第2話 そうなの

「さみしい…」

 投稿。こんな言葉に反応してくるのは、たいていは優しさを装おったヤリモクだ。掲示板に載ったら早速、私宛てにきたきた。


「…さみしいよね。僕もそんな夜」

 コウスケ、30歳男、血液型A型。音楽全般、美術鑑賞、筋トレ。話題にNGなし。リーマンですが、気ままに話しませんか。


 プロフィールをのぞくと、間口の広い無難な内容だこと! リーマンですが、つまりサラリーマンですが、と謙遜するスタイルだ。30歳で仕事やってなかったらフツーにアヤシイだろ笑。

 話題にNGなし、これがくせ者だ。要するに寛容なフリをして、あわよくばエッチ話ができないか期待している。うまく行けば、住み家を聞き出し、会えるかもしれないと考えているパターン。

 私は、すぐにレスせずに30分間は置く。即レスするほど、私はそんなに安くない。

 

 「そうなの。あなたも今夜はさみしいのね」


 様子見のオウム返し。返信が遅いと、ほかの女にもメッセージを送りまくって話し相手を探しているから、そのうち即レスのヒマ女を相手に選び、こちらはスルーされることもある。

 まして、無難なレスには反応してこない。次の話題の糸口を自分で考えないといけないからだ。


 だが、面白みのある相手を探すには、はじめは冷たくあしらうくらいがちょうどよい。こちらの様子をうかがうくらいの配慮がないと、話は続かない。中身のない会話や色気さえないエロ話につきあわされることになる。もちろん、話題に乗らなければよいのだが。


 「レスありがとう。なんだか寝付けません。彼女から連絡がないからかな。もうまる3日」


 返信に対して、ありがとう、は第一関門クリアね。最初くらいは、相手を大事にするのは男として当たり前のマナー。自分を話し相手に選んでくれたことに感謝しているという認知力があり、顔さえ見えない他人とコミュニケーションを取り続けようとする意思の現れは、ポイントが高い。

 逆にいえば、男からのありがとうの一言で、相手を買い被るとキケンだ。どんなに丁寧で、ときに甘い言葉を送信してくれようと、あくまで、自分は片脚が崖っぷちにある意識でいないと、やがてはだまされて痛い目に遭うことになる。

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ダブルスタンダード ピンク侍 @pinksamurai

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