13話ー➃ 最強のエネルギー『原素エーテル』
時間を引き伸ばしてんだよ!!助けてくれ......
人数も少ない上に、優秀すぎてグループワークの時間も要らない。
授業が音速で終わりそうなの!!焦ってんの!!
と言えるわけもない......僕は説明を続けた。
「AIを搭載した、グルミュラー魔力操作機ってものがあるんだ。」
「AI?科学技術のやつだよね?」
要するに、魔力を制御するためのAIを搭載した、複合魔道具だ。
「まず、その機械に自分の魔力を登録。そして、制御しきれない登録魔力を自動で収集するように設定する。 最後に発動させたい魔術を設定する。発動タイミングや内容も、全部AIに任せることもできるけど......自分の命をAIに委ねるのはおすすめしない。まぁとにかく......これによって、過度に放出した、制御しきれない魔力のロスは防げるんだ。」
「はぁ……そんな機械があるなんて知らなかったよ。他にも沢山の応用方法がありそう。私、結構勉強してきたつもりだったけど......生きている人の数だけ、応用方法があるんだね?」
「俺も全然知らなかったぜ......」
事実、僕は他にも沢山の方法を知っている......
しかし僕の思い付かない方法や、知らない裏技も山ほどあるだろう。
だからこそ、思いもよらない発想や方法での攻撃には、常に警戒して戦う必要があるのだ。
ここは天上神界。世界の主人公、チート、理不尽や才能その全てが集まる場所だ。
僕もかつては一つの惑星で最強だった。しかしここに来てみれば井の中の蛙......
ここには一撃で銀河を滅ぼす化け物や、事象を改変する怪物がゴロゴロいる。
チートなんて持ってて当たり前。そんなチート達が競い合う世界なのだ。
「さて、少し話が逸れたけど、本題に戻ろう。今日の講義では、普段あまり使わない魔力の強度について話すよ。」
「でも先生ー?エネルギーの密度が濃くて、魔術が使えないような危険地帯もあるよね?そういう場合に使うことがあるんじゃない?」
鋭い質問だ……もうやめろ。僕をいじめないでくれ。
正直、講義が進めにくい。
「まぁ、確かにそういう状況もあるけど……みんなも知っている通り、原素エーテルの密度が高い場所では、体外の魔力がかき消されてしまう。原素エーテルは、魔力や呪力などを含めた、全てのエネルギーの中で最も強力だ。他のエネルギーを飲み込んでしまう特性がある。」
原素エーテルは全てのエネルギーの源であり、大気中に充満している。
僕たちはこの原素エーテルを大気から取り込み、体内で魔力などのエネルギーに変換して活用している。
「原素エーテルが他より優れている理由は、まだ解明されていない。 そもそも原素エーテルは、僕たち生命には扱えないんだ。 体内に貯蔵することは可能だけど、法術に使おうとすると、術式論理そのものが自壊してしまう。 一応、外に集めて弾丸のように発射することはできるけど......余程の量と密度で放出しないとすぐに大気中に戻ってしまう。」
「そんなに扱いが難しいの? じゃーさ!もし原素エネルギーを超圧縮して、バカスカ放出できれば、全てを破壊できない?神法でさえも太刀打ちできないんじゃん!!それって最強なんじゃない?」
「空想上はね? でも本当にとんでもない圧縮と原素エーテル量が必要なんだよ。十神柱のアファルティア様が、全魔力を使ったとして......目に見えるサイズの原素エーテルになるかならないか......そんな次元の代物だよ。僕の計算上は......になるけど。」
それでも数秒保てるか保てないかだろう……
魔力もそうだが、体から離れれば離れるほど、制御を失い操作も困難になる。
そして原素エネルギーともなれば......
アファルティア様の全魔力を持ってしても、目に見えないサイズのエーテル弾しか生成できない。
更にそこまで苦労したエーテル弾は、体外数cmの距離で数秒しか保てない。
加えて飛ばそうと試みれば一秒さえ持たずに大気に帰化してしまう。
使えなさすぎる……
たったこれだけで体内のエネルギー貯蔵がゼロになる。
この説明に満足したのか、ステアが次の質問に移った。
「先生、その計算式をどうやって出したの?その計算式を教えてほしい......」
「僕が試したんだよ。自分の限界量でね。その時に大気に消えるエネルギーの速度を時間記録魔道具で計測して、僕の圧縮力から導き出した概算だから、完全に正確かどうかは分からないけどね。どうしても知りたいなら講義後に......ね?メッセージで。」
「先生凄い……でもそんなことするなんて暇だったの?」
「言うな......」
暇な時期があった。
その時に興味本位でやった事だから、僕は何も否定もできなかった。
その後も、この濃縮した地獄のような時間は続いた......
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