着くよ。審査の準備を。」


「だからって無視しないでよ!?」



 簡単な入星審査を終え、二人は界立中央図書館に到着した。

その内部は壮麗な宮殿のようで、天井には立体の宇宙ホログラムが映し出されていた。


 無数の星々が煌めき、まるで宇宙そのものが頭上に広がっているような光景は......

何度見ても息を呑む。



「……入口もよく分からないような建物なのに、随分手馴れてるわね……」


「何回来てると思ってるの?もう自宅の玄関ドア開けるのと大差ないよ。」


「……まさかハッキングがバレて、ブラックリストに載った後も......何食わぬ顔して足を運んでたわけ?」


「もちろん!バレた次の日に足を運んだよ。」



 そもそもただの図書館秘書が、ブラックリストに載っている人物を把握している確率は低い……。


いやそういう問題じゃないって?それは知らん。



「サイコパスなの?思考が完全に犯罪者じゃない!?しかも反省してないタイプの犯罪者!!」


「失敬な。ちょっとのぞき見しただけじゃん。大袈裟だなぁ......」



 ルシアは呆れた顔で少し呆気に取られている。

そんな彼女を全力でシカトしつつ、僕はお目当ての本を探していた。


 僕達は本を探すため、図書館内の検索システムを利用していた。

モニターに表示される情報は、神界の高度な文明力を感じさせる。


 検索システムのおかげで、目的の本とカモフラージュ用の本の位置を特定することができた。


 その過程で、図書館全体に漂う静謐な雰囲気と、古今東西の知識が凝縮されたこの場所の神秘性に改めて感嘆した。



「ルーク。流石に本よね?データじゃなくて。」


「今回の場合は本だと思う。語りかけてきた内容的にも本みたいだし。あらかじめ何か細工がされているのかもね。」


「複数ある本全てに細工をしたのかしら……一体いつどうやって……ここのセキュリティは私がハッキングを諦める程のものなのに……」


「いや……物理現象も条理も超越して、干渉してくる相手だよ?このくらいは余裕だと思う。」



 神界の図書館では、物理的な本を借りる人とデータを借りる人がいる。


 知っての通り、僕達の体内には液体CPが埋め込まれている。

それを使い、空中にネットワークパネルを映し出すことができるのだ。


 この高度な技術は、神界の文明力の象徴だ。


 しかし、今回の目的は物理的な本だ。


僕自身、本を読むのが好きなのでよく図書館から借りている。

なのでこの行動は不自然ではない。


 物理的な本には、データにはない特有の感触と香りがある。

そして、それがまた僕を心を魅了して離さないのだ。


 神界の技術がいかに進歩しても、本の持つ魅力は格別だ。

利便性と芸術性というのは、大抵のかけ離れた場所に位置するのだから。



「とりあえず目的の本『植物学入門57』手に入った。帰ろうか。」


「そうね。もったいない気もするけど……ネオコスモスを観光する場合ではないわ。」



 僕らは通信神術で話をしつつ、図書館、そしてネオコスモスを後にした。





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