第18話 最強の切り札
18話ー① 輝光の剣と魔法創造
熾星王の意識がこちらに向く。
先程とは違い、我々を脅威と感じているようだ。
僕たちの魔力量は根源共鳴によって指数関数的に膨れ上がっている。
文字通り先程までとは、強さも存在さえも別次元の領域にいるのだ。
根源共鳴は単なる強化とは根本的に異なる。
根源を共鳴し合うことで、存在そのものの次元をより上位へと進化させる。
「ルーク、中性子星は任せて。私が全部消すわ。」
「OK。なら僕は本体を叩く!」
僕は再び中性子星が吹き荒れる中に飛び込んだ。
なぜこの危険な状況になるまで使わなかったのか、その理由はいくつかある。
一つ目は、僕とルシアが触れ合う範囲にいないと根源共鳴は発動しないからだ。
二つ目。根源共鳴をすると、それ以前に受けた傷や、失われた魔力が全て回復する。
緊急時の回復手段として、最後まで温存しておきたかった。
そして最後に、根源共鳴は過去の記憶や相手の情報、感情が直接流れ込むためだ。
これは精神的な負担が非常に大きい。
下手をすれば自分という人格の輪郭さえ、ぼやけてしまう可能性があるのだ。
そしてルシアは、この状態でしか発動できないチートを発動させる。
「分析、解析。魔法創造グラティス発動。対中性子専用魔法.....」
魔法創造グラティス。それは根源共鳴の時のみに使えるルシアの固有能力だ。
その名の通り、オリジナルの魔術、魔法を自在に生み出すことができるチートだ。
練度次第では、本来同時使用が不可能な呪術や、後天的には習得できない固有技能、呪法を再現できる可能性を秘めている。
つまり、この状態になったルシアは、その場の状況に応じて魔法を瞬時に創り出すことができる。
流石に神術はまだ無理だが、専用の魔法であるためその効果は絶大だ。
「ルーク。中性子星の空間の歪みでも、問題なく使える転移魔法を創ったわ。これであなたを敵の近くに飛ばすわ!」
「助かる。本体は僕に任せろ!」
僕はルシアの転移魔法で熾星王の背中の上に移動した。
「いでよ、殲光の剣!」
僕は手の中に輝く光の剣を放出した。
根源共鳴状態の僕達は魔力を使わない。
光子エーテルという独自のエネルギーを扱うのだ。
僕は超高密度に圧縮した光子エーテルの塊を広げた。
その刃は触れるものすべてを消滅させる殲滅の光だ。
「お前の胴体を切り離す!」
僕は巨大化した光の奔流を、熾星王に叩きつけた。
殲光の剣は熾星王の背中を、胴体の幅の三分の一ほどを一気の消滅させた。
熾星王はあまりに突然のダメージに悶絶の雄叫びを上げたが、次の瞬間、超高速で再生を始めた。
「思ったより浅い……でもまあ、畳み掛けてやるよ!」
根源共鳴状態だから無視出来ているが......先ほどの雄たけびで周りの小惑星が粉々に砕け散っていた。
並みの上位神なら雄叫びだけで瀕死になる。怖すぎ......
僕は砕け散った岩石片の陰に身を隠しながら移動する。
そして光の奔流を、更に高密度に圧縮。
限界まで薄く。
鋭く。
そして長く伸ばした。
「斬光の剣......」
さっきのは超広範囲を消滅させる為の攻撃だった。
しかし今度は切断のためのものだ。
「これでも食らえ!」
僕の斬光の剣は原初熾星王の胴体を真っ二つに切り裂いた。
あまりのダメージに原初熾星王は再び雄叫びを上げる。
そして錯乱し、更に追加で中性子星を生み出そうとする。
しかし、無論それで終わらせるつもりはない!
巨大な「斬光の剣」を維持したまま、僕は連撃を叩き込む。
そして、原初熾星王の巨大な体躯をブロック肉のように細かく切り刻んだ。
「よし!このまま切り刻んで終わ......」
しかし、原初熾星王は先程よりさらに速く再生を始めた。
切断面が綺麗だったことを考慮しても、その再生速度は異常に速い。
そもそもここまで細かく切り刻んだにも関わらず、まだ生命活動が可能な事に驚きを隠せない。
これではいくら刻んでも埒が明かない。
「ルーク!中性子星の質量が増えているわ。問題なく対処できるけれど、一応伝えておくわ。」
「そっちもか。僕の方もさっきより再生速度が上がってる。」
警戒が必要だ。相手は明らかに学習している。
ただの学習ではない、生命そのものとしての性能をどんどん進化させているのだ。
そもそもあの巨体だ。
それに影響を与える大きさの、攻撃を仕掛けるとなると......
こちらのエネルギーを消費も尋常ではない。
「ルシア、時間がない!短期決戦で一気に決めよう!」
「久しぶりね。鈍ってないといいわ。」
そう呟くと、ルシアの周囲にこれまで以上に眩い光の粒子が集まってきた。
そう、僕達の手札は根源共鳴だけでは終わらない。
......もう一段上のステージがあるのだ......
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