8話ー③ 最悪の封殺呪法




 数秒後、ついに呪術師が潜んでいると思われる小屋に到着した。


 僕たちは全員、ガリブとベレスを前衛に据えた陣形を崩すことなく、小屋に近づいた。

 前衛の二人が先頭に立ち、僕とルシアがその背後から支援する形で、慎重に進んでいく。


 小屋は森の中にひっそりと佇んでおり、その周囲には不気味な静けさが漂っている。

 木々の影が揺れ、微かに感じる冷たい空気は、極限まで敏感となった僕達の感覚に突き刺すような緊張感を与えた。


 僕らは一瞬で感じ取った。小屋から結界の主が姿を現した。

圧倒的な存在感が空気を支配している。



「よく来なすった。少し話でもしようではないか。」



 そこに現れたのは、パワードスーツに身を包み、それを隠すように上から薄汚れたローブを纏った中年の男だった。



「乗らねぇよ!」


「あたしたちを侮るなよ、おっさん!」


 エルガリブとベレスは、間髪入れずに呪術師に近接攻撃を仕掛けた。


 一見無謀にも見えるが、二人は対策と防御を完璧に施し、すぐに回避に移れる体勢で攻撃を繰り出している。



「ぬっ!?お主ら、ワシを誰と心得る!」



 呪術師は防護呪符で三重のバリアを瞬時に作り出した。


 しかし、その全てがエルガリブとベレスの猛攻によって叩き割られ、呪術師は攻撃を避けるのに精一杯だ。



「いいぞ、二人とも!そのまま距離を詰め続けてくれ!僕は援護に回る!」



 僕は上空に100にも及ぶ追撃魔法を展開し、次々と呪術師に浴びせかける。

前衛の二人に当たらないよう、精密に魔法の軌道を調整しながら。



「このぉ、小癪な真似を!召喚呪術!式神・妖狼!後ろの二人を止めろ!」



 いい流れだ。現時点で誰も消耗していないし、手持ちの呪符や呪具を使い切れば、呪術や呪法も使ってくるだろう。



「前衛二人はそのまま畳み掛けるんだ!」


「任せろ!」



 僕はこちらに向かってくる妖狼を軽く片付けながら指示を出した。

呪術師はもっと多彩な呪符や呪術を隠し持っているに違いない。


 しかし、現状では前衛二人の攻撃から身を守るのに精一杯で、余裕がない。



「染毒燃庭!」



 そんな瞬間だった......

呪術師が意表を突くように『呪法』を発動してしまった......


 事前に予測していたとはいえ、そのタイミングには少し驚かされた。

予測していた選択肢の中では可能性が低いと考えていたからだ。


 周囲の空間が無条件に作り変えられていく。



「うおぉ!?何じゃこりゃ!」


「あー。これは多分......マズいっしょ。」



そして僕達は......



「最悪だな......結界タイプの呪法か......」


「ルーク......どうする?」


「これは結構......ダルいな。」



僕達は敵の呪殺結界の中に、完全に封じ込められてしまった。









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