14話ー➁ 何で熱線が軌道衛星まで?
「!?ルシア!!目の前にいる!!」
「なっ!?」
転移魔道具のゲートをくぐった瞬間......
狂化黒龍が咆哮とともに超高温のブレスを放ってきた。
焼け付くようなエネルギーが一瞬で僕たちを包み込み......
そのブレスは背後の軌道衛星にまで到達していた。
狂化黒龍のブレスはタイミング的に不可避だったこともあり、その破壊力と威圧感に一瞬で戦場が緊張に包まれる。
僕はすぐさま通信神術でルシアの安否を確認した。
「生きてる?」
「生きてるわ。幸い無傷よ。ちょっと防御魔法を荒く発動したせいで疲れたけれど……」
「よし、このまま」
そう話している間にも、狂化黒龍は再び凄まじいブレスを放ってきた。
僕たちは冷静に回避したが、狂化黒龍はブレスを吐き続けたまま首を激しく振り回し、周囲の全てを破壊し尽くしている。
その破壊力は圧倒的で、森は火の海と化し、大地は深く抉られ、岩は粉々に砕け散る。
狂化黒龍の怒りと狂気が周囲の風景を地獄に変えていく。
「ルーク!このままじゃ惑星が持たないわよ!」
「分かってる!そもそも威力がおかしいだろ……」
この前のベヒーモスも明らかに異常だった……。
通常の黒龍のブレスは、せいぜい島を一つか二つ蒸発させるのが関の山だ。
惑星全体に影響を及ぼすなんて、到底考えられない。
「ルーク!!即席で組み上げる攻撃魔法じゃ回復されるわ!それに外皮が硬すぎて並の魔法じゃ致命傷にならないわ!」
「即席って言っても上位位階の魔法だよね!?それで削れないなら龍王以上の防御力じゃないか!」
「本気出していいかしら?数秒で粉々にできる自信あるわよ!」
「ダメだ!誰に観察されているかも分からない。それにその規模の魔法を打てば惑星全体に大きな影響が出る!」
ルシアは移動しながら絶え間なく魔法を放っているが、決定打にはなっていない。
僕も剣戟と魔法を繰り出しているが、黒龍は傷を負っても即座に回復してしまう。龍王以上の防御力で回復までするのは非常に厄介だ。
「あとブレスを地面に当てさせるな!!どこまで被害が出るか想定できない!」
「相変わらず注文が多いわね!でもこの熱よ?早くしないと惑星の動植物に回復不能なレベルで被害が出るわ!!」
狂化黒龍のブレスの影響で大気の温度が急上昇し、遥か遠方の木々まで自然発火して燃え上がっている。
全ての攻撃においては言える事ではあるが、規模と範囲の大きい破壊魔法が必ずしも強力とは限らない。
黒龍のブレスは狭い範囲を、徹底的に破壊することに特化している攻撃手段だ。
それが狂化によって強化されたとはいえ......
軌道衛星にまで届く威力と範囲を持つとは、到底考えられない……
「ルシア!物体浮遊神術だ!それで上に浮かせてくれ!!」
「神術?!実力晒したくないんじゃないの!?」
「当然偽装はする!頼んだよ!」
「いつも無茶ぶりね……それに体外の魔力密度で、術がかき消されないかしら?」
ルシアの言い分はもっともだが、あの狂化黒龍はおそらく体外に魔力を漏らしていない。
僕たち知性体と同じように魔力を完全にコントロールし、体外に漏れ出す魔力も完全に制御している。
そうでなければ、いくら狂化していても、あの出力のブレスを放つことはできないはずだ。
「大丈夫だ!一瞬でいい!100メートルだけでも!」
「分かったわ!術式を構築するから少し待って!」
ルシアは黒龍のブレスを避けつつ、物体を浮遊させる神術を構築し始める。
その間も構築に支障が出ない範囲で魔法を駆使し、攻撃と防御を続けている。
この緻密な加減......エリーにも不可能な芸当だ......
「終わったわ!!第12階梯神術、空地回天!」
ルシアは何と......神術を数秒で構築してしまった......
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