8話ー➃ 呪術師のチートがクソすぎる!!
「染毒燃庭!」
瞬時に危機感が走る。効果が不明なままでは、対策も講じられない。
更にやっかいな事は、結界の中に閉じ込めるタイプの呪法だった事だ。
これは相当強力な呪法である可能性が高い。
「二人とも防御を固めろ!ルシア、防御魔法を1秒ごとにかけ直して!」
「もう始めてるわ!」
その瞬間、周囲の景色が一変した。
少し離れた場所には朽ち果てた木が不気味に佇んでいる。
木の根元から流れ出す紫色と赤色の液体は高熱を帯びており、岩肌を川のようにつたっている。
見渡す限り、5メートルほどの高さの壁が周囲を囲み、不自然な雲が上空を覆い尽くしている。
探知魔法や解析魔法、分析魔法などあらゆる手段で脱出方法を探しているが......
今のまま4人で脱出できる気配はまるでない。
その時、聞き慣れた声が通信魔法から聞こえてきた。
「おう!ルーク、俺もベレスも無事だ!」
「対毒の魔法をかけたわ。熱に対する耐性も上がっているはず。気休め程度にはなるけど!」
「あの呪術師はどこに行った……」
この空間のどこを見渡しても呪術師の姿はない。
探知魔法を使っても、気配さえ感じられない。
「その毒には絶対に触れるな!どんな毒素なのか分からない!一旦僕の元に集まるんだ!」
僕らは集まって四方を固めた。
すると、どこからともなくあの中年呪術師の声が聞こえてきた。
「かかったな。もう終わりだ。赤い毒は魔力を蝕み、紫の毒は命を蝕む。紫の毒を一滴でも触れれば、その魂は十数分で消滅する。赤の毒を浴びれば、その分魔力が吸い取られる。」
やはり……呪法は強力だ。先程の呪符や式神とはレベルが違う。
「吸い取った魔力の分、毒はより強力になる。対毒魔法も所詮は魔法。赤の毒に触れ続けては意味がない。転移もできぬ!その朽ちた木を切り倒す以外、出る方法はない。」
「なにぃ!?簡単じゃねぇか!俺がぶった切ってやる!」
挑発して情報を引き出そうとしている。さすが冒険者歴が長いだけある。絶望的な状況でも決して冷静さを欠かない。
「木には大量の毒が含まれている。精々頑張れ。」
呪法の弱点を露わにしているのか。
つまり、不利な制限をかけることで呪法の力を増強させたのだ。
その考えが頭をよぎった瞬間、木から放射状に延びる毒の川が膨れ上がった。
幅は倍近くになり、足場はさらに狭まってしまった。
「よーするに。あの木を切りゃいいんっしょ?この川も動かねぇし、そんなに難しくな……」
ベレスがそう言いかけた瞬間、雲の中から何かが高速で降り注いできた。
それは呪術による隕石弾や氷の槍だった。
どうやら、この結界は外部から一方的に呪術の攻撃を打ち込める仕組みらしい。
「くそ!こんなもん叩き落としてやる!」
「待て!ガリブ!全員!!回避と防御の準備をしろ!急げ!!」
僕はとっさにエルガリブを毒の川から一番離れた場所へ突き飛ばした。
無数に流れる毒の川と川の間隔は10メートルほどだが、それでもすぐそばにいるよりは遥かに安全だ。
「まさかルーク!?早くそこから離れて!」
そう、この呪術による攻撃は僕たちを直接狙ったものではなかった。
毒の川に打ち込まれたのだ。
水面に石を投げ込めば水しぶきが舞うように、この毒の川に高速で物体が投げ込まれれば......
猛毒の飛沫が予測不能なほど複雑に飛び散る。
魔法の防御も役に立たない。つまり、僕たちは確実に毒を浴びてしまうのだ。
「ルーク!!」
「くそ!そういうことかよ!おぃルーク!!!」
「ルークっちの心配してる場合じゃないっしょ!全部の川に呪術が打ち込まるかもだぜ?あたしたちもやべぇよ!!」
高さ5メートルの空間というのもよく考えられている。上空に逃げられないからだ。
そして僕は......二種の毒飛沫で全身で浴びてしまった。
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