第14話 ちょっと強すぎる黒龍

14話ー① まさかの龍種が狂化!?







 ゼニスワールドアカデミーで講義を終えてから一週間が過ぎた。


 そんな何の変哲もない日に、魔道神ソロモンから推薦依頼という形でクエストが送られてきた。


そこで、僕とルシアはギルドに向かうことにした。


 ギルドに到着し、広々としたギルドホールに足を踏み入れると......

いつも通りの賑やかな雰囲気が漂っている。



「ごめんね、ルシア。今日は休日だったのに……」


「別にいいわ。あなたのためだもの。」

 


 優しい嫁すぎるだろ……。

そう思いながら、僕たちは送られてきた情報を再確認することにした。



「龍種の狂化か……あまり聞いたことがないな……」


「どの程度の龍なの?飛龍?それとも普通の龍?」



 飛竜が狂化する話はそれなりに耳にする。

 飛竜は龍に比べて知性が低く、魔獣に近い生物だからだ。


 しかし、今回の依頼は……



「それがね……情報は不確定だけど黒龍みたいなんだよ……」


「え?黒龍?あの黒龍?そんなことあり得るの……」



 黒龍は個体によっては言語を操り、意思疎通ができるほどの知能を持っている。


 最悪の可能性が現実となったようだ……

今回の狂化ウイルスは、知性を持つ生物にまで感染力を持っている。



「それはまずいんじゃないかしら……龍神たちと天界は同盟を組んでいるでしょう?飛竜ならまだしも、黒龍を倒したりしたら……」


「同盟……まぁ、半ば帰属関係だけどね。でも許可は出ている。むしろこれは龍王たちからの依頼なんだ。内輪揉めになるから神界に頼めないかって……」



 龍王たちは同族への情と、義理を何よりも重んじる種族だ。


 内輪揉めというのは表向きの理由に過ぎず、実際には同胞を手にかけることに対する深い葛藤があるのだろう。



 彼らにとって、同胞を殺すことは最も避けたい選択肢だ。


 しかし、狂化した黒龍を放置することもできず、やむなく僕たち神界に助けを求めてきたのだ。



「やるしかないね!黒龍の狂化なら何とかなりそうな気もするけど……準備は怠らない方がいいね。」


「そうね。万が一があってからでは遅いわ。狂化状態の黒龍なら万全の準備をした方がいいわね。」



 僕たちは身代わりの護符や逃走用の転移魔道具などを買い込み、入念に準備を整えた。


 黒龍と戦う際に注意すべきは、その超高温の熱線だ。

黒龍の熱線は火を吐くというよりも、強力なエネルギー放射に近い。


 その熱線は着弾地点から地表を抉り、巨大な爆発を引き起こす。

そういった爆風への対策も必須だ。


 準備を終えたのは夕暮れ時だった。

「明日にしよう」などと悠長なことは言っていられない。


 黒龍が確認された場所から大きく移動していた場合、時間が経てば経つほど捜索に手間がかかり、周囲の生態系への被害も増大する。



「ルシア、行こう。転移魔道具を開くよ。」


「強化系の魔術や魔法は掛けたわ。いつでも大丈夫よ。」



 僕たちは転移魔道具で作られたゲートをくぐり、目的地付近まで移動した。




 その瞬間——


「!?ルシア!!目の前にいる!!」


「なっ!?」



僕達は眩い超高温の熱線に、飲み込まれてしまった。

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