13話ー③ 誰か......助けてくれ。講義が......




見せてやる、僕の至高奥義。アルティメット「ゴ・リ・お・し」を!


そうして僕は話し始めた。



「今日は原素エーテルの密度、濃度が著しく高い指定危険区域における、魔法・魔術への影響と対策についてだ。まず魔力はどのように作られる?」


「はーい。私答える!私たちは大気中に存在する原素エーテルを体内に取り込んで、へその下にある臓器で魔力に変換するんだよね。あと外から取り込む以外には心臓部のコアから魔力を生成するんでしょ!」



 早ぁくも大ピンチ......。とはいえ、細部まで突き詰めて教えるのが講師の役目だ。

教員免許なんざ持ってない......と見せかけて、しっかり持ってる!


......何一人で考えてんだろ......



「概ね正しいね。じゃあ、次、フィルス。魔法・魔術理論における魔力量の定義とは?」


「体内で変換された魔力を溜めておける最大量。魔力量を超えて溜めることはできないし、限界まで貯まるとそれ以上は外に漏れ出すんだったよな?」



 くっ......優秀だな。補足説明も要らないじゃないか。

このままだと120分ある授業が20分で終わってしまう。十分の一だぞ!?

                              ※計算違います。



「完璧だね。だったら魔力量が多ければ、強い魔法を使えるのかな?」


「いや。それはない。魔力量の最大値が多くても、一度に放出できる魔力量は個人による。魔力放出量だったけか?」


「そうだね。1億の魔力を貯められても、一度に放出できる魔力が100だったら、100の魔力を消費する魔術しか使えないんだ。あと余談だけど、魔力を体外に放出する速度も関わってきたりするんだ。これに関しては、よほど大きな魔力を使わないと分からないけどね?」


 基本的に上位の神々は、自分の最大魔力放出量でほとんどの魔術や、魔法を使う事ができる。

それ故に上位に神々でさえ、あまり気にしている人はいない。


 ちなみに僕は、一度に自身の魔力を3割放出できる。

そして放出量は、訓練次第で誰でも激的に増やす事ができる。



「先生~。質問なんだけどさ。一度に出せるっていう文言の定義を教えて欲しいの。何をもって一度って呼ばれているの?」


 あぁ......この子は本当に有望だ。


 最上位神でさえ良く知らないであろう定義について質問してくるとは……

気にしなくとも法術は使えるものなのに……



「魔力放出量の『一度に』という定義は、一度に出し入れできる量。 そして体外に留めて制御できる量の二つの要素から成り立っているんだ。 放出だけできても、体外に留めて制御できなければ、その魔力は『一度で出せる』とは言わないんだよ。」


「うえ??答えられるの?先生すごいー!他の先生みんな答えられなかったのに!」



 おいおい……ちょっとした意地悪だったのかよ!?

確かに僕くらいの「知識廃人」じゃなければ、知らないマニアックな内容だけど。


 そう思いながら僕はステアに問いかけた。

この内容はいい時間稼ぎになる!最高だ!



「一度に魔力を100放出できる神がいたとしよう。この神さんは60の魔力までしか体外で制御する事ができない。この人の魔力放出量は幾つかな?」


「あーなるほど60だ!言われれば簡単だけど、知らないと結構ややこしいね!」


「知らなくても何の問題もないからね......」



 この定義を理解するためには、基礎的な魔道教本を徹底的に読み込む必要がある。ほとんどの才能ある神々は、感覚だけで習得してしまう領域の内容だ。


 逆に、才能のない者たちは、こんな寄り道をしている余裕はない。

つまり......僕のような知識中毒者以外は、学ぼうとしない内容なのだ。


 すると、ステアが畳みかけるように質問した。



「じゃあさ……魔力放出量の最大値を超える魔術や、魔法を使う方法ってあるの?」


 応用方法か……確かにあるにはある。

ただ、それはあくまで小細工......絶対的な力の差は覆らない。


 だからこそ、魔力放出量に関する応用技術は、敵の意表をつく程度にしかならない。


戦術として、時間を費やして研究する価値は低いのだ。



「あるにはあるよ? でもこれを説明するには、魔力そのものをさらに突き詰めないといけない。そもそも魔力って一括りに呼ばれるけど、実は個人によって魔力の種類や性質には違いがあるんだ。」


「お!それなら俺も聞いたことがあるぜ!個人で魔力の性質や特徴が異なるって話だろ?」


「私も知ってるし!」



 はぁぁぁ!?なんで聞いたことあるんだ……?

教科書の隅っこに、小さく書いてある落書きみたいな内容なのに?


落書き見てる暇あったら勉強しろ!!ふざけやがって......(逆恨みです。)



「そうだよ。同じ魔力でも個人差があるんだ。例えば、火の魔法に変換しやすい魔力があったり、身体強化に使うとより強力になる魔力があったり……そんなイメージかな。実際にはもっと複雑だけどね。」


「自分の魔力を塊にしてぶつけられても、自分の魔力ならダメージを受けないってやつだよね?」



 よく知っているな......

しかし魔力そのものを塊にして発射するのは効率が悪すぎる。


 もし魔力を超高密度に圧縮できれば、確かに威力は高くなるだろうが......

しかしまともな攻撃力を出すためには、膨大な魔力が必要になる。


 それは例えるなら マッチ棒に火をつけず、丸めて投げるようなものだ。


 そこまで魔力を圧縮できるのなら、もはや圧縮する対象が魔力である必要も薄い。

その制御力を他に使えば、より強力な魔法が使えるだろう。


本末転倒なのだ。



「魔術や魔法に変換せず、魔力そのものをぶつけてくる敵は滅多にいないけどね......分かってると思うけど、ダメージを受けなくて済むのは、あくまで自分の魔力を塊でぶつけられた時だけ。自分の魔力で作った魔術や魔法を反射されたらダメージを負うからね?軽減はされるけど。」


「分かってマース。それより早く方法教えてよー。」



 時間を引き伸ばしてんだよ!!助けてくれ......

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