12話ー➁ このままじゃ......私が持たない。
迂闊だった……私はバカだ。
なぜ変な夢を見たと言ったルークを、何も考えず再度寝かせてしまったのだろうか。
「ルーク……起きて。お願い。」
私が先に起きてから、彼を起こそうとして既に1時間が過ぎている。
前に比べて起きる気配はある。ただし未だに起きない。
「でも今回は前よりも繋がりを近くに感じる。荒療治だけど。」
私は再びルークと根源を接続した。
「んっ......っぅ。」
苦しい......でもそれはそうだ。
彼の苦悩や負荷の量は普通ではない。繋げる度に思う......
いつか......必ず私があなたを救い出して見せると......
「ぐっ……ルシア?」
今回はほんの数秒でルークが目を覚ました。
しかし、その代償として私の疲労は限界を超え、身体に重くのしかかっていた。
こんなのが眠る度に繰り返されるようでは、私の身が持たない……。
ルークの回復を喜ぶ一方で、この方法が限界に近いことを実感していた。
根源を繋ぐことで彼を呼び戻すのは有効だが、その代償は私にとってあまりに大きすぎる。
毎回こんな負担がかかってしまうのは、いくらなんでも無理がある。
これが今回限りなことを、ただただ祈るしかなかった……。
「あら? 起きた? 私も今起きたところよ。」
私は咄嗟に嘘をついた。
そして不信そうな顔をしているルークに、私は誤魔化すように言葉を畳み掛けた。
「夢のことを話して欲しいの。」
「あぁ。そうだったね。」
それから私はルークから、彼が見た夢のような現象の一部始終を聞いた。
彼の話は驚くべき内容だった。
ルークは自分が過去の監獄にいる夢を見ていた。
そこではエリーが既に死んでいると告げられ、再生能力を向上させる新薬の話が出てきたという。
「つまり……その夢の中ではエリーちゃんが既に死んだって言われていたの?」
「そうなんだ。あと僕が聞き覚えのない再生能力の新薬の話も出てきた。最も薬とは名ばかりだけどね。」
確かにルークの話はおかしい。
エリーちゃんがその時点で死んでいる事はまずない。
他にも新薬?果実?の話など......
ルークの記憶が改変されている事実を念頭においても......あまりに現実から乖離している。
「何か夢と片付けるには何か引っかかるわね……」
「そうなんだよ。だから何か僕が忘れていたり、勘違いしてる事実があるんじゃないかと思ってね。」
ルークの記憶が改ざんされている事を、私は知っている。
しかしここでそれを勘づかせたら、ルークは一人で真実にたどり着くかもしれない。
恐らく......エリーちゃんが隠している本当の真実にだ......
今現時点でそれは避けたい。
「記憶が改変されてるというよりも、これまでの出来事を断片的に組み合わせたとかじゃないかしら?」
「なるほど……その可能性はあるかもしれない。それなら確かに夢でもないし現実でもないが矛盾しない。」
私は少しホッとした。
何故だか分からないが、まだ気づかせるわけにはいかない。
何かそんな気がしてならなかった。
しかし、この後の会話で私は......
決定的な違和感に気づくことになる......
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